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『ルックバック』にみる、初期衝動

 創作を諦めない二人の姿に感情が動く。
マンガにしろ、小説にしろ、映画にしろ、何かに夢中になったことのある人に無条件に届いていく作品だとおもう。
いま現在、勇気づけられるゲージュツ家の卵たちがきっといっぱいいてほしい。

学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野と、不登校の同級生・京本。
ふとした出会いによって、二人の人生が動き出す夢のような共同漫画家への道と、そうはならなかったパラレルワールドのほうへふと迷い込む異世界。一筋縄ではいかせない、確かな強さ。
わずか1時間で響く青春もの。

強い意志の藤野は、おとなしい京本の描く精巧な背景画に助けられ、若干高校生で連載漫画家への道を歩んでいく。
凸凹な二人に育まれた友情は本物だ。だからこそ京本は、自らの意志で美大進学を望み叶えていく。

引っ込み思案だった彼女を変えたのはほかでもない藤野で、手中から去っていく京本を責めても、互いの存在に救われたからこそ漫画家と美大生として別々の場所で夢を叶えている今なのだった。
切なくも貴い。

あの日、あの時、こうしてなければ、ああしていれば。
そんな大なり小なり後悔を抱えてみんな生きている。
凶刃に倒れた京本をおもって、いっぱい泣いて悔やんでも起こった事件は変えられない。

だけどせめて創作物のなかでなら、こんなパラレルな世界を目撃させてくれる、夢のある超展開に救われる気持ちがした。

描き続けるー。

原作は藤本タツキ氏による同名漫画。
監督は『君たちはどう生きるか』の原画に名を連ねる押山清高氏。
アニメーションでなければできない表現が随所にあって、河合優実さんと吉田美月喜さんの吹き替えがよく似合う。

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