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夢よ、何度でも。

 


クロノジェネシス

 冒頭はnetkeibaのクロノジェネシスの掲示板です。
 父バゴ、母クロノロジスト、母父クロフネ
 主な勝ち鞍:2019秋華賞、2020宝塚記念、2020有馬記念、2021宝塚記念
 馬主:サンデーレーシング
 生産者:ノーザンファーム
 調教師:斉藤崇史
 主戦騎手:北村友一

 クロノジェネシスは2歳時から活躍。北村友一騎手と共に新馬戦を快勝すると、2戦目のアイビーSでは牡馬を相手に驚異の上がり32.5の脚を使い2馬身差で勝利。この勝利が評価され、初のG1挑戦となった阪神JFでも2番人気に支持されました。
 レースがスタートすると、クロノジェネシスは行き脚がつかず後方からの競馬。4コーナーで1番人気のダノンファンタジーと共に大外から猛然と追い上げを開始します。

 直線は完全に2頭の併せ馬となりましたが、半馬身差及ばず2着。出負けがなければ……という結果でした。

レース後の北村騎手のコメント。
 「スタートは隣の馬に入られて怯んでしまいました。1800mを2戦してからの1600m戦でこのメンバーが相手でしたから、そこまで前の位置をとは考えずリズムを重視して瞬発力を生かそうと思っていました。うまく勝ち馬に蓋をすることができたと思ったのですが、勝ち馬がしぶとかったです。いい脚を使ってくれました」
阪神ジュベナイルフィリーズ 2018 結果【レース後/騎手コメント】【全馬掲載】 : 怪奇!単複男

 北村騎手は当時のことを振り返り、悔しさを語っています。
 「気持ちを切り替え、直線にかけるつもりでした。それなのに仕掛けが早くなってしまった。4コーナーでダノンファンタジーの外を回り、そのままかわすことができませんでした。クロノジェネシスの良さはしまいの切れ味とわかっていたのに…。もうひと呼吸我慢できていたら、ゴール前の切れは違ったはずですし、こんな負け方は他に記憶がありません。馬場や展開のせいじゃない。全部、自分の乗り方なんです」
北村友一連載【38】クロノジェネシスと出会った18年 思わぬ結末が… | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

 乗り替わりも頭をよぎったが、斉藤調教師は以降も乗せ続けてくれました。
 「レース後、斉藤先生に“すいません”と言うのが精一杯でしたが、先生は“仕方ないよ”と言ってくれました。乗り替わりにならなかったのは斉藤先生のおかげです」

 3歳シーズン初戦はクイーンC(G3,東京芝1600m)。阪神JF3着のビーチサンバなどが出走していました。ビーチサンバとの着差はクビでしたが、最後は余力を残して完勝。いい形で桜花賞に臨みました。北村騎手も前週の大阪杯をアルアインと共に制し初のG1制覇。人馬とも最高の流れです。

第一関門・桜花賞

 桜花賞では阪神JFを制し、前哨戦のチューリップ賞でも完勝したダノンファンタジーが一番人気。そのダノンファンタジーを新馬戦で破り、サウジアラビアRCで重賞制覇、そして朝日杯で牡馬相手に3着だったグランアレグリアが2番人気でした。クロノジェネシスは2頭に次ぐ3番人気。

 レースが始まると、クロノジェネシスはそれなりに好スタートを決めて中団の位置。やや掛かり気味に追走します。先行したグランアレグリアが4角手前で早々と先頭に立ち、ダノンファンタジーがそれを追いかける展開。
 直線に入ると、グランアレグリアが独走に入ります。クロノジェネシスはやや包まれ追い出しが遅れました。直線で失速したダノンファンタジーは交わしましたが、スムーズに馬群の間を伸びてきた2着のシゲルピンクダイヤにクビ差後れをとり3着。しかし、勝ったグランアレグリアはレースレコードで2馬身半差の快勝。さすがに相手が悪かった印象です。

