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設計士のピアフ(1)

                     立川 生桃

女王蜂が3匹のミツバチを招集された。ミツバチの名はそれぞれ、設計士のピアフ(オス)。兵士のイロニー(メス)。飛行士のマリア(メス)。この3匹のミツバチが王国に対し多大な功績を果たした。

女王蜂は王国の名のもと、この3匹を表彰しようというのである。褒賞品は家来蜂500匹と蜂蜜一生分の授与権利であった。

3匹は女王蜂の前に鎮座した。近衛(このえ)蜂が女王蜂の両側に並ぶ。女王蜂に次ぐ地位の第一近衛蜂が表彰分を読み上げる。


   表彰状【平和賞】
                   設計士のピアフ  殿

 貴殿の設計した「六角形の蜂の巣構造(ハニカム構造)」は我が国に多大なる貢献をなした。よってここにその栄誉を表彰する。

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   表彰状【防衛賞】
                   兵士のイロニー  殿

 貴女のスズメバチ撃退法「蜂球戦術」は我が王国に多大なる貢献をなした。よってここにその栄誉を表彰する。


   表彰状【経済賞】
                   飛行士のマリア  殿

 貴女の蜜発見時の情報伝達法「8の字ダンス」は我が王国に多大な貢献をなした。よってここにその栄誉を表彰する。

表彰式が終えると、女王蜂は眼下に鎮座した3匹のミツバチ達に仰せられた。

「あなた達に同じ質問を3ついたします。」


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最初に設計士のピアフ。


「おまえはオス蜂でありながら(蜜蜂社会はメス蜂優位社会)すばらしい大発明をされました。今のこの蜂の巣の構造がなければ王国の繁栄はなかったことでしょう。おまえは王国で最も賢い蜂と呼ばれているらしいですが、どのようにしてこの六角形の構造を発見されたのですか? 説明して下さいませんか。わたしに分かる如く。彼(ピアフ)以下は『発明、発見の理由とする』。」

設計士のピアフはドキン! とした。王国には暗黙のルールがあった。女王蜂の声はさも優しいが自分の回答に女王蜂が首を傾げれば、その場にて即処刑という不文律であった。

ピアフも思った。(まったくもって。まさか表彰式の場で自分の言葉に生死を賭けるなどとは考えてもみなかった。)……言葉が出ない。

「ピアフ! お前に女王様は尋ねておられる。光栄なことぞ。お答えせよ。」

せっつく。

何でも最初が一番大変なのだ。考えてもみよ。いくら腹が減っていようとも最初にタコ、ナマコを口にした者の勇気を。

「早くお答えせぬかっ!」

英語を解せぬ者に英語で説明してどうして頷いてもらえよう。どれほど立派な説明をしようとも相手にはチンプンカンである。

隣をチラリ見ると、兵士のイロニーも飛行士のマリアも臆病に震えて見えた。次は自分か隣のどちらかだからである。そしてその次がもしあれば、それは必ず自分だからである。

ピアフは答えた。

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「はいっ。女王様。発想や論理より動機が大切なのです。ぼくはイロニーが『蜂球戦術』を、マリアが『8の字ダンス』を王国の為に研究しているのを知っていました。そして、ぼくはイロニーとマリアはそれぞれの研究を成就させることを信じていました……」

女王蜂は頷いた。

「さすれば、必然王国の蜂蜜の数は膨大に増えることになります。王国を守る為に王国の建物である蜂の巣は今まで以上に頑丈で安全なものにする必要があったのです。『六角形の蜂の巣』は、だから出来上がったのです。」

女王蜂は頷いた。続いて、兵士のイロニーは言った。

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「わたしは、マリアが『8の字ダンス』を、ピアフが『六角形の蜂の巣』を、王国の為に研究していることを知っていました。そしてわたしはイロニーとマリアが研究を成功させることを信じていました。」

女王蜂が頷いた。

「さすれば、当然王国のミツバチの数は膨大に増え、わたし達の天敵であるスズメバチは今まで以上に脅威になります。王国を守る為にスズメバチを撃退する必要があったのです。『蜂球戦術』は、だから出来上がりました。」

女王蜂が頷いた。

飛行士のマリアは言った。

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「あたしはピアフが『六角形の蜂の巣』をイロニーが『蜂球戦術』を王国の為研究をしているのを知っていました。さすれば当然王国のミツバチの数は膨大に増え食糧である蜜の量も今まで以上に大量でないと生きてはいけません。王国を守る為に皆で蜜のありかを早く伝える方法が必要だったのです。『8の字ダンス』はだから出来上がったのです。」

女王蜂は頷きもせず、首を傾げもせず仰った。

「では。2つ目の質問です。」

                        (つづく)

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