書く 想う
黄砂で汚れた窓の向こうに
信号を待つ婦人の白い手袋がみえる
カウンター席の端に座った客が
「ちゅっ」と音を立てて水を飲んだ
あいつと同じだ
『文章を手放した次の日は
言葉を保管する隙間がなくなる』
嫌な奴は 知らないことを教えてくれる
昨夜 月明かりの道を歩いた
朱色のポストに近づき
投函口から封筒を落とすと
「コトン」と底で音がした
カウンター席の客は 小さな声で呟き
短くなった煙草を灰皿に押しつける
煙は浮かんだまま 流れる
今日も誰かが
小さな革命を起こす
「あなたは いつも そう言う」
血を巡らせた細い声が
遠くからきこえる
離れて 手触りを確かめて
人が動き 風が起こり
匂いがした あの日
均衡の世界で
祭り上げられ
欲望を引き出され
からめ取られた あの日
更生された思い出
自由な振る舞いへの投影
カウンター席の客はいなくなり
ウェイターが灰皿を片付ける
柱の向こうのテーブル席では
眠り始めた客のうしろ姿が揺れている
ーーー
本日の投稿は、以前noteに投稿した「誤びゅう」「spell」に続いて「5000字→500字 手法」で書いた文章(過去作品)。
文章の塊は日々増えて行くのに、削る作業が追いつかず、削られる文章がかわいそうに思えてきて「5000字→500字 手法」はこの文章で終了。
いろんなものが削ぎ落とされて、中身がぎゅうっと詰まったような気持ちになるけど、削ぎ落としすぎてわかりにくくなる。
今は書いた文章をできるだけ使って「何か」にならないかなーとやってます。なのでnoteの下書きは増え続ける。笑。