北村騎手のコメント。
 「スタートが良くて、スタートからのリズムは良かったです。3コーナー手前で外から内に寄せられて、少しぶつかってトモを落とすような所がありました。その時、良いリズムが乱れてしまい、もったいなかったです。パドックではテンションが高かったのですが、その後は落ち着いていて、オンとオフのメリハリができていました。レースに行くまでの過程が良かったです。直線ではもう少しバラけてくれると良かったです。外に出してからは、この馬らしい脚をみせて、頑張ってくれました」
桜花賞 2019 結果【レース後/騎手コメント】【全馬掲載】 : 怪奇!単複男

北村友一連載【39】「テン良し、中良し、しまい良し」三拍子揃ったグランアレグリアに桜完敗 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

桜花賞馬不在の二冠目

 桜花賞を勝ったグランアレグリアは2400mのオークスではなくNHKマイルカップへ。二冠目のオークスは桜花賞馬不在となりました。
 1番人気は別路線組。忘れな草賞を無敗で制したラヴズオンリーユーでした。単勝オッズは4.0倍。僅差の2番人気がこのクロノジェネシス。4.1倍でした。桜花賞組で最も人気が高かったのは、距離が伸びることでパフォーマンスを上げることを期待されていたからです。3番人気はコントラチェック。フラワーCを圧巻の内容で逃げ切り、レーン騎手を配して臨みます。

 クロノジェネシスは1枠2番から好スタートを決め先行します。1000m通過は59.1とやや速めの流れ。4コーナーでコントラチェックが先頭に立ち、外から12番人気のカレンブーケドールが襲い掛かります。クロノジェネシスは内からコントラチェックを交わして前を追います。残り200m、カレンブーケドールの競り合いが続く中、外から1頭凄い脚でラヴズオンリーユーが追い込み。まとめて交わしてオークスレコードで優勝しました。クロノジェネシスは最後にカレンブーケドールに突き放され3着まで。別路線組のワンツーで決まりました。

北村騎手のコメント。
 「ゲートの駐立は良くありませんでしたが、スタートは五分に出ました。いいポジションで進められたと思います。レースの時計が示すように、スタートから淡々と進み4コーナーからもう1段速くなるタフな流れでしたが、しっかり反応してくれました。坂があっても2400mでも頑張ってくれました」
オークス 2019 結果【レース後/騎手コメント】【全馬掲載】 : 怪奇!単複男

 ただ、反応はいつもよりも鈍かったという。
 「直線の反応がいつものクロノジェネシスではなかったんです。やっぱり連戦の疲れがあった。先に抜け出したカレンブーケドールをかわせなかったですから」
北村友一連載【40】連戦の疲れで直線の反応がなく…オークス3着 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

「この一冠は譲れない」

 阪神JF2着、桜花賞3着、オークス3着。間違いなく世代トップの能力を有しながら、もどかしいレースが続いていたクロノジェネシス。最後の一冠となる秋華賞には休み明けで出走しました。馬体重は+20㎏。しかし全く太目残りではなく、幼かった春の馬体とは全く違う風格がありました。
 人気はローズSを勝ったダノンファンタジー、紫苑Sを叩いた(3着)カレンブーケドール、1勝クラスと2勝クラスを連勝したエスポワールに次ぐ4番人気。

 3枠5番のクロノジェネシスは好スタートを決め、中団のやや前目を追走。絶好の手応えで4コーナーで外目に持ち出すと、内から併せてきたカレンブーケドールと共に力強く伸びます。外からシゲルピンクダイヤが迫ってきますがこれも関係なし。春の二冠で先着を許した馬たちを置き去りにして2馬身差の完勝。遂に悲願のG1タイトルを掴みました。

