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「子どもだから」と線引きしないということ
「子どもはまだ小さいから、難しいことは分からない」
そう思っていませんか?
でも、それは大人の思い込みかもしれません。
子どもは、驚くほどの成長の力を持っています。
けれど、大人が「まだ無理」「どうせ分からない」と線を引いてしまうことで、
その力が引き出される機会を奪われてしまうことがあります。
私は、教育の場でも家庭でも、
「子どもだから」と決めつけず、一人の人間として尊重すること を大切にしています。
今回は、その考えのもとでの実践例を紹介しながら、
「子ども扱い」がもたらす問題について考えていきます。
「子どもだから」と線引きしない実践例
① 年少の女の子の癇癪と「自分で整える時間」
幼稚園で、年少の女の子が癇癪を起こしたことがありました。
普通なら「年少だからまだ難しい」と考え、
大人が抱きしめたり、なだめたりするかもしれません。
でも私は、彼女を信じて 「自分の力で整えておいで」 と伝えました。
さらに、「整ったら、自分のタイミングで戻ってきて、先生にお話ししてね」 と付け加えました。
つまり、「落ち着く時間」と「戻る選択肢」を彼女自身に預けた のです。
結果、彼女はしばらく廊下の椅子に座り、じっと一点を見つめていました。
遊び始めるでもなく、気を紛らわせるでもなく、
彼女なりに気持ちを整理していたのです。
そして、時間はかかったものの、
彼女は自分のタイミングでそろーっと戻ってきて、何があったのかを話してくれました。
この経験を通じて、改めて確信しました。
大人が焦って手を出さなくても、
子どもは自分で考え、整理し、行動する力を持っている。
「子どもだからできない」と決めつけるのは、大人の思い込みなのです。
② 赤ちゃんのころから「どうせ分からない」と思わない
息子がまだ抱っこ紐の中にいる赤ちゃんのころ。
私は普通に話しかけたり、自分の考えを共有したりしていました。
たとえば、散歩中に
「この道を歩くと、日が差してあったかいね」
「今日は風が強いね、空が澄んでるね」
と話したり、時には哲学的な問いまで口にすることも。
「赤ちゃん相手にそんなことを話しても、どうせ理解できない」
そう思われるかもしれません。
でも、私は
「言葉が分からなくても、心で感じ取ることはできる」 と信じていました。
今、息子は話せるようになり、日々の出来事を言語化する力がとても強い。
「ちょっとおっきいねぇ」と自分の感覚を表現したり、
状況を的確に言葉にしたりするようになりました。
「どうせ分からない」と決めつけず、
赤ちゃんのころから対話を続けたことで、
言葉の感覚や、「考えを共有することの心地よさ」 が育まれたのかもしれません。
「子ども扱い」が生む問題
「子どもだから」と線引きすることは、
大人の都合で子どもの世界を狭めることになります。
☑ 「子どもはまだ難しい」と決めつける
→ 考える機会を奪う
☑ 「子どもには感情の整理は無理」と思う
→ 自己調整の機会を奪う
☑ 「子どもだから」と特別扱いする
→ 自分でできることを、大人に頼る癖がつく
たとえば、教育現場ではこんな場面をよく見かけます。
幼児向けのキャラものエプロン
子ども向けにデフォルメされた壁面飾り
変に甘ったるい幼児向けの話し方
でも、こうした「子ども扱い」は本当に必要なのでしょうか?
子どもは、必要以上に「子ども向け」にされなくても、
ちゃんと受け取る力を持っています。
むしろ、一人の人間として扱われることの方が、
子どもにとっては心地よいのではないでしょうか。
「子どもだからと線引きしない」ことで得られるもの
子どもが「考える機会」を得る
→ 大人が答えを与えず、じっくり考えさせることで、思考力が育つ感情を整理する力が身につく
→ 「泣いたらすぐ慰める」のではなく、自分で気持ちを整理する時間を持てる自分で選び、行動する力が育つ
→ 「大人が決める」のではなく、「自分のタイミングで戻る」「自分で言葉にする」機会が増える「分かる・分からない」の基準が変わる
→ 「どうせ分からない」ではなく、「伝え続けることで、感じ取る力が育つ」と考える
結論:「子どもは未熟ではなく、今この瞬間を生きる個である」
子どもは、未完成の大人ではありません。
今この瞬間に、一人の個として存在しています。
もちろん、子どもができないこともあるし、成長には時間がかかります。
でも、それを 「だから大人が手を出す」 のではなく、
「どう成長の機会を守るか?」 と考えることが大切です。
私は、「子どもだから」と線引きせず、一人の人間として尊重することを、
教育や子育てにおいて、ずっと大切にしていきたいと思っています。
そうすることで、子どもは自信を持ち、自分で考え、
行動する力を育んでいくのです。
あなたはどう思いますか?
あなたの周りでは、「子どもだから」と線引きしてしまっている場面はありませんか?
例えば、子どもに「まだ無理だよ」「わからないよね」と言ったことはありませんか?
もしかすると、それは「大人の側の思い込み」なのかもしれません。
今日から少しだけ、
「子どもを一人の個として尊重する」 ことを意識してみてください。
きっと、子ども自身の力に驚かされるはずです。