#9 SPY×FAMILYから「新結合」「撞着法」「アイデア共創」について考えてみた。
ワークショップデザイナーの相内洋輔です。
この週末は娘と一緒に「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」を観てきました!
SPY×FAMILYって、まさに異質なものどうしのかけあわせ! 面白いアイデアを作るお手本のような新結合だなと思いました。
私はアイデア共創のワークショップをたくさんご提供しているのですが、面白いアイデアって、異質なものどうしのかけあわせから生まれることがとても多いんです。
一方で、同質性が高いものどうしが結合してもあんまり面白くなりません。「SPY」×「忍者」だったら、とても普通でしょう?
イノベーションは「新結合」から
イノベーションの祖と言われるシュンペーターは、あらゆるイノベーションに共通する方法論を、「新結合(Neue Kombinatioin)」と定義しました。
ここからSPY×FAMILYを見つめてみると、まさにこの構造のうえに、ユニークな物語が創造されているのではないかと思うのです。
ちなみに私は、「スパイ」「ファミリー」という言葉に対して、瞬間的にこんなイメージが湧いてきます。
見比べてみると明確なのですが、表裏一体と言ってもいいほど、対照的な要素・概念のオンパレードです。
SPY×FAMILYはこうしたそれぞれの単語から浮かぶステレオタイプなイメージを逆手に取って、
スパイ「なのに」家族のために熱くなる
ファミリー「なのに」全員が大きな隠し事を抱えている
という世界観で話が展開されていきます。このギャップこそが、面白さの肝だと思うのですよね。
意味的矛盾からユニークさを生み出す「撞着法」
前回書いた「#8 自己理解を促進する「メタファー」の力」では、『日本語のレトリック 文章表現の技法』という本をご紹介しました。
この中で「撞着法」という手法が取り上げれています。別の名を「対義結合」と言うそうです。
簡単に書くと、正反対の言葉を結びつける手法です。意味的に相反する言葉どうしを結びつけることで、人の注意を引きつけたり、深い意味を考えさせたり、情感を呼び起こしたりする作用があります。
「SPY×FAMILY」という言葉の結びつきも、広義には撞着法と解釈できて、それ故に、人を惹きつけるコンテンツ力を持っているのかもしれません。
BUMP OF CHICKENの歌詞は撞着法の宝庫
ちなみに私はこの手法に心を動かされることがとても多くて、よく歌詞の中に撞着法を探しています。
例えば私が大好きなBUMP OF CHICKENの楽曲には、たびたび撞着法が見られ、下記のような意味的矛盾を敢えて用いることが、「物語の奥深さ」の形成につながっていると感じます。
「帰ろうとしない帰り道」なんてその極みで、
どれだけ一緒に帰っている人に恋い焦がれているのだろう…
という情景と、その切なさとを、一瞬で想像させられるんですよね。
他にはサザンオールスターズの「真夏の果実」などもそうでしょうか。
真夏の印象と相反する、マイナス100度の太陽。それって一体どんな恋なんだろう? と、思わずストーリーを考えずにはいられないのです。
撞着アイデア共創の可能性は!?
私は現在、妄想アイデアトレーニング「モウトレ」というアイデア共創ワークショップを、iU情報経営イノベーション専門職大学と協働で行っています。
簡単に内容をご紹介すると、
① お題に沿ってみんなで大量にアイデアを出して
② 面白そうなアイデアどうしをかけあわせ
③ ユニークな新案を生み出す
というワークショップです。既にピンと来ている方も多いと思いますが、狙うはアイデアどうしの「新結合」です。
私はこのワークショップの進化系をいつも考えていて、これまでにも複数の変化形をデザインしてきたのですが、今回この記事を書いていて、
「撞着法の技法を下敷きにしたアイデア共創ワークショップ」は飛躍の可能性があるかもしれない! と思ったんですよね。
偶然に異質なものどうしが結合されることを待つ受身型ではなく、意図して対極的なものどうしを結合させてみるプロセスをデザインしたら、斬新なコンセプトが出来上がるかもしれないと感じたのです。
世に出せるアイデアに仕上がる確率はそう高くないアプローチだと思いますが、もし際立ったコンセプトが見つかった時の爆発力は…!
やってみる価値はありそうです。
アイデア共創ワークショップから新しい価値を作りたい!
私は常々、アイデア共創ワークショップがもっと広がって、日本を変える新しいコンテンツが次々と世に送り出さる世の中になったら嬉しいなと思っています。
失われた30年という言葉をよく見聞きしますが、その度に暗い気持ちになるんですよね。同時に、失われた期間が40年、50年と拡大しないよう、ここで食い止めなければいけないと思うのです。
こうした閉塞感を打破するには絶対にアイデアが必要です。だから、面白いアイデアが量産されるワークショップを、私はたくさん世の中に提供していきたいんですよね。
2024年は、妄想アイデアトレーニング「モウトレ」から3つの新商品・サービスを生み出すことを目標にしています。
目標が叶うように、遊び心をもって楽しんでいきたいと思います!
ワークショップデザイナー
相内 洋輔
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