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島根県隠岐郡海士町|オンラインの遠隔授業で高校魅力化、地元高校の進学率45%→77%へ

島根県隠岐郡は、鳥取県境港市と島根県松江市のちょうど真北あたりに位置する島です。海士町は日本海に浮かぶ隠岐諸島の島前(※)にあり、中ノ島を主島とする1島1町の自治体です。

※隠岐諸島は「島前(どうぜん)」と「島後(どうご)」の2つのエリアがあり、島前は「知夫村」・「西ノ島町」・「海士町」の3つの島からなっています。

私は母方の実家が鳥取県境港市にあるため、小さい頃に島後の隠岐の島町へ行ったことがありました。当記事のトップ画像が隠岐島ですが、美しい自然に囲まれた島です。

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こういった島々ではICTの導入はきっと遅れているだろう…とお思いかもしれませんが、島根県隠岐郡海士町では「クラウド遠隔授業システム」を導入しオンライン授業を行っています。
少し前の事例ですがご紹介します。


高校入学者の減少に加えて、移動手段が"船"という課題

地元の島での高校入学者数は10年で約3分の1へ減少しており、島前地域唯一の隠岐島前高校も廃校の危機を迎えていました。

本土など、島外の高校へ進学したらそのまま地元へ帰らずに就職することもありますし、何よりも高校が廃校してしまうと家族ごと島を出ていく、という自体にも繋がってしまいます。高校生が減り、働き盛りの親がいる家族まで島から出ていってしまうと、労働人口が減少するという課題がありました。

島前は「知夫村」・「西ノ島町」・「海士町」の3つの島に分かれており、島後の隠岐の島町も別の島です。そのため、船を使って移動・通学することもありますが、受験シーズンの冬場は欠航することが多く不便でした。
(島前唯一の隠岐島前高校は海士町にある)

こういった課題を解決すべく、高校入学者を増やすための『島前高校魅力化プロジェクト』を開始しました。


島前高校魅力化プロジェクト

島前3町村が協議した結果、生徒が行きたくなる、保護者が行かせたくなる、地域が活かしたくなるような「魅力的な学校をつくる」という方針が決まりました。それが「島前高校魅力化プロジェクト」です。

島前高校魅力化プロジェクトでは、ワークショップで自分の夢を模索していく「夢ゼミ」、日本各地から島へ訪れる「島留学」、など様々な取り組みを行いました。その中でも、ICTを使った施策を取り上げます。

◯小中高の生徒へiPadを無料貸与
無償でiPadを貸与し、教員が学習センターから配信し、生徒たちが自宅でiPadを使って学習できるようになりました。

◯オンラインの遠隔授業
隠岐島の島前地域にある3つの島だけでなく、本土にある島根県や徳島県の生徒と一緒に遠隔授業を行いました。

この取り組みが非常に素晴らしく、実際の写真をぜひ見ていただきたいです。

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※画像は島根県HPから拝借しました。
※取り組みを実施された数年前の写真です。

他県にいる高校生同士がコミュニケーションを取れるようになりました。それぞれの地域の良いところをディスカッションするなどして交流を深めることで「実際に現地へ行ってみよう」という話しになり、お互いの地元を行き来する流れを作ることもできています。


地元の高校への進学率が45%から77%へ

島前高校魅力化プロジェクトの取り組みにより、元々は島前高校への進学率は45%でしたが、今では77%に向上し、子供たちの地域外流出を徐々に抑えることに成功しています。

また、進学率の向上だけでなく島全体で活気をもたらすことができ、海士町への観光宿泊客は30%UP、人口は17%UP、といったように良い成果が次々に出ています。


ポイント

他県の高校生とコミュニケーションを取ることでお互いの地元を行き来でき、結果的にそれぞれの地元を知る機会ができる、という設計までされている点は本当に素晴らしいと思います。

他にもポイントは多々ありますが・・・ICTの観点で1つあげるとすると、オンライン授業で大画面(スクリーン)を使った点は成功の要因だと考えられます。また、取り組み内容としても面白いと感じました。

iPadやPCでもオンライン授業自体はできると思います。
しかし、一人で小さな画面に向かって授業を受けるよりも、大勢で一緒に大きな画面を見ながら遠隔地の生徒と一緒に授業を受けることで、より現実に近い感覚を持てそうだと感じました。

この取り組みはコロナ前に行われていたため、今は難しいかもしれませんが、「遠方にいる同世代の高校生と一緒に授業を受けている」という感覚を持ってもらう、ということは重要です。

抽象的に言えば、利用者への体験(ユーザーエクスペリエンス:UX)に重きを置くことで、大画面のスクリーンを使うという手段が取られたのだと思います。このように利用者の体験(UX)を設計する、というのはシステム導入を浸透させる上でも重要な視点だと感じました。


最後に、、、今年はオンラインでの視察を受け付けているようです。


※画像の一部は島根県のHPからお借りしました。ありがとうございました。




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