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岩波ホール閉館によせて

映画ファンが悲鳴をあげた「岩波ホール閉館」の報

2022年の年明け早々に、衝撃的なニュースが飛び込んできた。それは「岩波ホールは、2022年7月29日(金)を以て閉館いたします。」というもの。

新型コロナの影響による急激な経営悪化によるものだという。このニュースに日本中の映画ファンは悲鳴をあげ、存続のためのクラウドファンディングを希望する声もあったが、実施には至らず、いよいよ今月末に閉館を迎える運びとなった。

WORKSHOP AIDも馴染み深い映画館だった

岩波ホールは古書店で有名な東京・神保町にあり、駅と直結していて、上の記事にあるように日本のミニシアターの先駆けであり、社会派で高尚な審美眼で知られていた。当WORKSHOP AIDにとっても縁のある映画館で、岩波ホール上映作品にあわせた企画を過去2回、実施している。

1、2014年8月20日(水)「宗教映画を観に行こう!」

2、映画「娘よ」を語ってみた<WORKSHOP AID 2017.4.26(水)18:00~ライブ配信>

われわれ3人(キリスト教者・イスラム教者・仏教者)と一緒に映画を観たい希望者を募り、鑑賞し終わった後には地下街の飲食店へ移動し、参加者とともに意見交換するという企画だ。当時は意識すらしていなかったが、コロナ禍となってしまったこの数年は、そうした「人数を集めて、懇談し、会食する」会すら夢のように感じてしまう。岩波ホール閉館もコロナ禍による経営悪化であるから、つくづくこの感染症が奪ったものは大きい。

最後に足を運んでみた

長年の感謝と御礼をこめて、筆者は先日、観納めに岩波ホールに足を運んだ。最後の上映作品は「歩いて見た世界  ブルース・チャトウィンの足跡」(原題:Nomad: In the Footsteps of Bruce Chatwin)。

なぜこの作品が最後の上映作品に決定されたのか。社会派の岩波ホールならでは、世界的に増加傾向にあるというノマド(漂流する)高齢者の問題を提起しているとも見える。がしかし本作を鑑賞して思うのは、「悠々と自ら世界を旅し、生きがいに命をかける」そんな人生への讃歌だ。他国へ移動することもままならない昨今のコロナ禍の中で、のびのびと、行きたいところに行ける、会いたい人に会える、それがどんなに幸せなことか。そして、自らのやりがい・生きがいを見つけ、そこに命をかける。そんな人生をおくれたら、どんなに素晴らしいか。

岩波ホール最後の上映作品は、我々観客への、ありったけのエールだった。

神保町駅A6出口直結
エレベーターで10階へ
館内には過去上映作の一覧が
クラシックが流れる劇場内

54年の永きにわたって、本当にありがとうございました。


Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)




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