「人を活かす経営」ブックレビュー

言わずと知れたパナソニックの創始者松下幸之助氏の経営指南書。と言うよりも松下氏が経営の場面場面において何を判断基準としていたかが語られている。世界的大企業になるまでの過程は愚直なまでに泥臭い。自身の正しいと思ったことはとことん貫き通す。それは社内だけではなく、自分の取引先や銀行にも。一つネタバレをすると、松下電器が銀行から融資を受けるとき、普通ならば通らない金額が松下電気の信用ということで銀行から借りられるようになったのだが、それには条件が課せられた。その条件は世間的にも当然で、松下氏も当然と考えたが、「信用」という言葉が引っ掛かったようで、「自分を信用してくれるならば条件など課さないはずだ。」と結局銀行側の無条件融資を取り付けてしまう。完全システム化した現在であれば通らないかもしれないが、その時代は古き良き日本。義理と人情の世界である。

現代のような世の中に変わってもやはり松下氏は成功したであろう。なぜなら自分の信念と人を大切にする人だったからである。自分の信念というのは強すぎると融通が効かないただの頑固おやじということになるが、小学校を出てすぐに丁稚奉公で親元を離れた松下氏は常に自分は他者より知識がないと自覚し、周りのアドバイスを求める人だったようである。現代では協働力と呼ばれるが、それを社長自ら身につけているというところが松下電器の底の深さなのかもしれない。同じく信念の人である出光興産の創業者、出光佐々も同様に「社員は家族。」と言ってリストラはどのような経営状態でも行わなかった。テクノロジーは変わっていくが、その根本である人は変わらないということの現れであろう。


世界を旅するTraveler。でも、一番好きなのは日本、でも住みたいのはアメリカ・ユタ州。世界は広い、というよりも丸いを伝えたいと思っている。スナップシューターで物書き、そうありたい。趣味は早起き、仕事、読書。現在、学校教員・(NGO)DREAM STEPs顧問の2足の草鞋。