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2019年11月の記事一覧
二度戻らない時計の針②
「はいはい、ここでしょ」
彼女の望むマッサージをしてあげると、彼女は嬉しそうにああーここそうここーー!とうっとりと目を細めて、尻尾をパタパタと音を立てた。
(いつもの光景というのはこんなにも、安堵するんだなぁ)
『ねーねー、その服お気に入りだったんでしょ、どうするの?』
「それがさ、焼いて捨てろって宗にいわれちゃった」
ええーそれいくらなんでも無神経すぎと、彼女は呆れたといった顔をしつつも
二度と戻らない時計の針
(いつもよりもコツコツと足音が廊下に響いて、煩く感じるし足取りも重い)
私の部屋に着くまで、宗は銀狼と話して別れてからずっと無言で歩いているし、私はというとお気に入りの服装をどうするか迷っていたけれど、それよりもいつもとは違う感覚に戸惑いながら周囲を見渡してぼんやりと考えていた。
(いつもなら賑やかなのに静かだ)
よっぽど長老の命令がない限り、廊下に立って警備にあたっている筈の戦士達の