2015年7月 水中図鑑 / 198X
1曲だけ聴いて「これが入ってるなら、そのアルバムは絶対に名盤」という作品に時折出会う事があるけれど、この水中図鑑というバンドの初となるフルアルバム「198X」は、ご多聞に漏れずそういう稀な作品の1つで、先行でYOUTUBEにPVが上がっていた「櫻の園」を聴いた瞬間、頭か胸かわからないけど、本当に何かでガーン!と打たれた気分になった。
それから毎日の様に、このアンセム(すみません勝手に決めつけて)を繰り返し繰り返し聴いて、毎回感動しておりました。バンドやってて、こういう曲が完成した時の達成感って凄いんだろうな、とか、これをレコーディングし終えて、みんなで聴いた時の満足感たるや…などなど、よくわからない妄想を抱きながらひたすら聴き続けて、ようやくアルバムをフルで聴く事ができた時は、自分の勝手な「これが入ってるなら、そのアルバム絶対名盤でしょ」!という予想の通りに、本当に内容の濃い、音の太い、怒涛の勢いを持った素晴らしい名盤だった。
シューゲイザーの恍惚と郷愁感、ポストロックの緻密さと奇怪さ、オルタナの重さと荒々しさ等が、完璧な調和を持ってこの1枚の作品にまとめられている。特に感じたのは、懐かしさというか寂しさというか、もう戻らない時間を想いながら、それを冷静に受け止めるような楽曲の佇まいだった。
余談ではあるが、本作を何度も通して聴いた後、エンジニアを曽我部恵一、LOSTAGEなどを手掛けた池内亮氏が担当されている、という事にもうなづけたし、水中図鑑の抜群のセンスを感じた人ならば、彼らの出身校がスチャダラパーと同じ桑沢デザイン研究所出身だという事にも納得がいくことだろう。