お店の「ウリ」は、なんじゃらほい/コピーライター、「お菓子屋さん」になる#3
ライターの炭田(すみだ)です。
シフォンケーキづくりにハマり、期間限定で「自分のお店」を開くことにしました。
このnoteは、開業までのあれやこれやを、ありのまま赤裸々にお見せするスタイル!
今回のテーマはお店のウリ、コンセプトについて。
どんなお店にしたいか、です。
実はもう先日(2023年4月27日、仏滅)トライアルで営業しちゃった私のお店のコンセプトは『(コピー)ライターが焼く、シフォンケーキのお店』でした。
職業とシフォンケーキ、関係なくない?!
そう思った方、大正解です。私もそう思います。これが「八百屋が焼くシフォンケーキ」や「製粉メーカー営業マンが焼くシフォンケーキ」なら、ありありのありだと思います。(書いてて思ったけど、めっちゃ食べたい)
で、なぜこんなコンセプトにしたかというと、母との会話がきっかけでした。
そこは「すごーい!流石は私の娘♡がんばってね♡」と言うところでは?身内って辛辣だよね……。が、ここで目が覚めたわけです。
政府統計(2021年)によると、「菓子・パン小売業」の登録事業者数は37,561軒。これは、事業者として登録をしているお店の数なので、私のようにシェアキッチンで活動しているお菓子屋さんは含まれません。毎週のようにマルシェでお菓子が売られ、シェアキッチンもどんどん増えていることを考えると、実際はこの3倍……10万以上のお店が存在しているのでは……?東京ドーム、2公演分の店舗数。乃木坂46の齋藤飛鳥ちゃんの卒コン動員数じゃん……。
はい、ここで。私の職業です。コピーライター。独立してからは、インタビューのお仕事が多いので「編集ライター」を名乗っていますが、十年以上コピーライターとして広告を作ってきました。自分がクライアントになる一世一代のチャンス!せっかくなので、広告の手法で自分のシフォンケーキを宣伝する方法を考えてみました。
どんなにいいものでも、知られないと買ってもらえないのだ。だから広告があるのだ。
と、広告の話をしても長くなるだけで面白くないので(笑)すっ飛ばします。私が考えたことはこちら。
詳しく説明します。
カヌレ、流行ってますよね。流行ってるから買う人も、そりゃ~います。でも大抵は一回買って「こんな味なのね~おいしいな~(納得)」でおしまいです。
でも、ここで「カヌレおいしい!スキかも!」と思った方は、週2回しか買えないレアカヌレだから買いたくなるし、インスタ映え映えの半熟カヌレだから並びたくなるし、逆にガリッガリに硬いカヌレだから気になっちゃうし、紹介制カヌレってどういうこと?と興味を持って手に取ります。
この「◎◎◎だから」、の部分が自分のお店なら何なのかを探すのです。レッツラドン!
しかし。いきなり探し始めても「私のシフォン、ふわふわでおいしー!」とどこかで聞いたことのある「◎◎◎」にしかなりません。まずは取っ掛かりとして、シフォンケーキは「どうのような言葉で表現されることが多いのか」調べるところからはじめます。他のお店のことを知らずして、自分の魅力はわかりません。いざ、競合調査。
***
まずは、Instagramで200以上のシフォンケーキ専門店、作り手をフォローして、シフォンケーキに対して何を語っているかを地道にメモっていきます。字が汚いのはご愛敬。
すると、大半が「ふわふわ」「しっとり」という”食感を表す言葉”で自分の味を表現していました。そこに「米粉」「ノンオイル」「ベーキングパウダー不使用」などの“特長”が加わります。
次に、この見立てが正しいのか、本でも調べます(情報源がInstagram一本なのは頼りないので、今回はより多くの人の「目」に触れる本で調べました)。
シフォンケーキに関するレシピ本を、本屋さんで購入、図書館でも借りて、合計14冊読みました。そのうち、以下の本が食感に対しての記述が多かったので、ご紹介します。
この本に掲載されているシフォンケーキのレシピは「ふわふわ」「しっとり」「もちもち」の三種類。ここに、ココアや抹茶などのフレーバーや、バナナやカボチャなどの固形物による「味変」が加わります。
ここまで調べて、シフォンケーキは「食感の方向性+使用素材やフレーバーの組み合わせ」で表現されることが多いと分かりました。
***
……ただ、シフォンケーキを作る私が言うのもなんですが「その差、お客さまが食べた時に分かるかな?」と。
誤解のないように説明すると、こちらの本はレシピ本としてすごく丁寧なつくりで、シフォンケーキが大好きで色々と作っている私のような者には「神本!」です。
それに、シフォンケーキを日常的に作ったり食べているような方なら、もちろん味の「差」は分かると思います。
でも、「こっちの店はもちもち、あっちのお店はしっとりだな」と比べながら食べるような方は、お客さまの数としてはそう多くないのでは?と。
カヌレは流行っているので食感の「差」もウリになりますが、私が作っているのはシフォンケーキ。せっかく味をアピールしても、伝わらない(埋もれてしまう)のは悲しい……。
***
そこで今度は視点を変えて、自分がお客さんとしてInstagramを見ていて「印象に残っている店」をピックアップしてみました。
下記が、200以上フォローした中で、私が印象に残ったお店です。
①砂漠でもたべれるシフォンケーキ nono kitchen
②ゆぅたんのほっぺた
③アスリートシフォン
④たまご屋さんのシフォンケーキ Sayuri's chiffon
①②は『水のない砂漠でも、まるで飲むように食べられる』『子供のほっぺたのようなもちもち食感』と、食べた時のイメージが沸きます。