北村騎手のコメント。
 「ずっとコンビを組ませていただいて、春はなかなか結果を出せなかったので、ここで絶対勝つんだという気持ちで乗っていました。ある程度は流れに乗っていきたいと考えていて、理想的なポジションで運べました。いつでも抜け出せる手応えがあったので、自信を持って追い出すことができました。ここまで乗せ続けていただいたことに感謝ですし、結果を出せたことが良かったです。斉藤崇史調教師にもこの馬で初GI勝利を届けられて良かったです。自分にとっても、クロノジェネシスにとっても、斉藤先生にとっても、大きな一勝になったと思います。これを弾みにもっとがんばりたいですし、馬もこのまま無事にいってほしいです」
秋華賞 2019 結果【レース後/騎手コメント】【全馬掲載】 : 怪奇!単複男

 北村騎手は大阪杯に次ぐG1レース2勝目。斉藤調教師は初のG1勝利。北村騎手は大阪杯をアルアインで制しましたが、この時は乗り替わりでのもの(前年オールカマー、天皇賞(秋)に次ぐ3度目)。デビュー時から乗り続け、悔しい想いをしてきたお手馬でようやく手にした栄冠でした。その喜びはインタビューからも感じられます。

 また、北村騎手は秋華賞で負けたら乗り替わりだと思っていたそう。
 「秋華賞を勝てなかったら、次走のエリザベス女王杯では短期免許で来日する外国人騎手に乗り替わる予定だったんです」
 
しかし、これはNFしがらきの松本場長が否定しています。
 「実は正式に決まっていた乗り替わりではないんです。GⅠに届きそうで届かなかったクロノジェネシスと北村友一。僕はハッパをかける意味で乗り替わりの話をしたんです。ディープインパクトには武豊。テイエムオペラオーには和田竜二。そのような名コンビが昔はありましたよね。そういう馬たちのように“クロノジェネシスには北村友一”であってほしかった。だからこそ、秋華賞では彼にゲキを与えたんです」
北村友一連載【41】「秋華賞を勝てなかったら乗り替わり」の真相 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

 そのゲキに応え、見事な手綱捌きで優勝。クロノジェネシス&北村友一コンビは継続しました。
北村友一連載【42】やっとGⅠ勝利をプレゼント「心からうれしかったです」 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

 その後、やや間隔が詰まっていたことも影響したかエリザベス女王杯は5着。4歳シーズンになり、重馬場の京都記念は快勝したものの、大阪杯では先に抜け出したラッキーライラックを捉えきれず2着に終わりました。
 北村騎手は大阪杯について以下のように語っています。
 「勝てると思っていました。でも、実際にはエリザベスも大阪杯もラッキーライラックに負けた。こういう負けを自分なりに分析し、次につなげようと思いました。勝てると思った相手でも戦い方次第では負けることもある。枠も外でしたが、4コーナーで通ったところが違ったんです。僕はダノンキングリー、ジナンボーの外側から上がっていきましたが、相手は内を通っていました。そこが一番のポイントと思っています。枠順や馬場の傾向を考えるとベストなレースはできたとは思います」

得意の馬場で圧勝劇

 次走に選んだのは春のグランプリ・宝塚記念。ピンク帽のクロノジェネシスは中団前目を追走します。4コーナーで先頭に並びかけるとあとは独走状態。2着のキセキに6馬身差をつける圧勝劇。
 「外枠でしたが、直前の大雨で外の方が馬場も良かった。有利になると思いましたし、最初からある程度は出していってポジションを取るつもりでした。でも、このレースに関しては〝強かった〟のひと言です(笑い)。馬が強かった!馬に余裕があるから、僕も格好つけて乗ってますね」
北村友一連載【43】ラッキーライラックへのリベンジ 宝塚記念は〝強かった〟 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

