#デザイナーになる トークイベントレポ
8月9日(金)、こちらのトークイベントに友人と行ってきました!
書籍『[新版]デザイナーになる!』の発売記念イベントです。
私はデザイナーではありませんが、同人誌などの作成経験からデザインの領域にも関心はあること、前職が広告業界関連ということ、そして、この会場「BOOK LAB TOKYO」でのイベントには割と好みのものが多いため、今回も参加することにしました。
「個人個人と向き合いたい」という思いから独立し、「アトオシ」という屋号で活動されている、デザイナーの永井弘人さん。
ロゴデザインを中心としたお仕事をされているそうです。
「これはあくまでも僕の考え方で、人によって、デザインに対しての考え方も違うと思います」という優しい前置きから、トークイベントは始まりました。
(以下、永井さんのお話は「引用」として載せ、それに対して私が考えたことなどは地の文で書きます)
デザインによってどのような問題を解決するか。目的を逆算してデザインをする。理念や方向性を共有するためのものとして、デザインがある。
「いいデザイン」というものは、評価軸によって異なってくる。好みではないようなゴチャゴチャしたデザインでも、売り上げに繋がりやすく経営面では優れているようなこともある。
デザインには「認知」「印象」「独自性」の3つの要素がある。この要素をどう盛り込むか。どれを極めるか。
例えば、代官山の焼肉屋「Kintan」。ここのロゴデザインは「ゆだねる」ことをテーマにして、あえて、少し読みづらいデザインにした。代官山に来る人相手なら、ある程度、文字が読みづらくても読み取ってもらえる、読み手に委ねてもいいかな、と思って作成した。▼
長野県大町市の写真館「イソガイスタジオ」のロゴ。大町市はアクセスは悪いけれど、ロケーションは絶景。そんな、アルプスの山々をイメージしたデザインにした。▼
香川県讃岐高松「地濱水産」の海苔のパッケージ。「一年でいちばん美味しい時期にとれる海苔なので、味には自信がある。その自信を堂々と、且つ、親しみを持てるように」というイメージをデザイン。▼
ジャージ女子の写真アーカイブサイト。ジャージの持つアクティブさと、女子らしい丸みを帯びたデザインのロゴに。▼
※この案件に関しては、以下のnoteにも制作の背景について書かれています。
「丸みを帯びたデザインが、女子っぽさを表している」というお話は、個人的には興味深いポイントでした。
揚げ足を取りたいわけでも、ポリコレ的な観点から批判をしたいわけではありませんが。「丸みを帯びたデザインは女性らしい」というイメージは今後どこまで有効なのだろうか、ジェンダーに限らず、特定のテーマから想起させるモチーフと「規範、偏見」の関係はどのように変化するだろうか、デザインにどのような変化が現れるのだろうか……ということには以前から関心があります。
仕事の依頼は、家族の友人の繋がりだったり、たまたま行った演劇で隣り合わせた人だったり、偶然の出会いで良い仕事をいただくことが多い。新規のお客様には「なぜ、ウチを選んだのか」ということをヒアリングしている。すると「ランサーズじゃイヤだけど、大手に頼めるほどのお金も出せない」というケースが多い。
ヒアリングは大切にしている。最近はSkypeなどもあるけれど、初回提案は必ず対面で行うようにしている。クライアントが「いいですね」と言っていても、どういう思いで「いい」と言っているのか、表情からも汲み取りたいから。
仕事で心がけていること。エンタメはチェックするようにしている。趣味というわけではく、好みではなくても、トレンドのものは知っておくようにする。
友人との会話や、2ch(5ch)のような匿名掲示板の内容も重視している。SNSはタテマエも多い。名前を出して堂々とは言えないようなことでも、「あれについて、実際どう思ってる?」と直接会話すると、本音が聞けることも。
妄想も大事(笑)。妄想は脳内の筋トレ。
お客様から「A」と言われたら、言われたことをそのままするのではなく、「B」や「A'」も提案できるようにする。
あなたが、日常で「嬉しい」と思うときって、どんなとき? 紙に書き出してみよう。
「日常での、嬉しいと感じること」。
私が書いたものは、こんな感じ。
疲れたときに食べるラーメンやジャンクフード。