③④は『お菓子なのにアスリート向け(低糖質)』『たまご屋さんが作っている(卵がおいしい)』と、他のお店にはない特長が分かります。
どのお店も食感や特長を表現しているけれど、一歩踏み込んだ表現です。
「他のお店との違いが、言語化されている」ので、差別化されて印象に残っていると判断しました。
***
はい。いよいよ自分のお店をどうするか、です。
この時はまだ営業前で、①②のお店のように自分が焼くシフォンケーキの魅力を自分で言語化できるほど、理解できていませんでした。
(ので、これはあとからじっくり考えよう!と思い、当日購入してくださった方にアンケートをお願いすることにしました。お渡ししたショップカードの裏にQRコードがあるので、是非お願いします。秋の営業時に「お好きなシフォン1カット」差し上げますので何卒)
③④の方向性ならば、ということで考えたのが『(コピー)ライターの焼く、シフォンケーキのお店』です。
悲しいかな、私のお菓子の腕はプロの職人さんには適いません。
もちろん味について諦めたわけではなく、今でも一生懸命追求しています。でも「お菓子に費やしてきた時間(知識や技術の習得)」の差は、そう簡単には埋まりません。シェアキッチンの運営をする中で、お菓子のプロに対するリスペクトがあるからこそ、尚更そう思います。
シフォンケーキを作りはじめて日が浅い私が、他のお店と明らかに違うところは、自分の「職業」だろうと。シフォンケーキだけど、言葉を使いながら勝負しようと決めました。
noteで開業日記も発信することにしたので、そのアピールにもなるかな、と。
***
味と職業がビタイチ関係ないのは自分でもわかっているのですが、「なんだそりゃ?」という掛け合わせの面白さはある。
ただそれだけだと、見た人が「?」となり過ぎることが想像できたので、ポスターやオリジナル提灯でフォローしました。
営業日当日、私の肩書きに反応して「なんでライターさんがお菓子を作ってるの?」とお声掛けいただいたり、ポスターや提灯の写真を撮ってくれるお客さまも多くいたので、効果はあったと思います。
特に提灯は、これを手に持って「私が炭田です。普段はライターで、趣味が高じて今日はお菓子屋さんをしています」と説明すると、初対面の方にも通じやすくて便利でした。
肝心の商品が売り切れてしまった後も、来てくれた知人友人が提灯の写真を撮って拡散してくれたので、その点もよかったです。
そして、なんといっても「検索性の高さ」です。
私が「ふわふわ」でアピールしても、数多の専門店に埋もれて絶対に見つけてもらえません。でもお客さまに「確かコピーライターの人がやってたシフォンケーキ屋さんだったよな」と思ってもらえれば、しめたもんです。
Googleで「コピーライター シフォンケーキ」で検索すれば、私に辿り着けます。
「ライター」とも悩みましたが、火をつけるライターと混同する可能性があること、「コピーライター」の方が「なんか文章を書いてる人」というイメージを持ってもらいやすいと思い、決めました。(これを「糸井重里大明神パワー」と呼ぶ)
ちなみに、広告とインタビューの仕事が半々くらいなので、コピーを( )でくくっています。これも、ライターの友人に「炭ちゃんって、広告もできるんだね~」と知ってもらえたので、よかったです。
***
ここまで読んで「ライターだから成り立つんでしょ」と思うかもしれません。でももし『消防士が淹れる、ハーブティーのお店』があったら、私は飲んでみたいです。(消防士の方は、副業が可能なのだろうか?)
なんなら『蠍座の女のキャロットケーキ』でもいいし『AB型によるマカロン』でも『ねぼすけが作るキャラメルクッキー』でもいいと思います。最後のお店は、夕方からオープンしたら面白そう。
味で勝負したい方は、たとえば「ふわふわ」をなにか別のものに例えてみたり、難易度の高い「チョコレートシフォン」の専門店にしたり、味はぜんぶプレーンだけど小麦粉のブランドだけを変えた「粉で選べるシフォンのお店」でも良いかもしれません。やり方はいくらでもあります。悩んだら、炭田に相談してくれてもいいんですよ。(突然のPR)
***
こんな感じで、他のお店のことを調べて▶︎その中から「違い」を見つけて▶︎それを「言葉」にして▶︎コンセプトを作っていきました。
私は、期間限定でお店をオープンするので、お客さまの「目」に触れる機会がそもそも少ないです。「ご近所に新しく出来たお店、そのうち行ってみようかな~(おいしかったらまた買おう)」と思ってもらえる可能性は、限りなくゼロ。なので、インターネットの向こう側の人にもアプローチして「面白いから行ってみよう」と足を運んでもらうために、引っ掛かりのあるコンセプトに決めました。
地域に根差したお店(実店舗があり、いつでも買える)をオープンする場合は「地域名+シフォン」にしたり、自分の思い入れのあるネーミングにしてもいいと思います。もちろん、シフォンケーキ最大の魅力である「食感」をウリにしても。
ただ一つ、コピーライターとして伝えたいのはお店のウリとなる「コンセプト」をしっかり決める、それだけでお客さまに覚えてもらえる可能性はグッと上がるということ。
また、言葉にしておくことで、お店づくりに悩んだ時に、軸をブラさずに意思決定していくことが可能です。
調べるのはめんどくさく思うかもしれませんが、実際に作っている自分はその商品について詳しいはずです。なので、意外と簡単にできちゃいます。悩んだら、炭田に相談してくれてもいいんですよ。(再びのPR)
***
以上が、私のお店のウリ、「コンセプト」の作り方でした。
ちいさなお店を開きたい方の参考になれば、嬉しいです。
おいしいお店が、世の中にたくさん増えますように。