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オケってなんだ?

音楽と出会ってから今日に至るまで、このテーマとは距離があったように感じています。何より目の前の譜面が大切で、目の前の本番が大切で、「終わってから考えよう」の連続だった気がします。恥ずかしながら。

ここまでの人生を振り返れば、僕は楽団に育てられ、泣かされ、救われ、生かされてきました。そんな人間が「終わってから考えよう」の連続で9年も続けているのは、なんだか情けない。虚しい。

実際、惰性だけの飛行機はいつか墜落します。いつか来る破滅に備えるのではなく、揚力を得るために。音楽人生を飛び続けるために。今日は積年の課題と、とことん向き合うことにしました。


一奏者としての自分は、ほんのちっぽけな存在です。そして、一人より二人の方が、二人より三人の方が大きな力を引き出せるものです。どこかの偉い人も「音楽は掛け算だ」と言っていました。

僕が「楽器をやっていて良かった」と思う瞬間は、純正律で音が合ったときです。互いの音をよく観察し、呼吸を合わせ、自分の音を溶かす作業は、何にも勝る快感をもたらしてくれます。言葉のない環境だからこそ、死ぬほど難しい。だからこそ喜びも大きい。

オーケストラには色々な人がいます。チェロを弾く人、コントラバスを弾く人、ヴァイオリンを弾く人、ティンパニを叩く人・・・(全部はご勘弁を)

スコアを見れば声部から声部へとバトンは渡り、譜面に書かれた全ての要素が噛みあっていることが分かります。誰かが欠ければ当然空白が生まれ、配慮がなければ凸凹に。そこには、一部品としての義務と責任が存在します。我々は精密な機械時計のように、なめらかに時を進めていかねばなりません。  

あたりまえですが、オーケストラは人間のものです。犬猫にはできません。

けなし、けしかけ、笑い、飯に誘い、言葉にし、目をそらし、ツイートし。ぶつかるから腹も立つ。角も立つ。でも誕プレは嬉しい。

わざわざ(早稲フィルという接点がなければ東京のどこかですれ違うだけだったであろう)他人と演奏を整理し、パーツを仕上げ、立体的に。1ミリも知らなかった人間に近づき、遠ざかり、相手に確かな像を結んでゆく。

パート練習やTuttiを重ねるたびに、平面の情報に過ぎなかった譜面は空気へと、風景へと変化していきます。その変化にワクワクしつつも、人間はこうしてまとまってきたんだなあ、と感慨に浸るのです。

オーケストラは宇宙。

ミクロには好き勝手に揺らいでいるように見えて、マクロにはダイナミック。銀河のような巨大な何かを生み出す営み。そして銀河そのものになる感動。生まれては消え、作られては壊され、また作り直される無常。それが音楽。それがオーケストラ。

より大きなものの一部として、それを構成する要素として、世界に、すべてに思いを馳せるのはとても不思議な体験です。そして、ありとあらゆるものは些末な問題なんだと教えられます。僕を取り巻く不幸や悲劇、権威はもはや意味を持ちません。ここでは全てが正解で、全てが不正解。

オーケストラという宇宙の観測者として、トロンボーンという望遠鏡を片手に、そのレンズを曇らせないように、その光を見逃さないように。

宇宙は続くよ、どこまでも。

#トロンボーン #チューバ #クラシック #オーケストラ #宇宙 #universe #音楽は宇宙だ



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