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社員食堂にて #ワールドブルー物語

清掃員姿の男が社員食堂から出て行った。
こちらのことを見ていたが、目が合った途端に立ち去って行った。先日、「喫茶 花」で臨時のアルバイトをしていたときに来店した二人連れの客の片方だ。
あの時は元マッシュルームの社員の疲れ果てた男を問い詰めていた。

「私は一度マッシュルームに勤めたことがありますが、“The Thing”などは全く知りません。」

疲労困憊していた様子の男は言った後に盗聴器に気がついた。
無線でデータは飛ばすので盗聴器自体にデータは残らないけれど、アルバイトの休憩で賄いを食べながら小花さんと波さんと話しているときに、一応器械は回収しておいた。
他の場所にも盗聴器はあるから問題ない。
きな臭い情報は喫茶 花よりもワールドブルー社内の方がゴロゴロしている。

ワールド・ブルー株式会社。
言わずと知れた大手企業。
その内情は色々な思惑と陰謀が蠢いている。
喫茶 花を利用する社員が多いため店には盗聴器をこっそり仕掛けさせてもらっているが、気がつかれたのは初めてだ。
あの元マシュルームの社員も要チェックかもしれない。

あと、あの清掃員はどこから派遣されてきたのか調べてみた方が良いか。
一応、バッティングしていないかを雇い主とお頭に確認してみよう。

テーブルの上には数枚のお皿が載っている。
「美味しかったかな?」
姿は見えないけど複数の気配が喜んでいるように感じた。

「すぬたさん、ご馳走様でした」
空いたお皿を下げ台に運びながら、いつもサービスをしてくれているすぬたさんに声をかける。
今日は新たなオムライスの意見を求められ、一口大にされた複数のライスとソースの組合せの味比べを頼まれたのだ。
その実、すぬたさんも目に見えない彼らの存在に気がついているのだと思う。
彼らのために用意された味比べなのだと思う。

「いつも、ありがとうね。どれが気に入ったかい?」
いつも通りニコニコしながらも隙がないすぬたさん。
「どれも美味しかったですよ。ビーフシチューとチキン入りバターライスはしっかり食べたいときに良いかもしれないですね。ビーフシチューなのにチキンが出てくるなんて面白いです」
「お肉が好きな子たちに喜んでもらおうと思ってねえ。がっつり食べてスタミナつけてもらいたいからねえ」
社員食堂のメニューを増やせば、それだけ作る側は大変になるのに、妥協しない姿にプロの魂を感じる。

「ところで、すぬたさん。先ほど出ていった清掃スタッフをご存知ですか?」
隙がなく、情報通であるすぬたさんに聞いてみる。
「ああ、最近来るようになった清掃員の子かい?あの子がどうかしたのかな?」
「いえ、私のテーブルを見て驚いていたようだったので、大食いなんだと勘違いされたかなって」
「おやおや、年頃の女の子にそんな勘違いを。それは悪いことをしたねえ。お詫びに今度の食事の時にはミニデザートをオマケするよ」
ポケットの中から「デザート無料」と書かれたチケットを出すと、手渡してくるすぬたさんにお礼を言って社員食堂を後にした。

清掃員や厨房のスタッフ、警備員や派遣社員などは潜入捜査をするのにうってつけだ。
何を考えているのかわからない人間たちが、この会社にはたくさんいる。
時を遡って潜入している人物たちまでいるのだ。
何があっても不思議はない。

……まあ、自分だって使命があってここにいるわけだけれども。

こんにちは。
金、土、日、月、とちょっと予定が詰まっているので、今日は消費エネルギーを極力控えてのんびり省エネの羽根宮です。
昨日と今日はエアコンを入れずに過ごすことが出来ました。
出来るだけ長く秋が続くことを祈っています。


今回はワールドブルー物語です。
Seiさんと小花🌸さんがアサシンと絡んでくれました。

小花🌸さんと波さんとの女子会も書きたかったので、いつか触れたいと思います。
あと秋になってきたので、勝手に喫茶 花の秋メニューを増やすかもしれません。
飯テロ要員ですからね。
いちじく、栗、梨、巨峰、リンゴ。
あ、タルトタタン食べたいなあ。



【その他関連記事】

小人と仲良くなっていったら、色々協力してくれたりしないかな。
どこにも行ける姿の見えない諜報員。チート。

食堂のすぬ婆ことすぬたさん



ワールドブルー物語のマガジンはこちら。

有能妃書のゆにさんによるサイトマップ。

マイトンさんのまとめ。

羽根宮のワールドブルー物語。



読んで下さってありがとうございます。
仙人か魔法使いになって、人里離れた場所でひっそり暮らしたい願望がある羽根宮でした。

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羽根宮糸夜
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