橋梁銘板・塗装記録表コレクション(7)「大利根橋」
(7)国道6号を支える巨大橋「大利根橋」
今回は千葉県我孫子市と茨城県取手市を結ぶ「大利根橋」の塗装記録表を紹介します。(※以下の記事は令和2年の掲載当時のものです)
Googleマップ「大利根橋」
利根川を挟んで千葉県と茨城県を結ぶ橋は合計13本あります。このうち国道が通る橋は、国道6号の「大利根橋」(☆今回ご紹介する橋です)、国道51号の「水郷大橋」、国道408号の「長豊橋」、国道124号の「銚子大橋」の3本です。
「水郷大橋」「銚子大橋」は茨城県の鹿島寄り、「長豊橋」は千葉県の成田寄りにありますので、東京方面に向かう場合は、「大利根橋」または有料のバイパスとして作られた県道47号「新大利根橋」(現在は無料で通行可)、常磐自動車道の「利根川橋」(☆次回ご紹介します)のいずれかを利用することになります。越境する車の多くが「大利根橋」または「新大利根橋」に集中するため、橋に向かう道路は非常に混みます。
1.東京への道「国道6号」
「利根川橋」を通る国道6号。歴史の好きな方には「水戸街道」と言った方が分かりやすいかも知れません。江戸時代に徳川御三家の水戸藩が江戸に向かう際に使われた道で、「大利根橋」周辺にある取手や我孫子などは、古くは宿場町として栄えました。
▶参考資料:常陸河川国道事務所「国道6号」
現在の「大利根橋」(1974年完成)は、実は2代目。交通量の増加に伴い建て替えられたものです。初代「大利根橋」は戦前の1930年に作られています。
「取手市史 近現代史資料編Ⅱ」(取手市史編さん委員会,「取手市史 近現代史資料編Ⅱ」,1990,pp825-817)の記述によると当時、それまで渡船しかなかったところに橋ができたということで大勢集まり、花火が打ち上げられるわ、芸妓さんが練り歩くわ、「上町の電気応用ダンス」や「片町の裸ダンスレビュー」(一体どんなダンスなんでしょうか…)が登場するわで、どんちゃん騒ぎになったとか。
また戦時中には、茨城県の霞ケ浦海軍航空隊御用達の軍用道路として使われたようです。
現在の大利根橋の概要は次の通り。
形式:2径間連続箱桁2連・3径間連続箱桁4連、主径間:80m、橋長:1120m、総鋼重:3999t、鋼重:845t、床版形式:RC床版、発注者:関東地建、施工会社:IHI・横河橋梁製作所
▶ 参考資料
日本橋梁建設協会「橋梁年鑑データベース」(※別ウィンドウで開きます)
※検索結果では「第2次新大利根橋」の名称になっています
2.「大利根橋」の銘板(千葉側/茨城側)
以下が「大利根橋」の銘板です。
大利根橋
1974年3月
関東地方建設局
道示(1972)一等橋
製作:佐世保重工業株式会社
使用鋼材:SM50YB,SM50YA,SS41
続いて茨城県側の銘板。
千葉側は1974年でしたが、こちらは1972年です。
こちらは、同じ茨城側の横河橋梁製作所バージョンです。劣化が少し進んでいます。
大利根橋
1974年3月
関東地方建設局
鋼示(1964)一等橋
製作:株式会社横河橋梁製作所
使用鋼材:SMSB,SM50B,SM50A,SM41A,SMA41A,SS41
大利根橋
1974年3月
関東地方建設局
鋼示(1964)一等橋
製作:株式会社横河橋梁製作所
使用鋼材:SMSB,SM50B,SM50A,SM41A,SMA41A,SS41
▶ 参考資料
国立国会図書館リサーチナビ「道路橋技術基準の変遷 : 既設橋保全のための歴代技術基準ガイド」(※別ウィンドウで開きます)
3.塗料は日ペ&関ペ、塗装会社は内藤・鉄電・山田(千葉側)
「塗装記録表」も、千葉県側・茨城県側で若干異なります。
塗装年月日 1990年3月
塗料名
下塗 亜酸化鉛ヘルゴン 1回
JiS -K5623 赤さび色
中塗 合成樹脂調合ペイント2種 1回
JiS -K5516 P33-145 淡
上塗 合成樹脂調合ペイント2種 1回
JiS -K5516 P33-145
塗料会社名 日本ペイント株式会社
施工者 内藤塗装工業株式会社
塗装面積 2,164m2
