社内のつながりをつくるため「部内ラジオ」はじめました。ベネッセコーポレーションUdemy事業本部
中途採用やリモート勤務が多いと、部内のつながりを生み出すことが難しい・・・。そんな悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか?
そこで「幸せな働き方伝え隊!」がお話を伺ったのは、ベネッセコーポレーションのUdemy事業本部さん(*)。社内のつながりをつくるために、「部内ラジオ」を始めてみたそうです!発案した小西加奈さん、ラジオが始まったいきさつと今の様子、教えてください!
ときにはギャグあり、歌もあり!?
「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」でおなじみのベネッセコーポレーション。小西さんは、主に社会人向けの教育事業を展開するUdemy事業本部の事業戦略部で、組織開発や企業文化の共有といったHRの分野を担当しています。ラジオはこれまでに2回放送されました。
「ラジオ」と呼んではいるものの、「Microsoft Teams」のビデオ会議システムを活用。部員たちがランチをとりながら気軽に視聴できるよう、お昼休みに生放送します。番組はアーカイブ化しているので、放送終了後も好きなときにパソコンやスマホで再生できます。
小西さんと一緒にパーソナリティーを務めるのは、事業戦略部長の桃井大地さんです。番組では、部員たちから事前に寄せられた桃井さんへの質問をラジオネームと共に紹介し、桃井さんが一つひとつ答えていきます。
しかし、会議や面談のように堅苦しいやりとりでは、なかなか聴いてもらえません。ときにはギャグあり、歌もあり!? カジュアルな雰囲気を心がけているそうです。
「桃井さんにとっての理想の組織とは?」「部の人数はこれから、さらに増えますか?」
事業戦略や組織のあり方から、桃井さん自身の考えや趣味に至るまで、質問は多岐にわたります。
強めたかったのは、上下のつながり
それにしても、なぜラジオという形をとろうと思ったのでしょうか。小西さんが強く意識したのは、管理職と部員の「つながり」を強めることでした。
「組織がどんどん大きくなるなか、多様な働き方ができる環境もあり、メンバーが部長や課長と話す機会は限られていました。『管理職の人たちは、事業のあり方や組織の今後について、どう考えているのだろう?』と、モヤモヤを抱えたメンバーが多いと感じたんです」
背景には、Udemy事業本部特有の事情がありました。
一つ目は、組織の急成長です。2018年に数人だった人員は、2024年に約30倍に増加。事業戦略部だけでも約数十人のメンバーがいます。他社や他業界を経験した中途採用のメンバーも続々と仲間に加わりました。
もう一つはリモートワークの浸透です。事業本部全体でみると、リモート(在宅勤務)と出社の割合は、おおよそ「7対3」。柔軟な働き方ができる一方で、オフィスで顔を合わせ、言葉を直接交わす機会はどうしても限られてしまいます。
対話を大事にしているという桃井さんは、メンバーたちと直接話す機会を持てるよう、出社する曜日も設けていますが、「いきなり話しかけづらい」と感じる人も少なからずいたそうです。
小西さんはHR担当という仕事柄、他のメンバーとの距離が近い分、現場の戸惑いや疑問を直接聞くことが多くありました。なかにはHR担当だけでは解決しきれないこともあったため、部のリーダーである桃井さんとメンバーが、間接的にでもコミュニケーションがとれる場を生み出せないかと考えました。
それなら、桃井さん自身の言葉で考えを発信し、メンバーの疑問や質問に答えてもらおう! そして、行き着いたのがラジオだったのです。
口火を切った部長
どんな番組にするのか、小西さんは桃井さんや同じチームの仲間たちとミーティングを重ねました。実は当初のアイデアは、今とは異なるものでした。部員に一人ずつ出演してもらい、その人が取り組む仕事のことやバックグラウンドを深掘りしていく。つまり、組織に所属する一人ひとりに光を当てていこうという考えです。
しかし、小西さんの考えは違いました。
「みんなで組織について話し合う時間がなかなか取れない中、まずは個々のモヤモヤを拾い、それに桃井さんが直接答える形がいいのではないか」
部員一人ひとりが自己開示をする前に、まずは部長自らが考えを発信する――。今はそういうフェーズだと感じたのです。
リモートワークの割合が多く、メンバーも一気に増えたため、お互いに直接会って話したことがないという人も少なくありません。そんな状況では、自己開示を求められても「自分の意見を否定されたらどうしよう」「自分の言うことは間違っている?」と不安を感じる人もいるでしょう。
「自分も考えを発信していいんだ」「部長って、思ったより話しかけやすい人なんだ」という雰囲気を高めたいという小西さん。ラジオを通じて「桃井さんが口火を切ってくれた」と話します。