 G1レース2勝目を挙げたクロノジェネシス。秋も十分な間隔を空けて、天皇賞と有馬記念に挑みました。

 天皇賞は前年覇者アーモンドアイが単勝1.4倍の支持を集めていました。クロノジェネシスはそれに次ぐ2番人気(4.4倍)。
 この時は出遅れが悔やまれたとのこと。
 「クロノジェネシスはゲートの駐立が苦手。このときもスタートの一歩目で遅れました。府中の2000メートルはスタートして外の馬たちが内へと寄ってくる。一歩目が遅れたためにポジションを下げざるを得ない状況となってしまいました」
 「宝塚記念を重い馬場で勝った。良馬場の時計勝負では…といった声も聞いていましたが、僕は高速馬場でもクロノジェネシスの末脚は通用すると信じていました。実際にポジションを下げざるを得ない状況から、上がり3ハロンを32秒8で走っていますからね。本当にスタートの一歩目だけ。あそこで出ていたら、もう少し際どい競馬になったと思っています」

 アーモンドアイを捉えきれず、春の天皇賞馬フィエールマンに交わされ3着。惜しいレースでした。

堂々のグランプリ春秋連覇達成

 三冠馬3頭が競演したジャパンカップをパスし、予定通り有馬記念へ。クロノジェネシスは1番人気に支持されました。2番人気は天皇賞で先着を許したフィエールマン。

 ゲートが課題でしたが、クロノジェネシスは9番枠から好スタートを決め、中団からやや後ろのポジションにつけました。フィエールマンがこれを見る形でしたが、1周目のスタンド前で交わしてポジションを上げました。しかし、北村友一騎手は泰然自若。12番手から進めます。3コーナー、残り1000m地点から進出を開始。4コーナーではもう3番手。直線に入り、内で抵抗するフィエールマンを競り落とします。外からサラキアが猛追しますが、これを僅かに抑えて優勝。春秋グランプリ連覇を果たしました。

北村騎手のコメント。
 「自分はそれほど緊張するタイプではありませんし、いつもの北村友一でいられたと思います。馬もいつものクロノジェネシスでした。少し前かきをしているところで、ゲートが開いたのですが、五分に出てくれて良かったです。位置取りというより、馬が走りやすいところで走らせたかったので、あの位置になりました。折り合いもスムーズでしたし、いつもの感じで走れていて良かったです。中山の2500m、昨日も今日も乗せてもらい、今日8R勝つことができ、自分の中で良いイメージを持って乗りました。最後、外から何か来ていることは分かりましたが、抜かれる気はしませんでした。勝てて嬉しかったですし、ホッとしました。馬が強くなっているのは間違いありませんが、メンタルの成長が大きいと思います。未対戦の三冠馬2頭がいますが、来年主役としてやっていけたらと思います」

【斉藤崇史調教師】
 「ホッとしました。あまり緊張はしないと思っていましたが、装鞍からの時間がいつもより長く、その間に緊張してきて、早く発走してくれないかと思っていました。プラス10kgということですが、落ち着いていて、太目感はありません。良い輸送を経て、良い状態で迎えられたと思います。北村騎手もずっと乗ってくれていますから、パドックで、そこまでの経過を伝えて、後は任せました。駐立の良くない馬ですが、ゲートを上手く出てくれて、位置よりも折り合いが大事なので、そこから上手くいっていたので安心しました。動くのが少し早いかとも思いましたが、自信をもって動いたのでしょうから、何とか押し切ってと思っていました。馬が一生懸命走り、騎手が上手く乗ってくれた結果です。来年も、まずは無事に全てのレースを走り、その中でより上のところを使っていきたいと思います。厩舎も馬と一緒に、成長できたらと思います」 
有馬記念 2020 結果【レース後/騎手コメント】【全馬掲載】 | なぜあの人は万馬券が獲れるのか。

