2017年10月 BAD HOP / MOBB LIFE
現在、日本の音楽シーンに到来しているヒップホップの要素の1つ『フリースタイルバトル』の波のまさに中心にいるT-Pablowを始め、その双子の弟でありT-Pablowとのユニット「2WIN」としても活動するYZERRの他、地元川崎の仲間達で結成されたのが、今回紹介するBAD HOPだ。
既に挙げた2人以外のラッパーも実に個性豊かで、かつ、このグループは若手のラッパーが持ち合わせて欲しいもの全て持っている。それは、威勢の良さ/貪欲さ/USヒップホップへの理解と巧みな吸収の仕方、それに加えキラキラした何か。彼らのPVを見たり、音源を聴いたりすれば、それらを持ち合わせている事は一目瞭然である。また、彼らが生まれた土地(川崎の工業地帯)に起因する、育った環境の悪さ。そういうものを彼らはヒップホップというアートに(もしくはエンターテイメントとして)上手く昇華させている。というか、そういった部分もがUSヒップホップを思い起こさせてくれて、こちらも興奮する。
そんな彼らにとって初の全国流通盤となる本作『Mobb Life』は、彼らが川崎の工業地帯で育ち、まともに生活する事が困難な中でも、仲間達と共にヒップホップに活路を見い出し、ヒップホップで食っていってやる、という野心が垣間見える1枚である。しかしそれは、決して土臭い野心などではなく、準備に準備を重ねた非常にソリッドな渾身の1枚である事も聴いていればわかる。それに彼らがすごいのは、トラップをやる人は確かに日本でも増えたが、本国アメリカのトラップの‘ノリ’ と ‘あの雰囲気’を消化して、自分達なりのトラップを鳴らしている所だ。しかし本作はゴリゴリのトラップチューンだけでなく、メロウなギャルチューン、はたまたエモーショナルな楽曲まで色とりどりなこの1枚が、間違いなく日本のラップシーンに与える影響は大きい。