『箱男』にみる、匿名性に守られた窃視者
石井岳龍監督による芥川作家・安部公房の同名小説初の映像化。
一度、海外で始動していた企画が頓挫して数十年、本編に至る。
当時のキャスティングそのままに贅沢な布陣で異常な物語が動き出す。
モノクロにはじまる導入はワクワクした。
これはひょっとするかもしれないと思った。
”箱男”(永瀬正敏)によるモノローグ。匂いは昭和。
そう昭和感が半端ないのだ。
頭から段ボールをかぶり、完全な匿名性を手にして世界を一方的に覗き見る“箱男”と、その謎の生態に魅せられ自らも箱男になる贋医師(