 馬を信じ、完璧なタイミングで仕掛けた北村友一騎手の神騎乗のように思われましたが、実は「自分が上手に乗って勝ったレースではない」とのこと。
 「クロノジェネシスは僕がうまく乗らないと勝てない馬ではない。僕は普通に誘導しただけ。宝塚記念の感触から途中で気持ちにスイッチが入るのはわかっていました。なので、そのときが来るまでポジションを気にせずに乗っていたんです。このレースの勝因は僕がクロノジェネシスを信じて乗っていたこと。これに尽きると思います」
 「誰にも負けない自信がありましたから。4コーナーも自然に上がっていけました。僕の思いに応えてくれたクロノに感謝しています」
北村友一連載【45】今明かす20年有馬記念の真意「クロノジェネシスとの信頼」 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

 馬への信頼が生んだ勝利。この年、年度代表馬はアーモンドアイが受賞しましたが、春秋グランプリを連覇したクロノジェネシスには特別賞が授与されました。

最後のコンビ

 5歳シーズン初戦はドバイシーマクラシックに出走。JRAのオッズでは単勝1.9倍の1番人気に支持されました。
 クロノジェネシスは外目を追走し、直線ではラヴズオンリーユーと併せて伸びてきましたが、大外を通ったミシュリフに交わされ惜しくも2着。悔しい思いをしたドバイの経験を力に変え、宝塚記念連覇に向けて歩みを進めるはずでした。

2021年5月2日

 この日の阪神2R。ジャグリングに騎乗していた北村騎手は他馬の斜行の煽りを受け落馬。復帰まで1年以上かかるという診断が下されました。これにより、クロノジェネシスに騎乗することは不可能となりました。

 クロノジェネシスはルメール騎手に乗り替わり、宝塚記念を連覇。前年春秋に続くグランプリ3連覇を果たします。牝馬では史上初の快挙。
 秋になり、重馬場が得意なクロノジェネシスは凱旋門賞に出走。7着に終わりましたが、よく頑張った印象です。この時はO. マーフィー騎手が騎乗。
 帰国後、ラストランとなる有馬記念に出走しました。皐月賞と天皇賞(秋)を制したエフフォーリアに次ぐ2番人気。しかし、この時は海外帰りということもあり状態が良くなかったというのが私の見立てでした。調教師のコメントも全くよくなかったです。ちなみに、初めて書いたnoteがこの有馬記念(とエクストリーム帰寮)についてでした。以下の記事。

 「クロノジェネシスについて。今回は外させてもらいました。いつも懸命に走る馬ですが、今回は追い切りが悪すぎます。プロのニッ〇ンの記者が見てもC評価。私も映像を見ましたが、併せ馬の相手に乗った乗り役が何度も後ろを確認していました。凱旋門賞でそれなりに頑張りましたし、疲れがあるのかもしれません。また、リスグラシューとダブらせる人もいましたが、あの馬は4歳秋にG1初制覇し、5歳に本格化。この馬は3歳秋にG1初制覇し、本格化したのは4歳です。もう衰えていてもおかしくはないのではないか……と考えてしまいます。リスグラシューは絶好調でしたし馬体も成長途上でしたしね。今回はブエナビスタの二の舞となる方に賭けます。それに、ルメールもこの秋調子があまりよくありません。G1は1勝のみ、重賞を勝ったのは全て1番人気馬。良い馬に乗りすぎて腕が落ちているのではないでしょうか。

 何より、調教師の泣きが入りすぎです。もちろん、これがブラフの可能性も大いにあります(オルフェーヴルの引退レースでも調教師の泣きが入る→蓋を開けてみれば8馬身差圧勝)。勝ったらごめんなさいで今回は切らせてもらいます。馬連の相手にしても良かったのですが、そうすると当たってもおそらくトリガミになるので選びませんでした。3連系で狙う人は抑えていても良いと思います。今回の調教師の一連の発言やトーンはこの馬のファンに対するせめてもの誠意かなと思いました。もちろん、ラストランを飾ってほしい気持ちはあります。桜花賞馬グランアレグリア、オークス馬ラヴズオンリーユーとともに三冠を分け合った全馬が有終の美となれば伝説の世代として語り継がれることでしょう。ただ、最後は北村友一に乗ってほしかった……」

