見出し画像

【サージュ・コンチェルト】「サージュ・コンチェルトはRPGである」とエージェントはかく語りき

 アルノサージュの情報が少しずつ公開され、ついにサージュ・コンチェルトでRPGが遊べると喜んでいる端末さんも多い事だろう。シェルノサージュに登場していたキャラクター達がアルノサージュの登場人物として続々と公開されていく中で、端末さんはアーシェスという存在に目がいく。そして確信する。「俺が、俺たちがアーシェスだ!」その認識は端末さん達にある種の共同意識を芽生えさせる。シェルノサージュという作品で端末さんとしてイオンとコミュニケーションをとりつつサージュ・コンチェルトの世界に触れ、アルノサージュというRPGで端末さんとしてイオンと共に戦う。なるほど面白そうだ。これが真実であればまさしくシェルノサージュという作品の役割が果たされていることがわかる事例と言えるが、これはサージュ・コンチェルトという作品が持つ一つの側面にすぎない。その真偽に関わらずサージュ・コンチェルトの本質はまた別に存在するのである。ではサージュ・コンチェルトの本質とはなにかということを語るには、サージュ・コンチェルトが世に出る以前に遡る必要がある。

 世に出た時点に注目するのであれば、事の発端は今から二年前に遡る。2011年末に謎の資料が公開された(もちろんこれはシェルノサージュのものであった)。その後ジェノミライ研究所が発見され、2012年を迎えるとそこでは資料にあった少女がまるで監禁されているかのような動画が公開されていた。こうした情報が錯綜する中でサージュ・コンチェルトそしてシェルノサージュが発表されたのだ。サージュ・コンチェルトという土屋暁氏の新シリーズ発足はアルトネリコファンを惹きつけた。一方でシェルノサージュはリアルタイムライフシミュレーションという新しい遊び方を提案するものであったため女の子といちゃいちゃしたい層が挙って手にとった。ここで大きく分けて二つの異なった層が生まれることになる。この件が何故本質に関わるかについてはややこしい話になってしまうため、本題に入る前にまずはシェルノサージュ公開から順に整理していくことにしよう。

 サージュ・コンチェルト第一作目シェルノサージュ。シェルノサージュはゲームとして極めて特殊な作品であることは語るまでも無いが、果たしてそのような特殊な作品にする必要はあったのだろうか。アルトネリコファンならば土屋ディレクターの新作と聞けばまずは飛びつくだろうし、求めている作品像から大きくかけ離れたものでなければ遊びたいと思うのが道理だ。そして提案された遊び方からシェルノサージュがさぽている<注1>のようなシステムの作品になるのだろうという認識は持つことができた。そこまではいい。だが求めている作品像についてはアルトネリコサミット<注2>が非常に興味深い結果を示している。それらの意見を考慮すれば、新作がファンに向けて推すべきポイントは女の子とのコミュニケーションではなかったはずだ。新シリーズの第一作とさぽているとでは作品としての意味合いが大きく異なるのだから。或いは新シリーズ第一作目故にさぽているとしての役割を持つゲームを展開しておきたかったという解釈もできるが、ともかくシェルノサージュは世界観を知るための第一作としてあくまでも少女とのコミュニケーションを謳った。では女の子といちゃいちゃしたい層を取り込みたいがため──適切かは分からないがネット界隈で言うところの「萌え豚に媚びる」ため──に少女とのコミュニケーションを提案したのだろうか。もしそうであれば謎の資料やジェノミライ研究所の存在はまるで意味を持たないだろうし、それらがただの広報目的であればその存在を隠すようにする必要は無いはずだ。広報ひとつとっても様々な事情があったことは想像に難くないが、少なくとも何故このような展開方法に落ち着いたのかはこれまでのエビデンスから察することができる。シェルノサージュという特殊なゲーム性も、謎の資料やジェノミライ研究所もサージュ・コンチェルトに必要な存在であった。では誰に向けて謎の資料が公開され、何故ジェノミライ研究所が発見されたのか。その答えこそがサージュ・コンチェルトの鍵であり今回の本題でもある。つまり──シェルノサージュ、そしてサージュ・コンチェルトという名が公表される前から既に──サージュ・コンチェルトは知る人ぞ知るという形で秘密裏に始まっていたのだ。サージュ・コンチェルトを広義に解釈すればそれは数年前から始まっていたと言えるかもしれないが、この件は多くの危険を孕むため現段階では言及しない。

