![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132235253/rectangle_large_type_2_2e8aa526603f392e09028e754636c8e1.jpeg?width=1200)
『枯れ葉』にみる、邂逅
劇場で観てからどれくらい経つだろう。
月の始めごろ、すでに離れかけている印象を、すこしでも書き残しておきたいとおもうのはアキ・カウリスマキ作品だからに他ならない。
いつもとおなじふう、なんてことはないドラマ。
主人公はしがない庶民。そこにほんのりとユーモアが漂い、ミニマムななかに、情感だけが豊潤。
『ル・アーブルの靴みがき』で不法移民を、『希望のかなた』で難民を。お歳のせいか社会問題に触れることの増えた気のするカウリスマキ作品、本編ではロシア・ウクライナ戦争のニュースが低音でずっと流れていた。
そんななか、世知辛い世に、愛を信じて、怖がりになったもう若くはない男女が恋を育むすがたは、希望でなくしてなんだろう。
せっかく渡された連絡先を煙草を取り出した勢いで落っことす。風に吹き飛ばされる紙片...。エモーショナル。
名画座の前で偶然の再会を信じて佇む二人に、だれもが奇跡を願うだろう。
そんな男女の出会いがカラオケバーというのだから可笑しい。
ヘルシンキの人々はこんな風に名曲を歌い上げるものかと、ふふっと笑えてしまうシーンだ。
そうして、どの場面も、ほんとうにどんな場面でさえも、画面のカラー構成と被写体が絵になりつづけて至福なひととき。眼福だった。
(フィンランド=ドイツ合作/81min)