 私はこのように書いていました。それでも地力で3着まで来たのは、改めて凄いなと思いました。グランプリ4連覇こそならなかったものの、最後まで強い馬だったなと思います。
 この日の最終レース後、クロノジェネシスの引退式が行われました。リハビリ中だった北村友一騎手も参加。
【有馬記念】クロノジェネシス引退式 久しぶりの競馬場に、リハビリ中の北村友「VRの世界」 | 競馬ニュース - netkeiba

 「今、この場に立っているのが仮想現実というか、VRの世界というか。ふわふわしている感覚です」と久々の“仕事場”に率直な思いを吐露。ターフを去る相棒に対して「ここまでいろんな経験をさせてもらえて、ありがとうという感謝の気持ち」と、しみじみとした表情で語った。

 引用してきた北村友一連載の最終回は以下の記事。
 北村友一連載【54=最終回】今後、僕がどう変化していくのか楽しみにしていてください | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬

 「クロノジェネシスの話は過去の栄光なんですよ。そこにとどまるわけにはいきません。すごいジョッキーになれるかどうかわかりませんが、このまま終わるわけにはいかないと思っています」

 「見とけよ!という強い気持ちで乗ります。どういう変化があるのか楽しみにしていてください」

クロワデュノール

 父キタサンブラック、母ライジングクロス、母父ケープクロス
 主な勝ち鞍:2024ホープフルS
 馬主:サンデーレーシング
 生産者:ノーザンファーム
 調教師:斉藤崇史
 主戦騎手:北村友一

衝撃の新馬戦

 クロノジェネシスと同じ馬主、生産者、調教師、騎手であるクロワデュノール。新馬戦の内容は物凄いものでした。

 道中は2番手を追走し、直線で逃げた良血馬アルレッキーノを交わすと突き放す一方。2着に残ったアルレッキーノに2馬身半差の完勝。そこから3着のウィンスタンリーは更に4馬身差。勝ちタイムの1:46.8は東京1800mの2歳新馬戦史上最速。しかもそのタイムが6月2週目の新馬戦で叩き出されたのです。私はこのレースを見て衝撃を受けました。(最初の2週でやめてしまったのですが)全ての新馬戦にABCD評価をつける中で、このクロワデュノールは文句なしのA評価。2週間でAをつけたのはこのレースとダノンフェアレディが勝った新馬戦のみでした(ダノンフェアレディはその後走っていないのでなんとも言えませんが、、、2着のショウナンザナドゥは阪神JFで4着だったことを考えると見立ては外れていなかったのではないかと思います。)

状態最悪の東スポ杯

 「これはとんでもない馬になる」と確信した私は、2戦目の東スポ杯2歳Sを府中まで観に行きました。研修で出会った他社の社会人1年目の人達が「競馬を教えてほしい」と前々から言ってくれていたので、「それなら後に活躍すること間違いなしのこの馬を見せたい」と思い、この日を選びました。この馬と同じキタサンブラック産駒の世界最強馬・イクイノックスも2戦目にこのレースを選択しています。

 しかし、せっかくこのレースを観に行こうと決めたにもかかわらず、陣営はあまり自信がない様子。
 「良くなっているところかなという感じ。この馬のポテンシャルを考えれば、もう少し動いても」と斉藤崇調教師は慎重なジャッジ。「心肺機能が高い。あとはポテンシャルでカバーできるかどうかですね」と期待も寄せた。
【東京スポーツ杯2歳S】大物候補クロワデュノールはCWでラスト11秒3 斉藤崇調教師「心肺機能が高い」 | 競馬ニュース - netkeiba