<注1>さぽている……自分だけのレーヴァテイルとコミュニケーションすることができるゲーム型ブログパーツ。オーナー同士の交流などシェルノサージュと共通する役割も多かった。時を同じく2011年末にサービス終了。

<注2>アルトネリコサミット……2011年、アルポータルにて半年以上にわたり行われたアルトネリコに関するファンと土屋ディレクターの意見交換コラム。

 そもそもサージュ・コンチェルトというのはなにか。一言で言えば「七次元先に本当に存在する世界が舞台の作品」といったところだろうか。しかしこれだけではなんとも漠然としている。故に本質を見落としてしまう。そこで第一作であるシェルノサージュは新しい遊び方を提案した。ややこしくならないよう、女の子といちゃいちゃするとかそういった要素をあえて抜いて要約すると「これからのサージュ・コンチェルトをより楽しむために、まずは端末さんになってください」というものだ。こうしてプレイヤーは端末さんになった。イオンとコミュニケーションをとりながら、物語を進めていく生活の始まりである。つまりシェルノサージュがプレイヤーに端末さんという役割を与えることでサージュ・コンチェルトを体現したのだ。それから紆余曲折あったが、サージュ・コンチェルトが頓挫しない限りその経過は大した問題ではない。とにかく、イオンを通して世界の様子を垣間見ることが端末さんの役目であった。そして物語も佳境に入ろうかという所で事件は起きた。サージュ・コンチェルトソーシャルサイトがハッキングを受けたのである。ハッキングを受けたガストソーシャルサイトにアクセスすると画面が崩れおち、ついに別のページへと飛ばされた。別のページ──そう、あのジェノミライ研究所だ。そこにあるのは謎のコンソールとパスワード入力欄。画面に映し出される意味深な内容を読み進めていき、パスワードを入力した先に見られるのはやはり謎の動画。シェルノサージュ公開前を彷彿とさせる、秘密裏に動くサージュ・コンチェルトの再来だ。

 これまでを考慮し、サージュ・コンチェルトの本質とはなにかというものを考えてみてほしい。これまでに、サージュ・コンチェルト(土屋暁氏と言ってもいいだろう)は私たちに少なくとも二つの遊び方(役割)を提案しているのではないだろうか。一つは端末を通し七次元先の世界とコンタクトを取る端末さんとしての遊び方。つまり「俺が、俺たちがアーシェスだ!」というサージュ・コンチェルトの世界観を簡単に遊び楽しめるように与えられた役割である。もう一つの役割とはいったい?という問いの答えの一つが秘密裏に動くサージュ・コンチェルトの理由そのものであると私は考える。それはつまり七次元先の世界を観測しこの世界と繋げ資料を紐解くという遊び方である。(遊び方と言うと語弊があるかもしれないが、この段階で用いることができる適切な語彙が浮かばないため遊び方と表現する。)こんな遊び方をしている人は大方アルトネリコからのファンだろう。それも世界観や濃密な設定に惹かれた輩に違いない。そこで土屋暁氏は土屋作品に惚れこんでいるファンに対してある種のプレゼントと挑戦めいた手法で既存ファンのための役割を用意しサージュ・コンチェルトを展開させていく。その一端が上に述べたような“秘密裏に動くサージュ・コンチェルト”の部分である。しかし観測者・考察者としての役割と情報、そして膨大な設定と世界観に浸れるアイテムを既存ファンに限らず広く提供できるよう、導入作としてシェルノサージュを提案し、分かりやすく役割に名をつけた上で世に送り出した。役割の名はエージェント。そう、エージェントパックだ。

