【Q】父親はそれでも息子を探し続ける。
2003年、イラク戦争。
雨のような砲弾が住宅街に降り注ぐ。
ハジャール・アブドゥル・ジャバール氏は15歳の息子を失った。
ハジャール氏のそばで
涙を流しながら瓦礫をどかす家族11人を失った青年。
唖然と立ち尽くす18人の親戚を失った男性。
妻と3人の子供を失い、唯一生き残った我が子を抱きかかえる父親。
ハジャール氏は
「私たちには家も、お金も、慰めも、希望も、なにも残っていない・・・」
瓦礫を見つめながらそう呟く。
砲撃中、瓦礫に埋もれた家族を残し、避難させようとするイラク民間防衛隊。
防衛隊は「後で必ず助けに来るから今は逃げるんだ」そう言い、彼や住民たちを避難させる。
砲撃が止み、防衛隊員に息子の遺体を回収するよう懇願するハジャール氏
防衛隊員「何百人もの人たちが助けを求めてる、今あなただけを優先することはできない」
ハジャール氏は一人破壊された自宅に戻り瓦礫をどかす。手から血が出ようが、爪が破れようが。
やがて夜が来、民間防衛隊が運営する避難テントに戻り、負傷した妻に「ダメだった。」彼はそう告げる。
避難テントから、自宅までの移動方法はタクシーしかない、タクシーの運賃を稼ぐため何時間も彼は労働する。
未だ見つからぬ息子を探すため。
「私は破壊された自宅へ戻り瓦礫をどかして息子を探す。夜が来ると避難テントへ帰り、翌朝は働き仕事が終われば、息子を探しに自宅へ戻る。」
「でも息子は見つからない。」「私一人では瓦礫の下の息子を探してあげれない」「すべては戦争のせいだ。」
悲痛の叫びを彼は上げる。
翌日、仕事が終わり自宅へ帰ろうとすると民間防衛隊員に止められた。
「あの場所は危険すぎる。だから封鎖した。すまないが戻させない。」
「息子さんのために神に祈り、神に頼ろう。我々も共に祈る」
隊員は彼にそう述べる。
「私は息子をまだ見つけてあげることができない。」
空を見つめながら呟くハジャール氏
結果は過程を肯定しない。
過程が全てをぶち壊す。
米国が空爆をし、イラクを支配しても
ハジャール氏の息子は帰ってこない。
青年の11人の家族も帰ってこない。
男性の18人の親戚も帰ってこない。
父親の妻と子供3人も帰ってこない。