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人は看取りから何を学ぶのか

わたしも50歳。
いくつかの別れを経験してきました。
・伯父
・祖母
・愛犬
・いとこ
・愛猫

亡くなった順番で書くとこうなります。
どの別れにも、後悔があります。
いまも、その後悔はずっと心に重くのしかかります。
でも、思います。
人はきっと、その後悔を重ねて、少しづつ死と向き合っていけるようになるのかもしれない、と。

伯父が倒れたとの知らせがあったのは、誕生日プレゼントを送ろうと用意をしている最中でした。伯父はそのまま目を覚まさず、プレゼントを渡す機会は失われてしまいました。
それ以降わたしは、「贈りたい」ものは機会を待たず、「贈りたい時に贈る」を常としています。
誕生日や記念日に何かを貰うのは嬉しいものです。しかし、その機会を待つことにリスクがあるというのも、知っておく方がいいと思うのです。

伯父の教訓を経て、こまめに連絡をとり、贈りたい物はすぐに贈るを実行していた私。だからこそ祖母には、ふいに贈りたくなったお菓子、手作りの帽子、思いつくままに様々な贈り物をしていて、後悔のないようにしていました。でも、祖母入院の知らせが届いた時、またもや後悔するのです。
それは、息子の書いた祖母に関係する作品が受賞間近であるのを、まだ伝えていなかったから。「受賞するかも」ではなく「受賞したよ」と伝えたく、伏せていたのです。
祖母はそこから意識を回復することなく、数年闘病の後に亡くなってしまいました。息子の作品は受賞の運びとなったものの、祖母に伝え、喜ぶ顔を見ることは叶わぬままになったのです。

そして愛犬、もか。
もかは14歳で亡くなりました。いわゆる老衰です。食が細り、病院へ連れていくも、病ではないのでどうすることもできないと言われ、できるだけ食べられそうなものを探し、あとは最期の時を待つしかありませんでした。
その最期の時が、今でも悔やまれてなりません。
もかが亡くなる日、仕事に追われ、深夜まで仕事をしていたわたし。日が変わり、さすがに寝ようとベッドへ。その時もかは、寝ている様子。起こさないよう静かにベッドにもぐりこみました。
それからどのくらい経ったでしょう。「きゅん」という鳴き声が聞こえたのです。「起きなくちゃ。もかが呼んでいる」と思いながらも、連日の徹夜で疲れていた私は起きることができず、そのまま寝入ってしまい、朝を迎えました。でも朝には、もかは亡くなっていたのです。
呼んでいたのに。側に居て欲しかっただろうに。どうしてあの時……と、悔やんでも悔やみきれず、わたしはそこから、長いペットロスに苦しむことになりました。

ペットロスに苦しむわたしに優しい言葉をかけてくれたのは、いとこでした。ひとりっ子のわたしにとって姉のようであり、親友のようであり。とても大切な存在だったいとこ。彼女が、悔やむわたしの話を聞いてくれ、苦しみに寄り添ってくれました。
そんな、大切ないとこから久しぶりに受けた電話は、終末期のガンであり、余命宣告をされたとの知らせ。一時は持ち直すも、どんどん弱っていく姿を目の当たりにし、信じられないという気持ちがいとも簡単に打ち砕かれます。信じざるを得ず、その宣告が現実なのだと思い知らされ、受け入れるほかありませんでした。
いとこはかねがね、「子育てが落ち着いたらゆっくり会って話そう。話したいことがたくさんあるんだ」と言っていました。「そうだね、いつかね」と答えるわたし。でも、その日が来る前に亡くなってしまい、その機会はもう訪れることがありません。
沖縄に住むいとことは頻繁に会える距離ではなかったけれど、それでももっと会えなかったか。話す機会を作れなかったのか。そんな後悔が残ります。

そして、愛猫らて。
もかをひとりで逝かせてしまった後悔をしたくなくて、らてが病気になった後は常に側にいました。寝る時もベッドではなく、ずっと側に付きっきり。物音がすると起きて付いていき、寄り添いました。その思いが通じたのか、らては、わたしが見守る中で最期の時を迎えました。見送るのは辛くて、今でも思い出すと涙が止まらないけれど、でも、ちゃんと側で看取ることができたのは良かったと感じています。
でも、やっぱり後悔はあるのです。
らてのためにと頑張った病院通い。投薬。治療。
これは、本当にらてのためだったんだろうか。もしかすると、苦しめただけではなかったのか。本当は何もせず、楽なまま逝きたかったのではないか。
そればかりか、日々のお世話、フード、過ごし方……すべてに後悔してしまいます。

結局のところ人は、後悔から離れることはできないのかもしれません。
それでも、いくつかの別れを経験し、自分との向き合い方や、人との接し方が上手になっている、そんな気がします。
そしていつか、自分の心を守る術を身につけていきたい。
看取りから学ぶのは、きっとそういうことなのだと私は思っています。

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