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#14 「若者のアイデアはユニーク!」から脱却しませんか?

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。先日、ワークショップで若者と交流する機会がありました。

会場に来ていた高校生に「最近どんなSNS流行っているの?」と尋ねたら、BeRealというアプリを教えてくれました。通知で指定された時間に写真を撮り、無加工でアップするSNSです。時間指定×無加工ということで、「映えない」写真が当たり前なんですって!

写真加工の全盛時代に、このポジショニングはとてもユニークですよね。現状へのカウンターが効いていて、とても面白いなと感じました。



「若者のアイデアはユニーク」に感じた疑問

さて、今日は少し毒を吐いてしまうかもしれませんが、最近この「ユニーク」という言葉に関して、とても違和感を覚えた出来事がありました。

何かというと、若者が大人に提言をする会で「若者の意見はユニークだねぇ! 自分たちには考えられなかったよ!」と嬉々としていた大人たちの感想と態度に、なんだかモヤッとした気持ちが湧いたのです。

この「若者のアイデアはユニーク」という発言って、日本全国で定型句になっていますよね。私も子どもの頃からよく耳にしてきましたし、大人からこう褒められるとすごく嬉しかったことをよく覚えています。

でも、アイデア共創を専門的に扱うようになった現在の立場からこの言葉を聞いてみたら、とんでもなくおかしな話ではないかと感じるようになったんです。

なぜなら、どう考えたって、大人の方がユニークなアイデアを出せるはずだと思うんですよ。

ユニークなアイデアは大量のアイデアを下敷きに生まれる

アイデア発想を生業にしている方の著書を拝読すると、みんな口を揃えて「ユニークなアイデアは、くだらないアイデアや、見るからに使えないアイデアを大量に生成した結果、偶然生まれる」ということを強調されています。

例えばおもちゃクリエイターの高橋晋平さんは、『アイデアが枯れない頭の作り方』の中で「いいアイデアを思いつかなくてもいい。ダメなアイデアを出し続けられればそれでいい」と言い切っています。

最初から課題やお題にミートしたアイデアを狙い撃ちしようとせず、量が質に転化することを信じ無数のアイデアを考えることで、結果的に素晴らしい発見が生まれるのです。

こうしたことを前提にしていると、もし大人が若者よりユニークなアイデアを出せていないのだとしたら、それはただ単に大量のアイデア創造をサボっているだけではないか? と感じてしまうのですよね。

アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ

ジェームス・W・ヤングは、出版した1940年からいまだに世界中で読まれている『アイデアの作り方』という名著の中で、「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」と定義しました。

ということは知っている「既存」が多ければ多いほど、新しい組み合わせを創造できる可能性が高まるわけで、そもそも知識と経験が豊富な大人の方が、若者よりユニークなアイデアを創造しやすいはずなんです。頭が柔らかいかどうか等は、あまり関係がありません。

「新しいお寿司を考える」を例にとると分かりやすい気がするのですが、多くの大人は既存の寿司をよく知っていて、まだ寿司になっていない食材にも詳しいですよね。

ですから上記のアイデア出しの法則に則り、思いつく限りの組み合わせを考えていけば、その中にはキラリと光る新案が含まれていると見るのが自然です。だから、このケースで新しいお寿司の組み合わせを発見できる確率は、若者より大人の方が高いと思います。

子どもの視点は時に大人の想像を超えるので、「ラムネ×お寿司」「ガム×お寿司」みたいな、新結合を提示してくることはあるでしょう。

でもこれが有りなら、「仁丹×お寿司」だっていいじゃないですか? 

子どもはラムネやガムまでは想像できても、仁丹まではたどり着けないと思うんです。たぶん知らないので。

こんな風にアイデア出しって連想ゲームなので、大人は若者のアイデアから着想を得て、さらに遠くまで行けるはず=ユニークなアイデアを創れるはずです。

アイデア創造を習う機会がないのは社会全体にとって損失

ただ、わからないでもないのは、アイデア創造って学校でも会社でも、ちゃんと習う機会がないじゃないですか。

実際私も、大学2年生の頃、全然アイデアが出せなくて困り果てた経験があります。朝まで頑張ってもろくなアイデアが生まれず、自分の才能のなさを嘆いた日は、一度や二度ではありません。

そんな時に出会ったのが『考具-考えるための道具、持っていますか?』でした。アイデア創造に対する適切なマインドセットと、アイデアを出す手法の数々が書かれていて、文字通り私の人生は激変しました。

私はこの本を読んで以来、「何のアイデアも出せない…」と行き詰まることがなくなったんですよね。使えるかどうか、ユニークかどうかはさておき、アイデアそのものは無限に生み出せるようになったのです。

これは私が特別アイデア創造に秀でた才能を持っていたわけではなく、コツさえつかめば誰にでもできることです。

ですから、日本の大人がアイデア創造の手法やマインドセットを習っていないというのは、社会全体にとっての大きな損失だと思うのです。


大人が若者よりユニークであれる社会を!

私はこの件を文章に起こしながらあれこれと考えてみたのですが、「大人って面白いことを考えつくなあ」と子どもが目を丸くして喜ぶような社会のほうがいいんじゃない? と思うに至りました。

今は「おじさんたちは頭が固いから」などと言って自分たちを下げつつ、若者のアイデアはユニークだ、斬新だと持ち上げている方が多いですよね。

これが若者の自己肯定感を高めることを意図したコメントなら良いですが、大体のケースでは、「自分たちにはおもしろいアイデアは出せないんだ…」と本当に思っているんですよ…。

実際はそんなことないはずです! ほんの少しだけアイデア出しのマインドセットを学んだり、手法を身につけるだけで、アイデア出しはとても楽しく、とても自由に行えるものなんですから!

こうしたことを伝える機会をたくさん増やしていけたら、私はとても嬉しい。

そのためにも、いま取り組んでいる妄想アイデアトレーニング「モウトレ 」や、iU情報経営イノベーション専門職大学で開講予定の「妄想学」をますます大事にしていきたいと思いました。

ワークショップデザイナー
相内 洋輔

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