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最後の007はあなたと2人で 【ボンドに学ぶ“いい男”】


家から歩いて行ける距離に映画館がある。
私はあるなんでもない水曜の夜、チケットを2枚買って彼を映画に誘った。

映画のタイトルは「007 / No Time To Die」
ダニエル・クレイグ演じる最後の007シリーズである。(と聞いている)

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実は私は2回目の鑑賞。
1度目は007ファンのお客様と、もう少し早いタイミングで、(無駄に高い)超プレミアシートみたいなので鑑賞していた。
これが特別な映画になると知っていたので、どうしても彼とスクリーンで観ておきたかったというわけだ。


水曜の夜、私は彼と自宅で簡単な夕食を済ませ、ROKITHOの黒いジャージー素材のロングドレスにジミーチュウの黒いブーツ、サンローランの黒いショルダーバッグといういでたちで出かけた。
(映画を観た人はその理由をお分かりだろう)

彼は人ごみやお出かけがあまり好きではないタイプなので、外に連れ出すのは至難の業だ。おまけに高価なプロジェクターを買って自作のホームシアターまで作ってしまい、映画館なんて滅多に行かなくなってしまった。
でも私は、(繰り返すが)どうしても彼とスクリーンでこの映画を見ておきたくて、彼がこのお誘いに乗ってくれるよう2週間かけて準備をしていたのである。

まずは動画配信サービスで「007」シリーズの最高傑作とも言われる「スカイフォール」を観せて興味を引き、その後「スペクター」も観た。
この2作を観てしまったら、男の子だってダニエル・クレイグ演じるボンドに惚れずにはいられない。
ダメおしでさらに「カジノ・ロワイヤル」と「慰めの報酬」も観て、
クレイグ・ボンドの前4作を全て観てから、今回の最新作「No Time To Die」に臨んだというわけだ。

案の定彼はノーとは言わなかった。
そんなわけで、素敵な夜の映画デートは大成功を収めた。


ネタバレは本意ではないのでここでは007の結末や物語の筋はなるべくぼかしたいけれど、
今回、彼とこの映画を観たいがためにダニエル・クレイグ版007シリーズを全部て、とても感慨深いものがあったのでnoteを書きたくなった。


***


ダニエル・クレイグがボンドを初めて演じたのは2006年の「カジノ・ロワイヤル」。当時すでに30代後半だった。

それまで黒髪長身だった歴代ジェームズ・ボンド俳優のイメージを覆すようなこの人選は、世界中の007ファンの凄まじい拒否反応を引き起こしたそうだ。背が低いだの耳がでかいだの、それはもう小学生のいじめのように。ダニエル・クレイグはものすごいプレッシャーの下この役を演じることになった。

だからなのか、カジノ・ロワイヤルではこの頃の「見てろよこのやろう」「やってやるぞ」みたいな彼の気負いが見て取れるのがすごく面白い。
その目はどこか挑発的で、「文句があるなら言ってみろ」という感じだ。

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↑これはこの後恋に落ちる彼女、ヴェスパーちゃんとの初めての食事のシーン。向かう所敵なし、大胆不敵な笑みが眩しい。

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