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愛情地理学的パリ、『パリはわが町』

2016年刊行の翌年、98歳で大往生を遂げられた、ロジェ・グルニエ氏による極私的断章集。

短編の名手が、所番地を手がかりに数多の出来事と出会いを想起する断章=自伝。20世紀の都市パリを生きた作家たちを偲ぶ「愛情地理学」にして人生のアドレス帳。

帯より

もはや断章というより断片になりつつある回想が、ふと大戦中、占領軍からパリを解放するにいたるレジスタンス活動の記録では脈打つように生き生きとしてくる。

当時を目撃した生々しいレポートは文化財のように貴重なものにかんじられる。

そうしていつものように記憶のなかのカミュ、ジッド、サルトル、ジュネ、バタイユ、フォークナー、ヘミングウェイ、カルペンティエル...あまた贅沢な名を次々語っても、けして気取らず誇示するものでもない、グルニエ調はいつでもずっと聞いていたくなる親しいおじいちゃんのお話みたいだ。

みすず書房の瀟洒な装丁、巻末の丁寧な索引と、精興社書体の美意識。

表紙はロベール・ドアノーのモノクロ写真で、ポン・デ・ザール前の雪合戦。1945年撮影。ドアノー生誕100年記念回顧展を観たのはいつだったか、調べてみると11年も前のことだった。
グルニエ氏とパリに恋したモノクロ写真が馴染む。

ちなみに『ユリシーズの涙』もポン・デ・ザール前のテリア犬を撮った愛嬌ある表紙だったのだ。

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