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 群青の夜の羽毛布 著:山本文緒

 謎めいたバランスを失った家庭、毬谷家の旦那の語りから物語は始まる。母、さとる、みつると言う男の子の名前を持った姉妹。内気で電車にもバスにも乗れないさとると大学も3年で全部単位を取って卒論だけを残した鉄男がスーパーで出会う。鉄男はスーパーみやこしでリカー部門のレジ受付をしていたのだ。さとるが具合を悪くして倒れてるのを車で送り届け、交際が始まる。

 お互いに結婚を意識した交際だった。けれど、鉄男は実家に帰って家業を継ぐつもりだったし、さとるは父の看病を考えると鉄男に東京で働いて一緒に家で暮らして欲しかった。ずっと父の存在を隠されてて鉄男は最後、狼狽えてしまう。さとるとのデートで事故ってしまって標識を壊してしまった鉄男、その鉄男にスクーターを買い与えた毬谷家の母、正月明けのある夜、甘エビを実家でいっぱい貰ったので毬谷家に持って行った鉄男は母と姉妹の喧嘩を目撃してしまう。そして、アイロンで火傷したさとるを病院へ、そこから狂い始めた毬谷家と鉄男の関係を描いてラストへ。

 最後は父の部屋が燃えて父、母、さとるが入院してエンディングだった。

 起こる事や話の展開は些細な事だったが描き込まれたさとると鉄男の心理描写は的確だった。最後、鉄男はさとるを見捨てたのか、それとも鉄男はさとると強引に結婚したのか、それは読者の想像に委ねて終わっている。歪な親子関係とそれを不思議に思う交際相手を配して息が詰まるような厳格な家庭の内実をフィクションではあるが提示してる。

 群青の夜の羽毛布とはさとるが握って離さなかったオレンジ色の小さい頃から使っている毛布の事だったのかもしれない。

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