PBL型授業の有効性
私が密かに続けている活動の一つに研究がある。私が手がける授業「国際協力プロジェクト」は多くの外部の力を借りて運営されている。外部の力を借りるということは当然お金がかかるわけで、その一部に研究助成金を当てている。
国際協力プロジェクトとは生徒自身で開発途上国の問題を発見し解決を試みる授業だ。詳細については文部科学省のHPに掲載されているので興味ある人は授業者の私が語る以上にうまくまとめられているのでそちらを見ていただきたい。
2020年度は日本私学教育研究所の委託研究指定を受けていた。今回の研究テーマは「PBL授業での言葉かけの重要性」である。PBLとはプロジェクト・ベースト・ラーニングの略で、実践的な課題をテーマに学習を進める授業形態である。諸外国ではいわゆるチョークアンドトークという全員が教師の話しをただ聞くという授業から脱却し、実践的な課題を通じて教科を学ばせる手法が幅広く取り入れられているという。
さて、なぜ「言葉かけ」の重要性を研究テーマにしたかというと、開発途上国の問題という答えのない問いへ立ち向かうという大きな関門に生徒が挫折する場面を数多く見てきたのだが、その時に自分が発した言葉によりその関門を乗り越える生徒が散見されたからである。
考えてみると当然なのだが、生徒はクラス唯一の存在である教師と関係を保ちたいと思っている。そのニーズに答えられるかどうかで生徒一人一人の授業の学びの深度が変わるといっても過言ではない。「自学自習」はもちろん大切だが、そこまで辿り着くためには学びのためのマインドセットを整える必要があるのだ。
グループ学習で多く見られるのは「先生の休憩時間」である。グループ学習時間が始まると机間巡視そこそこに教師は自分の作業を始めてしまう。「何かあったら質問してね。」だ。そうではなく教師自ら生徒たちに質問しにいくことが大事だ。なぜならPBLでは生徒たち自身も何に自分がつまづいているのかよく分かっていないので、教師が質問し言語化させることで自分らのつまづきに気づかせることが必要だ。
他の授業はわからないが、私のこのような授業だと課題に対する取り組みを諦める生徒も多い。10代の生徒たちにとって主要教科以外の授業が自分の人生にどれぐらい大きな利をもたらすのか理解できないのは当然だ。そういう生徒は放っておきたいところだが、「考えを変えるきっかけ」を与えることも教師の重要な役割だと思っている。だから私はそのような生徒には頻繁に話しかけるようにしている。もちろんすぐに考えを変えることは無いし、最後まで考えを変えない生徒もいる。しかし「何が重要でこの授業を行なっているのか。」を伝え続けることで、少しでもその子の将来の何かに貢献できればと思っている。
PBL授業は生徒と教師の成長の場であり、お互いの考えをぶつけ合う戦いの場でもある。だからこそ、毎回授業が終わったあと本当に疲れる。。やめてしまいたいと思うことも多々ある。でも、生徒からの「この授業があったからこそ。。」という言葉、そして支援してくれる内外部の多くの先生や識者に支えられて今日もまた教壇に立っている。
世界を旅するTraveler。でも、一番好きなのは日本、でも住みたいのはアメリカ・ユタ州。世界は広い、というよりも丸いを伝えたいと思っている。スナップシューターで物書き、そうありたい。趣味は早起き、仕事、読書。現在、学校教員・(NGO)DREAM STEPs顧問の2足の草鞋。