 内心「これで負けたら自分の見る目が無いみたいになるからやめてくれ!」と思いつつ、当日のパドックを見たら+24㎏のゆるゆるな馬体で出てきました。


緩すぎた。

 それでも。本物の強さがあるなら勝ちきってくれるだろうと思いながらレースを見ていました。
 レースが始まると3番人気のサトノシャイニングが逃げ、2番人気のレッドキングリーが2番手。これらを見ながらクロワデュノールが3番手の外を追走します。3,4コーナー中間から徐々に進出を開始。直線入り口でサトノシャイニングに並びかけます。
 楽なペースで逃げた分、サトノシャイニングは思いの外粘りました。しかし、クロワデュノールは新馬戦でも見せたように鞭への反応もピカイチ。一発二発三発と北村騎手が鞭を入れると先頭に立ちます。内からサトノシャイニングが差し返すか?という場面もありましたが、最後は4分の3馬身差で勝利。万全ではない中、勝負根性で勝ち切りました。


ゴール前。逃げるサトノシャイニングに競り勝つ。

 このレースを見て、改めて只物では無いなと思いました。並の馬なら負けるような状態。その上、あまりこの馬には向かない3ハロン勝負。クロワデュノール自身は残り800mから動き始めましたが、レースラップを見ると12.7 - 11.2 - 12.2 - 12.4 - 12.4 - 12.5 - 11.3 - 10.9 - 11.2という瞬発力勝負。長く良い脚を使えるのが持ち味ですが、3F最速33.3の脚を使ってこの内容で勝ち切れるのかと戦慄しました。

 北村騎手のコメント。
 「レース自体は折り合いがつきましたけど、返し馬では少しハミに頼って乗っかってくるところがあり、体重が増えていた部分もありますし、少しハミに頼って走っていたなという気がします。まだ100点満点ではないというのは出走するにあたって思っていましたし、そのなかでしっかりと強い競馬で勝ち切ってくれましたので、本当にこの馬のポテンシャルを感じますし、一生懸命走って勝ち切ってくれた馬に感謝したいと思います。今日のこの感じで、こういう競馬ができましたから、次はもう少し体も楽になって操縦性も良くなってくれると思っていますし、この馬のポテンシャルを今日乗っていてさらに感じましたし、先々も頑張ってくれるのではと思います」
【東スポ杯2歳Sレース後コメント】クロワデュノール北村友一騎手ら | 競馬ニュース - netkeiba

圧巻のパフォーマンスで2歳王者に

 次走にG1ホープフルSを選択したクロワデュノール。単勝オッズは1.8倍の圧倒的1番人気。他には札幌2歳Sで2歳女王アルマヴェローチェに勝利したマジックサンズ、新馬戦で7馬身差の圧勝劇を披露したピコチャンブラック、そのピコチャンブラックをアイビーSで倒し、好タイムをマークしたマスカレードボールが人気を集めていました。

 ゲートが開くと1番のスタートを決めたクロワデュノール。そのまま先行し、北村騎手は外に誘導します。多少外を回しても、進路さえあれば勝てると言わんばかりのコース取り。2コーナーで外からマジックサンズが併せてきましたが全く動じません。一旦前に行かせて外に出し中団を追走。前半1000mは61.4のスロー。遅い流れを見て後方にいたファウストラーゼンが一気にポジションを上げました。残り800m、ファウストラーゼンを追いかける形でクロワデュノールは進出を開始。4コーナー手前で3番手に上がり、直線で前を行くファウストラーゼンを堂々と交わします。中団内目をロスなく追走していたジョバンニが追い込んできますが、交わせそうにありません。

 中山の坂もなんのその。2馬身差で完勝。テン良し中良し終い良し。2歳馬と思えない完璧な競馬でした。

 北村騎手は落馬事故を乗り越え、クロノジェネシスで制した2020年有馬記念以来のG1勝利。勝利後のジョッキーインタビューでは男泣き。

 「馬が本当に強かったですし、馬を信じていました。枠の並びを見た時にスタートだけは絶対に決めたいなと思っていたので、出てくれて良かったです。

 (道中は)思い通りではなかったですが、馬を信じて行ったので、どんな流れになっても自分の競馬に徹して、強い競馬ができました。緩さが解消されて、より動ける態勢が作られていたなと思います。

