2022年の防災DX振り返りと、防災DX官民共創協議会の行方
JX通信社/WiseVine藤井です。防災DXという業界に身をおいていると、この年末年始も土砂災害やミサイル発射など、お屠蘇気分にもなれない事象が頻発しており、おめでとうございますという機会もないまま今日を迎えています。
年末にかけ、今年の災害を振り返るウェビナーに登壇させていただく機会がいくつかあり、まだ無料で視聴可能なものがありますので、ご関心ございましたらぜひご覧いただければと思います。
2022年は、中堅以上の企業が「もうコロナ禍前の働き方に戻ることはないだろう」と、本格的にオフィスの配置や店舗の統廃合を推し進めつつ、「経済の回復に伴う人手不足」とどう向き合うか考えながら、自然災害だけでない、経済・社会・事件事故などの多様なリスクと戦ってきた一年だったように感じています。
ちょっと大げさにいえば、これまで「DX」といえば「新規事業」とか、「もっとたくさん働いて儲けるための改革」といったニュアンスがあったように思いますが、2022年に社会に定着したのは、自動配膳とか、受付業務の簡素化とか、「人が足りなかったところを補う」DXが目立ちました。そんな中、「防災DX」という世界に身を置く私は、「気を抜くことができないが、どうしても平時には意識や工数を向けることができない」防災という世界で、どう社会のニーズに応えていけばいいのか、考え続ける1年でした。
そんな中、大きな動きとして年末にかけて急激な動きを見せたのが、河野デジタル大臣の記者発表から突貫で立ち上がった「防災DX官民共創協議会」です。
立ち上げ発表から参加団体募集までの間、この組織はそもそも何をするのか?という疑問が業界を飛び交っていたのですが、一応、いまのところ2023年4月までは立ち上げ準備期間と定義されており、組織のミッションは以下のように整理されています。
要するに、「何が課題なのか官民の間でまだ合意ができていない」ということです。いきなりぶっちゃけていますが、これは決してデジタル庁がぶん投げているわけではなく、まだ霞が関が実現したいことと、民間が課題だと思っていることが一致していないということを合意した上でこのようにまとめられたものです。
一方、ここでは割愛されていますが、「官官」の間のすり合わせもまだまだ不足しているという指摘も、民間からは多く出ました。省庁間(内閣府、国土交通省、総務省消防庁、警察庁、防衛省、etc…)はもとより、都道府県や、防災の最前線に立つ市町村との認識のすり合わせも、これからやっていかなければならないでしょう。
「データ基盤」という言葉は、2022年の国のデジタル施策で幾度となく出てきた言葉ですが、複数の意味や期待値が込められています。
河野大臣は、「マイナンバーカードの防災分野での活用」を念頭に置いておられるようです。Netflix版アニメ「日本沈没」(https://japansinks2020.com/)でも、マイナンバーカードを提示しないと国外脱出のための船に乗れない、というシュールなシーンが出てきますが、マイナンバーカードによる行政手続きの簡素化は、平時だけでなく、生活再建のフェーズで大量に発生する行政手続きにおいてこそ、(主に行政側の苦労を減らして、迅速に手続きを終わらせる側面で)効力を発揮します。マイナポイントの「公金受取口座」の登録でポイント付与、という話を聞いて、「またバラマキいつでもやるってことかい」と思われた方も多いかもしれませんが、コロナ禍のようなシーンよりも、重要なのは被災者に迅速に見舞金などの給付手続きができることです。個人的には避難所での避難者名簿の管理や、災害時要救護者への支援などにはちょっと活用は難しいんじゃないかと思わなくもないのですが、復旧・復興フェーズの大量の事務作業をDXしていく、というのは非常に理にかなったことで、かつそういった仕組みを市町村ごとに整備するのではなく、オンラインでクラウド上に全国共通で持っておくためのAPIを今から整備しておけば、システムそのものの被災リスクも低減できるだろうと思います。
他方、「データ基盤」という言葉に、市民側ではなく、公共側が活用する「防災情報システムの一元化」というニュアンスを受け取り戦々恐々とする業界の人もいます。とはいえ、自治体が用いている防災情報システムは、単に情報を確認したり整理するだけでなく、防災行政無線やエリアメール、様々なモニタリングシステムとも物理的に連携していて、地域性もかなり複雑なので、そう簡単に一つになるものではありません。民間運営委託に切り替えが進むLアラートもこれから先どうするんだろうという話も避けて通れません。
さらに、JX通信社のように、データを整備することを生業としている会社からすると、「データ基盤」というのが一つの箱になると、そこにデータを入れてくれればみんなで使えるね!という話が、ビジネスチャンスにも、事業上のリスクにも、どちらにも転がりえるというのも事実です。公共分野で扱われるデータのすべてがオープンデータなわけではなく、民間事業者が日々汗水かいて生成しているデータもあるので、その「市場形成」も必要だろうと思います。
要するに、防災DX官民共創協議会は、日本の防災DXの課題すべてを突っ込んだ、課題解決の総本山といっても過言ではなさそうです。いまのところ、この課題を解決するインセンティブが全員ばらばらなのがとても気がかりですが、2023年は、我々もこの課題に真剣に向き合っていくことになりそうです。
私、八白土星なのですが、今年は(前厄なのに)運気絶好調だそうで、10月は「通信機器を活用して防災状況などを役立てること」がラッキーアイテムだそうです。なんですかね、私のだけこれ書いてあるんですかね。