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静岡県静岡市|図面からAIが見積り作成する製造業DXの事例

先日しずおかDXコンソーシアムのイベントへ参加し、非常に勉強になるDX事例をお聞きできたので、レポートしようと思います。

静岡県静岡市清水区にある、プラスチックの加工メーカー「株式会社プラポート様」にて取り組まれた、AIによる2D図面の自動見積りについてです。

全国の製造業の中小企業が抱える問題

プラポート社では「多品種少量生産」の形態をとっています。

日本全国にある中小製造業では、この多品種少量生産で製造を行っている会社が多いです。(もちろん一概には言えませんが)

なぜかと言うと、基本的には大企業からの発注が多いからです。大企業からの様々な要求に対して柔軟に対応しようとすると、多品種少量生産の形態を取らざるを得ない、という言い方が正確かもしれません。

多品種少量生産による大きな問題の一つが「人に依存すること」です。

多品種なので、すべての品種に対応する多種多様な機械を導入することは非現実的ですし、大量に作るわけでもないので高額な機械設備を買うわけにもいかず、人(職人)に依存する生産ラインとなることがあります。

また、人に依存するのは生産ラインだけではなく、例えば図面を見て見積りをする業務においても技術力や経験がないとできません。

人に依存することによる3つの課題

では、人に依存することによってプラポート社では何が課題だったかと言うと…

①人手不足になると売上が低下する
②利益率が上がりにくい
③見積りにばらつきが出る

といった点です。

①コロナのような感染症が流行り出社できない状況が続いたり、離職者が増えたりすると、人手が不足し、生産ラインが止まります。すると当然ながら注文を受けられませんので売上が低下する、という影響が出てしまいます。

日本は労働人口が年々減少していますので、後継者となる若手が不足する、というのは日本各地の中小企業が抱える大きな課題です。

②機械であれば、生産性にばらつきはなく、常に一定量を生産できますし、人よりも多くの量を生産することができます。一方、人に頼った生産ラインでは、簡単には生産性をあげられませんし、人がこなす量労務費も限界があります。

すると、利益率が上がりにくい構造になってしまいます。

③職人が見積りすれば正確な金額を算出できますが、例えば新人が見積りしたら乖離のある金額となってしまうケースがあります。(システム開発でも同じですね)

プラポート社ではこれらの課題への対応として、以下2点の取り組みをされていました。

①→組織改革
②③→AI技術を活用した自動見積りシステム

取り組み1.組織改革

これまで機械加工や職人による加工など様々な生産形態へ対応していましたが、利益率が高かった機械加工へ集中しました。

弱者の戦略として、一点に集中して勝つ、というのは有名ですが、まさにそれを実践した形です。

前述のとおり、多品種少量生産だと利益率が上がりにくく、プラポート社でも同様でした。しかし、その中でも利益率が高い生産ラインもありました。それが、職人による加工がない、機械加工を中心とした生産ラインです。

利益率が高い機械加工をメインにして、職人による加工を行う生産ラインは廃止しました。工事のレイアウトも大きく変更し、機械加工の設備も増やしました。

また、生産ラインの集中と合わせて、「短納期」という強みに特化し、最短1日納期(金曜に依頼を受けたら月曜には納品)を実現するためにシフト制を導入しました。

生産ラインを絞り、シフト勤務にする。会社としては痛みを伴う、非常に大きな決断です。

実際に、職人による加工作業がなくなり、シフト制の働き方となったことで、退職者も多数出たようです。自分の技術力を活かせる加工業務ができないから辞める、シフト制は対応できないから辞める、そういった方が出てきたとお話しされていました。

一方で、残ってくれた社員は、今まで以上に会社の理念や方針に共感しているメンバーばかりになるので、一丸となって取り組める社内体制へと変革していきました。

DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、「変革すること」を示しますが、まさに社内組織の変革を実現されています。

補足ですが、プラポート社では働きやすさにも力を入れており、工場の2階部分を社員向けのおしゃれなカフェに変えたり、執務室では各社員に大きなディスプレイを配布したりと、イケてるIT企業のようなオフィスにされていました。徹底されていますね。

取り組み2.AI技術を活用した自動見積りシステム

もう一つの施策は、2D図面をアップロードして外寸と数量を入力すると、AIが図面から情報を解析して見積り金額を算出するシステムを自社で開発した点です。

⾒積依頼から、⾒積回答、発注、受注までを⼀元管理できるEDIシステムとなっているため、情報の二重入力・二重管理を防ぎ、効率的な業務を実現できます。

AI技術を活用したシステム開発をするきっかけとなったのは、経済産業省の学業イベントへ参加されたことでした。そこからAIの開発技術を持った会社とともに、今回のシステム開発へ取り組んでいました。

このシステムにより、業務が効率化できるのはもちろんのこと、担当者のスキルや経験によって見積りにバラツキが生じる課題もクリアできます。

これでも十分すぎるほどの成果を上げた取り組みだと思うのですが、ここからさらに展開し、2022年6月からはAIを活用した見積りシステムを外販する計画とのことです。

SRE不動産(ソニー不動産)など、事業会社が社内で使っていたシステムをクラウドで外販して上手くいくケースは出始めています。一つの成功パターンにのった形でプラポート社も事業展開をされています。

クラウドサービスとして外販することまで進んでいるのは本当に凄いですね。


地域DXは益々加速していく(べき)

今回は静岡の製造業におけるDXへの取り組み事例をご紹介しました。

DX事例を学んだのは「しずおかDXコンソーシアム」というイベントでして、個人的に昨年から定期的に参加しています。

静岡にある企業、静岡にゆかりある方など、興味のある方はぜひチェックして参加してみてください!(勝手に宣伝しています…笑)

今後、日本全国で労働人口の減少が続くので、生産性向上のための業務効率化は必須ですし、変化が激しく競争力が求められる時代において、ビジネスプロセスや組織の変革は益々必要になってきます。

個人的な考えとして、ポイントは地域DXだと思っており、それを推進することが日本全体の価値向上へと繋がると思っています。

弊社でも引き続き地域DXを加速させるお手伝いをしていきます!

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