 来年へという気持ちが強かったので、無事に勝てて本当に良かったですし、来年に繋げたいと思います。またGIを勝つことができました。本当にたくさんの方々に助けていただいて、応援していただいて、またここに導かれたのだと思います。この場をお借りして、皆さんに感謝の気持ちを言いたいと思います。ありがとうございます。来年はまた大きいところで活躍したいと思いますので、ともにまた歩んでください。これからも一生懸命努力していきたいと思います。応援よろしくお願いします」

 私はこの日、京都競馬場にいました。ターフビジョンに映る北村騎手を見てもらい泣きしてしまいました。

 また、斉藤調教師のコメントも良かったです。
 「今までの2戦は少頭数の競馬でしたが、今回は頭数も多かったですし、難しい展開になったなと思っていますが、その中で北村騎手が上手く誘導してくれましたし、馬もそれに応えて勝ち切ってくれたのは素晴らしいと思います。戦前にも北村騎手とは色々話しましたが、本当にやってほしい事を全部やってくれた感じですし、馬の力を信頼して乗ってくれた感じです。

 ジョッキーの心理としては難しかったと思いますが、その中でも冷静に乗ってもらえたと思いますし、動きたいタイミングで1頭、2頭と動かれてしまって難しい展開だったと思いますが、ジョッキーが上手く誘導してくれました。来年、皐月賞も日本ダービーも行きたいと思っていますので、皐月賞と同じ舞台で勝てたのは嬉しく思いますし、これで胸を張って来年に向かえると思います。デビュー前からすごく良い馬だと実感を持っていましたが、こうやって結果を残してくれていますから素晴らしいと思いますし、本当に来年が楽しみだと思います。

 (今後について)一旦放牧に出して状態を見て、それからになります。心肺機能がすごいところがこの馬の一番の強みだと思いますからそこを磨きつつ、成長を待ちながら大事にやっていきたいと思います。

 (北村騎手には)クロノジェネシスの時に本当によくしてもらって最後まで乗ってもらいたいなと思っていたところで大けがをされて最後まで乗ってもらえませんでしたが、あの時できなかった事をこの馬で一緒にやっていけたら最高だなと思います。クロノジェネシスとジェラルディーナが引退してから、なかなかGIを獲れていませんでしたが、こうして楽しみな馬が出てきてくれましたし、来年は競馬界をもっと盛上げられるよう厩舎としても頑張っていきたいと思いますし、競馬界の中心にクロワデュノールがなれるように頑張っていきますので見ていて下さい」

 この北村騎手を信じ切ったコメント。そして、「あの時できなかった事をこの馬で一緒にやっていけたら最高」という想い。このコンビこそ、引退まで続いてもらいたい。その上でクロノジェネシスが届かなかったドバイ、そして凱旋門も見据えているのではないでしょうか。

 クロノジェネシスのヒーロー列伝ポスターのタイトルは「夢よ、何度でも。」夢の続きをこの馬が見せてくれることでしょう。


クロノジェネシスのポスター

 

2025年の主役

 年末の日経新聞にこんな記事がありました。

 ネット上では「海外G1の勝利こそなかったが善戦続きではなかったか」「イクイノックス級の馬がポンポン出てたまるか」という、記事への批判に近いコメントが見られました。

 ただ、イクイノックスに続き、ドウデュースなどの2022クラシック世代がほとんど去った今年の競馬界。古馬G1で振るわない新4歳、5歳の活躍に期待したいところですが、やはりニューヒーローの誕生を期待したい。クロワデュノールは今年の主役になると思います。キタサンブラックのファンだった私としては、キタサンブラック産駒のクロワデュノールが活躍してくれれば嬉しい限りです。

 今年も楽しみな1年になりそうです。