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【京都展レポート】「最澄と天台宗のすべて」
全国3ヶ所の巡回をコンプリート!
天台宗の宗祖、伝教大師・最澄(766?~822)の没後1200年を記念しての特別展「最澄と天台宗のすべて」は、全国3ヶ所を巡回。
東京展は2021年10月12日~11月21日に上野・東京国立博物館にて開催。
(東京展のレポートはコチラ)
九州展は2022年2月8日~3月21日に大宰府・九州国立博物館にて開催。
(九州展のレポートはコチラ)
そして最後の巡回となる京都展は、2022年4月12日~5月22日に京都国立博物館にて開催された。筆者は京都を訪ね、全国3ヶ所をすべて拝観することができたので、ここに報告したい。3会場それぞれの特色を見た。
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展示構成は前2会場を踏襲するも、地域差あり
展示は6部構成で、前2会場を踏襲。内容の詳細は東京展と九州展のレポートをお読みいただきたい。
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東京展は、深大寺や上野の寛永寺といった関東の天台寺院に焦点が。そして九州展は、九州の仏像がメインだったり、九州の天台エピソードが重点的に紹介されたりと、それぞれ地域色が色濃く反映されていた。では天台宗の総本山・比叡山のお膝元となる京都展はどうか?といえば、日吉大社の御輿が展示されていて、これまた独自性を打ち出していた。
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3ヶ所見て感じたこと、それは、、
さすがに3ヶ所を巡拝すると、重複する出品もり、目新しさ、のようなものはない。僧侶がご朱印を書いてくれるシステムも一貫。それよりもまざまざと実感したのは、各地における気質の違いだ。
東京は、混雑緩和のため日時指定の前売券制を導入。仏像の出展数も多く、量で魅せる。人口密集地帯・東京の拝観者を「いかにさばきつつ」、密度で満足させようという展示法だ。
翻って九州は、余白を見せる。会場も広々として、こちらにさまざまなことをじっくり考えるさせる余地を残す。学芸員は活発で、修行の体験記をレポートしたりと、来場者目線の展示が魅力。SNSを駆使していたのも親切だった。
ところがSNSのアカウントが京都へ引き継がれると、パタリと更新がなくなってしまった。京都展は日時指定券でないためか、注意喚起のパネルを持った学芸員が、展示室内を練り歩く。他の文化施設でも感じたことだが、どことなく権威的な雰囲気があるのは「京のみやこ」ならではかもしれない。
そして。京都は、「有名な寺が多すぎる」。会場の周辺にも、誰もが聞き覚えのある寺社仏閣がごろごろ。「京都では仏教展は流行らない。博物館に行かなくても現地に本物があるから」と知人が漏らしていたが、そのとおりだろう。会場のすぐ目の前の三十三間堂という立地では、「貴重な仏像が集結!」と銘打っても、押しに欠ける。
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総評
東京・九州・京都と回ってみた結果、総合的には九州が肌に合った。
回ってみてはじめて、同内容の展示でも、土地柄によって雰囲気・見せ方などが全く異なるのだと知った。展覧会は、その場所用にカスタマイズされていて、観覧者はそれを知らずに観ているのだった。そして、作り手側の姿勢がこうも現れるのかと驚いた。やはり最後は「人」に懸かっているのだと再確認でき、3ヶ所回れた意義は大きかった。
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Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)