放送後にアンケートで寄せられたメッセージの一部です。
「みんなが考えていることが分かって良い時間だったし、良い時間だと思うからこそ、今後は自分も発信していきたい」「真面目なお便りにはしっかり真摯に向き合いつつも遊び心を忘れない。そして、それをみんなで楽しんでいく。この組織、最高です」
こんなうれしい反応が、小西さんの原動力になっています。
ラジオで積み上げる無形資産
「楽しくカジュアル」がモットーのラジオ番組ですが、リーダーはどう捉えているのでしょうか。Udemy事業本部をまとめる執行役員の飯田智紀さんは「決して『遊び』ではありません。『つながり』という無形資産を積み上げる大事な活動です」と話します。
さらに「つながり」の重要性について、こう説明してくれました。
「組織が大きくなっても、チームのみんなにはハッピーな状態でいてほしい。そのための因子は様々ですが、一番大きいのは『人と人とのつながり』だと思います」
スタートアップ企業は成長の過程で、いわゆる「100人の壁」に直面すると言われます。数人で始まった企業も、従業員が100人に達するころには組織構造が複雑になり、コミュニケーションや文化を共有するうえで色々な課題に直面する――。これに似た経験を、Udemy事業本部は大企業にありながら経験していると、飯田さんは見ています。
「組織も人と同様に、成長のスピードが速いと『成長痛』のように様々な課題が出てきます。その過程で個人が抱える悩みや辛さを癒やしてくれるのは、同僚や上司、先輩・後輩といった仲間の存在だと思うのです」
「例えば会社に留まるか去るか悩んだとき、大事なのは『自分は組織に必要とされている』と感じられるかどうか。そして、その実感を得るためには、共に働く仲間とのつながりが欠かせません。つながりが希薄な組織では、自分が必要とされていると感じることは難しいからです」
「Bdemy」で学び、つながる
Udemy事業本部には、この飯田さんの考えにもつながるユニークな試みがあります。本部のメンバーが講師役を務め、自分の経験や知識を仲間とシェアするプログラムです。2023年の後半に始まり、すでに十数回開きました。
ヒントになったのが、オンライン学習プラットフォームの「Udemy」。組織名についている通り、「Udemy」は事業本部の主力事業です。ベネッセコーポレーションがアメリカのUdemy社と業務提携し、日本で独占的に事業を展開しています。様々な領域のプロフェッショナルたちが講師となり、オンラインで学びを届ける――。そんな「Udemy」のようなプログラムを社内で実施しているので、ベネッセの頭文字「B」をとって「Bdemy」と名付けました。
営業、マーケティング、データサイエンス、商品開発、そしてコーポレート機能。Udemy事業本部には一つの企業が持つべき機能がほぼ揃っています。他の業界を経験した中途採用の人も数多くいます。ですから、財務やHR、製造業界の話など、多種多様な講座を開くことができるそうです。
飯田さんが、この取り組みの意義を話してくれました。
「実は聴く側だけでなく、教える側にも大きな学びがあります。自分がやってきたことの棚卸しになるし、言語化にもなる。質問されて初めて気付けることもあります。そして何より、自分では『たいしたことはない』と思っていた自身の経験や知識が、他の人にとって価値があるということを体感できるので、ハッピーな気持ちになれるのです」
実は身近に、こんな得意技やバックグラウンドを持った仲間がいる。このことを知ることで、いざというときに相談できる関係性が生まれるきっかけにもなっています。
「人はどうしても自分の能力だけで未来を考えてしまいがちです。そうではなくて、組織の総和で考える文化がつくれると、よりダイナミックに大きな挑戦ができると思います」
講座で扱うのは、特別なスキルに限りません。例えば、育休を取ったメンバーたちの座談会をオンラインで開き、仕事と子育ての両立に関する悩みや工夫をシェアすることもありました。
継続は力なり
ラジオとBdemyを企画した小西さんは、こうした取り組みが定着することが重要だと感じています。今後は当初のアイデアにあった通り、メンバーたちにラジオ出演してもらい、自分の前職での経験や今の取り組み、考えについて発信してもらうつもりです。
今、小西さんが意識しているのは継続です。取り組みを地道に続けることで、「みんなが『つながりって重要だな』『仲間とつながることで仕事に良い影響が出たな』という実感をより持てるようにしたい」と考えています。
「仕事をしている時間って、人生の大部分を占めますよね。それなら、働いているときも絶対に幸せな方がいい。つながりがあれば、リスペクトや感謝が生まれるので、その分、幸せな組織にしていけると思っています」