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【九州展レポート】「最澄と天台宗のすべて」

昨年秋、上野・東京国立博物館にて盛況のうちに幕を閉じた特別展「最澄と天台宗のすべて」。天台宗の宗祖、伝教大師・最澄(766?~822)の没後1200年を記念しての企画で、東京展のレポートは過去にお届けした。今回この巡回展である九州展(於・九州国立博物館)を拝観してきたので、ここに報告したい。

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展示構成は東京と同じだが、見せ方が違う

展示構成は6部立てで、東京展から変化はない。しかし展示品は全体の7割が入れ替わっているという。そして見せ方がまさに「九州仕様」となっていて、まるで別の展覧会に訪れたかのようであった。

まず第1章「最澄と天台宗の始まり」だが、エントランスに大きな遣唐使船の模型が!そう、伝教大師・最澄はここ九州から遣唐使船に乗り中国(唐)へと求法の旅へ出、帰国後もこの地に大きな足跡を残した。最澄と空海は同時期に同船団で唐へ渡ったが、この2船以外は海の藻屑と消えた。この2人が存在しなければ、伝統仏教のかたちは大きく異なってただろう。まず入口にこの象徴的な遣唐使船を展示し、九州を誇ったかたちだ。

第2章は「教えのつらなり」と題して、密教や修行を紹介。東京と大きく異なったのは、学芸員自らによる修行の体験レポートがパネル展示されていた点だ。初心者がやってみるとどうなるのか?一般参加者目線で修行に親しみを感じる良展示。千日回峰行者のしきたりも詳しく紹介されていた。

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第3章「全国への広まり」ではおもに九州一円の仏像が揃う。特に大分県・六郷満山からの展示品はすばらしい尊像ばかり。東京会場では、北は東北・北陸からも仏像が集結していたため、量、質ともに濃厚を極めたが、九州会場では九州の尊像が中心。出展数が限られるぶん、丁寧にお参りができる。

第4章「信仰の高まり」、第5章「教学の深まり」も、スポットを当てる作品が異なり、東京会場とは違った印象を受ける。最後の第6章は「現代へのつながり」として江戸天台がメインとなるぶん、東京会場に分があるかと思いきや、その不足を感じさせることはない。

総評:東京展より良かったのでは!?

展覧会はただ出品点数が多ければ良いという訳ではない。どの文脈で、どう見せるか?その手腕が問われるという意味では、九州展のキュレーターは見事な仕事をされていた。

東京展と同じく、会場では特別記念ご朱印が販売され、僧侶が日付を書いてくれるシステム。グッズ売り場には、最澄と空海を描いたマンガ『阿・吽』の著者おかざき真理氏とのコラボグッズも多数。

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おまけ:会場近くの六所宝塔、大宰府をお参り

会場の裏手には霊峰・宝満山が鎮座し、山の中腹には伝教大師・最澄が仏教布教の拠点として建立を発願した「六所宝塔」の跡が。こうした縁の深い土地で没後1200年の記念展が開催された意義は大きい。また会場は太宰府天満宮に隣接しているので、こちらもお参りすることができる。梅の季節も相まって見事な景観だ。

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おわりに 

天台宗の総本山・延暦寺をはじめ、各地の寺院が守り伝えてきた秘仏や仏画などを展示する特別展「最澄と天台宗のすべて」。九州展ののち、2022年4月12日(火)~5月22日(日)には京都国立博物館に巡回する。東京・九州と回った展示も、京都で仕舞いとなる。延暦寺のお膝元の京都展はどんな展示になるのか、やはり気になるところだ。展覧会の詳細はHPを確認していただき、ご関心の方にはぜひ足を運んでいただきたいと思う。

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Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)



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