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2020年4月 宮本浩次 / 宮本、独歩。

 53歳にしてこの勢いである。88年のバンドデビュー以来、約30年もの間、紆余曲折ありながらもバンドとして走って来た男が、このタイミングでソロアルバムをリリースするという事の凄さ。53歳にして更に進化していこうという姿勢に脱帽である。しかもそれぞれの音に挑戦と初期衝動、根底にある歌の強さが同居していて、どの曲も”宮本浩次”である。

 エレカシを感じる「ハレルヤ」が冒頭を飾りつつも、初のソロ作品として発表された「冬の花」で自身のルーツの一つである歌謡曲も作れる所を見せつけ(これが本当に良い曲!)、高橋一生への提供曲「きみに会いたい -Dance with you-」のセルフカバーでダンスロックサウンド(!)まで聴かせるジェットコースターっぷり。更にジェットコースターはスピードを緩める事なく、横山健との「Do you remember?」ではメロディックパンクに、椎名林檎との「獣ゆく細道」ではビッグバンドに自身の歌を乗せられるだけでなく、完璧に乗りこなせるのをキッチリと提示(数曲後にはスカパラとの曲でスカにも乗りこなすという偉業も!)。そして「解き放て、我らが新時代」ではヒップホップからの影響を感じさせるサウンドと歌い方に衝撃を覚え(ガストロンジャー聴いた時に感じた衝撃に似ている)、最後には「昇る太陽」のグッドメロディーと疾走感という”THE 宮本節”で締めくくる。

 長ったらしく書きましたが、どうですかこのバラエティーに富んだ楽曲たちは。これ本当に、歌っている人間が宮本浩次であるからこそ、1つの作品として筋が通るんだと思うんです。いろんなサウンドを横断してアルバムを作るっていうのは割と色々なアーティストがやる事だけれど、正直その付け焼き刃感が否めない作品も結構あったりで、、、。こういうアルバムを一つの作品として成立させるのは、宮本浩次というシンガーの強い個性と歌の巧さ、メロディーセンスこそが成せる業だという事を本作は突きつけていると思う。

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