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産地を訪ねて③〜日本三大紬の一つ、信州上田紬〜

鹿児島県の大島紬、茨城県の結城紬は着物好きな人であれば一度は聞いたことがあるだろう。その結城紬が衰退し消滅してしまいそうな危機を救ったのが上田紬の職人さんだという。
江戸時代、この二つの紬とともに上田紬を加えて日本三大紬と言われていた。

<歴史と特徴>

養蚕業が盛んであった上田市。その養蚕とともに三百有余年の歴史を誇る信州上田紬。農家の自家用として織られていた紬がはじまりとされている。
別称を『三裏縞(みうらじま)』といい、裏地を3回取り替えられるほどに強い。真田家に縁を持ち、「真田も強いが上田も強い」と言われるほどに長持ちするのが特徴。
各工程においての分業制を取っておらず、糸の染色からデザイン設計、織りまで、ほとんどの工程を一貫して一人で行うのも特徴となっている。
そんな上田紬も、盛んな頃には60件ほどあった工房も現在はわずか4件のみとなってしまっている。大切な日本の文化、歴史ある伝統は残さなければならない。
今回は『小岩井紬工房』さんに訪れお話を伺った。


<工房の特徴>

小岩井紬工房さんの一番の特徴は〝本物〟。
①全て手織り
②地元の自然の素材で染糸
というこだわりがある。小岩井さんはただ産業を残すのではなく本当の上田紬を後世に残す。機械では出せない温かみと風合いを醸し出す手織り。さらに、できる限り化学染料は使わない。草木を用いて糸を染め上げることで柔らかい色味となる。その土地で特徴的な産業があるのはその土地があるから。だからこそ地のモノを使いその土地に対しての感謝を還元していく。
そうして作り上げられた、小岩井さん唯一の染め技法が〝りんご染め〟である。長野の特産であるりんごの木の樹皮を用いて糸を染め上げる。りんご農家さんとの共存が必須で、地元を大切にする心が表れている。
織り機も明治時代から代々受け継がれている木製のものを直しながら使っている。

りんご染めに用いる樹皮
歴史のある織り機

<作業工程>

・糸染め
・下ごしらえ(たて糸通し)
・織り

干している風景

<糸染め>

化学染料との違いは、染めてみないと色合いが確定しないということ。樹皮を似て冷ましてから糸を入れる工程では、温度によってのムラが出てしまうという。その色合いを見てデザインを考えるそう。

<下ごしらえ>

制作するモノによって織り機に張るたて糸の色や幅、糸と糸の間隔も決めていく。たて糸には均一の太さの絹糸、よこ糸には紬糸を用いる。

<織り>

少なくとも十日以上、長い時は数か月をかけて織っていく。着物一反の長さは十三メートル。一つ間違えればすべての工程が台無しになってしまう。よこ糸を打ち込む力加減が一定でないと織りむらが出来てしまう。単調の作業でありながら集中を切らすことが出来ない。

<織り体験>

自分でデザインをイメージして上田紬の財布製作体験をしてきました。
実際に織ってみると、一本一本の糸が紡がれ、布として形作られていく姿にいちいち関心。自分自身でも織りながらテンション上がりっぱなしでした。よこ糸を通すカラカラという音、パタンパタンというよこ糸を打ち込む音が心地良い空間でした。打ち込む強さによってできあがった生地が寄れてしまったりも経験。一定の強さで打ち込み、いかに安定して綺麗に美しく織り上げる技術の凄さを肌で感じました。
出来上がった財布が届くとこれまた感動。自分でデザインして作り上げたものにはなおさら愛着がわきます。

デザイン&織りまで自分で作製

<感想>

今回お伺いした小岩井さんは衰退の一途をたどる着物産業を盛り上げるべく、時代に合わせて変化をする柔軟性な職人さんでした。
ユーチューバ―としても活動なされており、着物にまつわる情報を発信。着物を着る機会を創るために街の商店街を巻きこみ〝キモノマルシェ〟というイベントも開催。
職人さんとして本物の手織りにこだわりながら、ご自分のブランドを製作し新しいデザインや価値を提供する小岩井さん。
古き良きを残しながらも、より現代の人に身近になるよう創意工夫しながら活動なさる姿勢は良いモノを創れば広まるというものではない厳しい現実を突きつけられました。応援していきます!

花瓶式、コースター、りんご染の名刺入れ
上田紬のテディベア

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