手書きの味わいある塗装記録表。色が書かれてあるのが特徴です。錆止めなのに「赤さび色」というのが面白いです。
下のは、上の塗装記録表よりも年代は古いですが、シートタイプですので、最近貼り替えたのかも知れません。
塗装年月 1985年1月
塗料名 下塗 鉛系錆止ペイント JiS K-5625
中塗 フタル酸(超長油性)樹脂塗料
上塗 フタル酸(長油性)樹脂塗料
塗料会社名 日本ペイント株式会社
施工者 鉄電塗装株式会社
塗装面積 橋体 6235m2 高欄 2520m2
構造物が被ってうまく写真が撮れないものもありました。(山田塗装さん、うまく撮れなくてすみません…)
塗装年月日 1985年12月
工程・塗料種類・塗装回数
下塗 鉛系サビ止メペイント JiS K-5625 1(回)
中塗 合成樹脂調合ペイント JiS K-5516 1(回)
上塗 合成樹脂調合ペイント JiS K-5516 1(回)
塗料会社名 関西ペイント株式会社
施工者 山田塗装株式会社
塗装面積 橋体 m2
4.茨城側の歩道橋、塗料は大日本、塗装会社はプラチナ
茨城県(取手)側の塗装記録表は、橋桁では見つけられませんでしたが、歩道橋のところに一つありました。歩道橋は、やや明るめの赤で塗られています。
塗装年月日 2007年10月
塗装会社 下塗 中塗 上塗 プラチナ塗装工業株式会社
塗装材料
下塗 エポオールスマイル(弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料)
中塗 Vフロン100Hスマイル中塗(弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗)
上塗 Vフロン100Hスマイル上塗(弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用上塗)
塗料製造会社 下塗 中塗 上塗 大日本塗料株式会社
塗装材料は、商品名と一般名の両方が書かれています。比較的新しい塗料商品は、塗料メーカーのWebサイトに掲載されているので、どういう塗装仕様になっているかが分かります。
▶参考資料
大日本塗料「エポオールスマイル」説明書
(※PDFがダウンロードされます)
▶ 参考資料
大日本塗料「Vフロン#100Hスマイル中塗」説明書
(※PDFがダウンロードされます)
▶ 参考資料
大日本塗料「Vフロン#100Hスマイル上塗」説明書
(※PDFがダウンロードされます)
5.塗料・塗装で街を明るく!
茨城県(取手)側には、塗料を使った壁画もありました。
地元の少年作と思われる落書きもそこら中にありましたが、カラフルな塗料を使った壁画の方が、やはり気持ちが明るくなりますね!
6.アドベンチャーも楽しめる? 記録表の撮影
緑も映えるこの季節、撮影するのに少し困ったことがあります。一つは、草ボーボーのところに分け入らなくてはならないことです。
↓ こういうところに塗装記録表があったりします。
何がいるのか、何があるのか分からない草むらの中に足を突っ込むのはいささか勇気が要りますが、決死の思いで突き進みます!
この日は青い大将【ニョロちゃん】に出逢いました…。
草刈りをしてくださっている業者さんの名誉のために補足しますが、只今、全力で草刈り中ですので、次回訪れた時にはスッキリしていると思います!(※撮影当時)
困ったことだけでなく、うれしいこともあります。たまに私が大好きな「古いコンクリート」が落ちていることがあるのです!(※古いコンクリートは骨材やセメントの材質がとてもユニークで面白いです)
プライベートでは趣味でコンクリートの写真を撮っておりますので、塗装記録表を撮影しながらコンクリートも撮れるという、一石二鳥ならぬ、二橋一石を楽しんでおります。
↓この日の収穫
次回は「常磐自動車道 利根川橋」
次回は、 NEXCO東日本の「常磐自動車道 利根川橋」をご紹介します。
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