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【REPORT】オンラインシンポジウム「男の子と男性のDV・性暴力被害を考える」を開催しました | ホワイトリボンキャンペーン・ジャパン

性被害が単純化されないために

2023年10月6日(金)、オンラインシンポジウム「男の子と男性のDV・性暴力被害を考える」を開催しました。

近年、男性のDV被害が顕在化している状況がみられたり、大手芸能事務所に所属していた男性たちが性暴力を告発したりするなど、男の子・男性へのDV・性暴力被害に注目が集まっています。

私たちWRCJでは、女性に対するDVや性暴力の深刻さを訴えるとともに、男性も被害に遭っているのにそのことが女性以上に見えなくさせられていることを繰り返し強調してきました。

そして、性別を問わず決して他人事ではないDV・性暴力をなくしていくために、男性たちに主体的なアクションを起こすことを呼びかけてきました。

一方で、性別に関わりなく誰でも被害に遭うという側面だけが単純化されて世間に広がることで、DV・性暴力とジェンダーとの関係の理解が不十分なまま、依然として深刻な被害者の大半を女性が占めている事実やその背景が見失われ、女性被害者への支援が後退してしまうことが心配されます。

男の子・男性のDV・性暴力被害の問題への関心が、あらゆるタイプの暴力被害の防止・解決に結びつくためには、性別や加害・被害において、共通または固有に見られる特徴や背景を横断的に理解した上であらゆる被害者支援の有機的な連携を図っていく必要があると考えます。こうした問題意識に基づき、今回のオンラインシンポジウムを企画・開催しました。

男性・女性、被害・加害、双方の特徴とは

最初に、WRCJ運営委員の角朋之から男性のDV被害の傾向や背景、支援の課題などについて解説。特に男性被害者の支援においては、ジェンダーに関するマクロとミクロの両面からの視点が重要であることなどを述べました。

続いて、一般社団法人しまね性暴力被害者支援センターさひめ理事で島根大学副学長(ダイバーシティ推進担当)の河野美江さんから、男性の性暴力被害の特徴のほか、医師を対象とした性暴力被害者支援に関する調査結果について報告していただきました。

そこでは社会全体で、男性を含むすべての性暴力被害者に対する支援の重要性を訴えていくことが重要であることなどが強調されました。

最後に、「一般社団法人日本男性相談フォーラム」代表理事の福島充人さんから、DV・性暴力における男性の加害者・被害者両方のさまざまな事例に接してこられた経験を踏まえ、男性の相談者やその相談内容の傾向についての解説。

男性からの相談を受ける上で、当事者性とジェンダーセンシティビティが大切であることなどが語られました。

男性被害の理解を広めることの必要性を実感

男性は被害意識がないことが多いことや、「男らしさ」の縛りによって自他に悪影響を与えているといった話は、男性特有の特徴でありながらも、その背景には社会全体の構造的問題が関わっていることを改めて認識しました。

また、医師において男性の性暴力被害の学習機会が乏しいことや、専門によって支援機関の認知度にばらつきがあることを知って、被害者支援に携わる専門職へもさらなる理解促進が必要であると実感しました。

このため、今回のようなイベントを通じて、男性被害の実態やその背景への正しい理解を広めていくことが、男性被害者の顕在化や相談支援体制の充実、ひいてはジェンダーに基づく暴力の防止につながっていくのではないかと感じました。

関心の高さを知るきっかけに

WRCJ共同代表の伊藤公雄がコーディネイターを務め、登壇者とのディスカッションに加えてたくさんのご質問・ご意見をお寄せいただき、充実した90分となりました。

今回のイベントは、これまで以上に多くの方にご参加いただき、このテーマに関する関心の高さをうかがい知ることができました。ご参加いただきありがとうございました。

また、ご参加いただいた方からは、今回のイベントについて、おおむね満足したとの評価をいただきましたが、一方で、ご要望やご意見もいただきました。今後とも、ご意見を踏まえて、充実したイベントの開催を検討してまいります。

WRCJ事務局・角朋之

会員限定特典としてアーカイブを公開

当シンポジウムのアーカイブは、WRCJ会員限定の特典として公開する予定です。会員登録をお考えの方は下記のリンクをご覧ください。

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