エアコンの効いた部屋の扇風機。
かわいい猫画像。
気になる人のちょっとした仕草。
驚くような現代アート。
「ここまでやるのか!」と思わせられてしまうような演劇。
銭湯の交互浴。
仕事で契約が取れたとき。etc……
ほかの人は「レシートで会計にゾロ目が出たとき」「お客様の緊張が解けて、やわらかい空気になったとき」「いつもよりも早くバスが駅に着いたとき」などの意見を挙げていました。
お客様と接するとき、「仮説を立てること」が大事。誰が何を考えているか、合っているか間違っているかはともかく、会話や表情から「こう考えているんだろうな」ということを汲み取ろうとすることが大事。
デザインは、「言葉に起こせること」が重要。日常の「いいこと」と向き合って、言葉にする習慣をつけることが大切。
永井さんは、「言葉にすること」の大切さをたびたび強調されていました。私もいろんなアイデアをよくメモしますが、言葉にしておくと検索性も高まりますし、言語化するスキルも身につくので積極的に心がけています。
専門学校を出て15年経つけど、当時の仲間で、今もデザインの仕事を続けている人は1割もいない。本当は続けたかった人でも、終電帰りがしんどいなどの理由で辞めてしまう人も多い。
これからの時代は「土俵をミックスさせること」が大事。技術の高さではなく「あの人の生き様が魅力だから」という理由で発注する人は増えていく。
ほかの人と同じ土俵で戦おうとすると、先駆者や若い人にはかなわない。
パラレルキャリアの文脈でよく出てくるような「肩書きの掛け算」についてのお話もありました。
「商材そのものの魅力ではなく、営業マンの魅力で買ってもらうことを目指す」と考えると、営業の仕事にも活かせそうだなと思ったりもしました。(私は最近転職し、先月から営業職です)
20代前半のうちにデザインの基礎を身につけ、20代中盤〜後半には、客観的にも分かる結果や実績を出しておくと良い。
歳を重ねると徹夜ができない、家庭を持って挑戦がしづらくなってくる……などの問題も出てくる。
アートは、自分の内側からひねり出すもの。デザインは、クライアントとのセッション。(アートとデザイン、その両方を行き来するようなデザイナーもいる)
質疑応答も、ユニークな質問が多く参考になりました。
Q. スライドに出てきた、正円ではない少し横長の円グラフ。どういう意図でデザインしたのか。
A. このトークイベントは、「勉強会」のような感じにはしたくなかった。なので、人のやわらかさを意図して少し丸みを帯びたものにした。
Q. クライアントに求めることは?
A. デザイナーを信じて欲しい。段階にもよるけれど、事細かなデザインのリクエストは必要ないかも。「青が好き」とか、そのくらいことは伝えてもらって構わない。
「フンワリしすぎず、丸投げしない」というくらいの感じがいい。
この「フンワリしすぎず、丸投げしない」というのは、美容院でのカットの要望についても言えそうだな……なんてことを思いました。
Q. ロゴ作成のヒントにしているものは?
A. 三省堂の、行書・楷書辞典などを参考にした。
大型書店で「文字の骨格についての本を探しているのですが」と相談して探したりすると見つかる。
文字の成り立ちを知った上で、それをどう活かすか、あるいは外すか。
由来や目的を知った上で外すと筋が通るので、そうやって遊んでみてもいいのかも。
そんな感じで盛り上がった、永井さんのトークイベント。
会場では、ロゴを使った実際の商品や名刺、ショップカードにふれることもできました。
行ってよかったです。プロのデザイナーではなくても面白く聴けましたし、もっとデザインについて勉強してみたくなりました。一緒に行った、新人デザイナーの友人にも勉強になったみたいで。よかった。
転職して終業時間が読みづらくなり、最近はこういったイベントにもあまり参加できずにいましたが、これからも時間を見つけてあちこち顔を出したいです。
※参考
永井さんTwitter https://twitter.com/hirotonagai
永井さんnote https://note.mu/hirotonagai
アトオシ 公式サイト https://atooshi.com/
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