世界に誇る日本の文化〜盆栽の魅力にせまる〜
世界に誇る日本の伝統文化である盆栽。
世界でもBONSAIとして通じる言葉となっている。その人気ぶりは日本国内よりも世界での方が熱狂的だそうだ。
世界的人気に火をつける大きなきっかけとなったのが1970年に開催された日本万博博覧会だといわれている。
2017年に埼玉県で行われた『世界盆栽大会』には40か国約4万5千人が参加、300点を超える作品が展示された。
なぜ世界的な人気を得ているのか。
今回はその盆栽の魅力に迫る。
盆栽界一の巨匠、小林國雄氏が手掛ける
春花園BONSAI美術館(東京江戸川区)
に訪れた。
<起源 >
盆栽の起源は中国。日本への伝来は1300年前、平安時代にまでさかのぼる。長い歴史の中で独自の発展を遂げ、日本の文化にまで発展させていった。
当時は現在のような盆栽ではなく、鉢に植物を植えるだけの鉢植えと石を添えて一つの盆の上に飾る〝盆景〟であった(現在の箱庭というとイメージしやすいだろうか)。
現在のみなさんがイメージをする盆栽の形になったのは明治時代の初期。このころに初めて〝盆栽〟という呼び名が定着したという。
徳川家光、伊藤博文や大隈重信など歴史に名を遺す名だたる偉人たちも盆栽を楽しんでいた。
日本に現在する最古の盆栽は徳川家光が愛培していた五葉松の盆栽だといわれている。樹齢600年にもなり、現在でも毎年新芽が生まれている。
<小林國雄氏>
・内閣総理大臣賞(日本盆栽作風展の最高賞)を4度受賞
・春花園BONSAI美術館を創設し館長を務める
通常、盆栽の世界では10代で師匠に師事し弟子として学び始める。
一方、小林氏は園芸農家の家業を継ぎ、盆栽の世界に飛び込んだのは28歳の時。たまたま見に行った盆栽展で出会った盆栽に衝撃を受ける。
そこから独学で学び極めていった。
「始めたのが遅かった分、人の何倍も取り組まないと勝てない」という。
朝の4時に起き毎日15時間、それを40年間、現在もずっと続けている。
その結果、様々な品評会で賞を総なめし、名を上げていった。しかしその状況を良く思わなかった人達もいた。いろいろなやっかみから一度は命を絶とうとまで思い悩むほどに追い込まれた。その話はいずれ記したいと思う。(参考:致知2023年10月号)
紆余曲折の壮絶な人生を送り、それらを全て乗り越えてきた小林氏は言う。「出る杭は打たれるけど出過ぎるほどに結果を出せば尊敬に変わる。」
そんな小林氏が手掛ける盆栽が見られる場所、それが春花園BONSAI美術館である。
<盆栽の魅力>
①命の尊厳を感じさせる時間芸術
小林氏は〝盆栽は時間芸術〟だという。
一本の生きた木を何年もの時間をかけてゆっくりと育てていく一つの芸術である。その〝数年後の状態〟をイメージして〝今〟に手を加え形作っていく。
ときには人間のエゴが命を奪う。
ときには一部が枯れ残った部分は一生懸命に生き続ける。
生と死が常に隣り合わせで、生と死が同居もする。
「命の尊厳が感じられることが盆栽の魅力」
だという。
②引き算の美
中国の盆景と日本の盆栽の違いについても話してくれた。
中国の盆景は〝華美華飾〟である。
木だけではなく石や砂、草や苔で景色を作る。時には水で池を表現することもある。自然界に存在するものをまとめ、いかに一つの美しい景色を作り上げるかということを美徳とする。
一方、日本の盆栽は〝引き算の美〟だという。
侘び寂びの世界に通じる。木そのものを主役に、いかに木を美しく表現するかにある。鉢を小さくする理由も木を大きく見せる為であり、小さい葉っぱの木を用いるのも木自体を際立たせるためだという。
だからなのか。
盆栽はたった一つ、その存在があるだけで存在感を発揮する。
そこにはどしっと構え凛とした、静かでありながら内から溢れ出てくるような自己主張を感じる。
<訪問後記>
実際に盆栽美術館を訪れ。
生命のエネルギーが溢れた場所でした。中でも真柏の盆栽には圧巻。なぜ生きていられるのか、どうなっているのか理解が及ばない生命の神秘を感じられました。
また、一つの盆栽を様々な角度からも見られるのがとても面白く感じました。正面と横顔では全く表情が違う。下から見上げた時の迫力は、トトロの世界に来たかのような、たしかにそこに大木が存在しているような感覚になりました。
〝無作為の作為〟という小林氏の言葉。
もっときれいに、もっと美しく、そういって手をかけすぎてしまっても不自然になる。ときには枯らせてしまう。人を魅了する作品はその木の個性を活かし、いかに自然体を作りあげ表現するか。
言葉では伝わらない魅力。
ついつい見入ってしまう引き込まれる感覚。
実際に目の当たりにすることで初めて感じられる奥深さ。
小林氏の盆栽には、春花園BONSAI美術館には、その魅力がたしかに詰まっていました。
盆栽の魅力。それは〝生命と美〟を感じられることでした。
また必ず伺います。ありがとうございました。
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