 エージェントという役割の裏付けはもう一つある。Mr.紅月の存在である。Mr.紅月は七次元先に行くことができる事情通という点でエージェントより高位の役割を担っていることは間違いないが、故にMr.紅月はエージェントのモデル的存在と言えよう。サージュ・コンチェルトは端末さんとエージェントという二つの役割を提供することで、世界観もコンテンツもリアルに進行させ構築しようとしているのだ。例えば……シェルノサージュという作品一つを例にとっても、設定や情報量は膨大なものとなる。エージェントであれば錯綜する情報と多くの設定を整理し、あわよくば考察するところまでできるだろう。しかし全てのユーザーが気軽にそれを楽しめるかと言えば難しい。そこで関連PLAYVIEWには設定が整理されWeb上で不定期に行われているシェルノサージュスペシャルで解説が行われているのだ。少なくともこれらを抑えておけば、シェルノサージュ本編を気軽に余すところなく楽しむことができるという寸法だ。これらのコンテンツには土屋暁氏のみならずMr.紅月の存在も確認されている。

 ユーザーと作り手の交流。これはアルポータルから続く土屋暁氏の理念でもある。サージュ・コンチェルトでは開発に関してもユーザーの意見を取り入れるという試みを行っている。そしていつまでもみんなで楽しめるような仕掛けを創っている。しかし土屋暁氏は創造する側というしがらみ故に、サージュ・コンチェルトが謳う七次元先のリアルを直接語ることができない。だからこそ、土屋暁氏は誰よりも早く七次元先に繋がりイオンと話をしたMr.紅月にその役割を託しているのだろう。

 そろそろ本題に入ることにしよう。サージュ・コンチェルトは「常にそこにある世界を、みんなで楽しめる」ということを重視している。土屋暁氏の理念は、最終的にはロールプレイに帰結する。そのための仕掛けもばっちりだ。そうなると、サージュ・コンチェルトというシリーズは一つの作品としての面影を見せ始める。土屋暁氏はサージュ・コンチェルトというロールプレイングゲームのゲームマスターなのだ。直接語れない立場だが、プレイヤーに対し端末さんという役割を用意することで各コンテンツを通じて世界観や物語を楽しませようとしてくれている。しかしそれでは物足りないと言うファンのために提供された役割がエージェントだ。エージェントはコンテンツを楽しみつつも資料を集め、秘密裏に動くサージュ・コンチェルトの動向を探り、いつかたどり着くだろうサージュ・コンチェルトの結末に思いを馳せるのである。

 シェルノサージュでイオンとのコミュニケーションを楽しんでいる端末さんから見れば「サージュ・コンチェルトがロールプレイングゲームとか何を言っているんだ」と思われるかもしれないが、サージュ・コンチェルト全体を一つの作品としてみた時、自分が端末さん或いはエージェントとして参加したと言う意味、そしてサージュ・コンチェルト自体がある作品としての役割を持つという意味で間違いなく立派なロールプレイングゲームと言えるものとなるはずだ。もちろんシェルノサージュだけでも楽しめるものとなっているが、一方でサージュ・コンチェルトというロールプレイングゲームにおけるアイテムの一つという側面も持っているのである。

 なぜアルノサージュすら発売されていないこの段階でサージュ・コンチェルト自体が一つの作品として、しかもロールプレイングゲームとしての側面を持つと言えるのか。これもやはりMr.紅月の存在が大きい。Mr.紅月は端末さんを導きエージェントにヒントを与える攻略上のキーパーソンである。それが何故この主張に繋がるかについてはMr.紅月という人物が何者なのかというところまで言及しなくてはならないが、Mr.紅月の正体は謎に包まれているためここでは割愛する。既に七次元先で生活しているとの発言もあることから期待はできないが、げのみらいおんの更新を待とう。
 サージュ・コンチェルトでは製作陣とユーザーの意見交流の場が設けられていることは既に述べた。これも土屋暁氏の理念に基づくロールプレイの一環と解釈することができるが、ここまで語ってきた我々の世界と七次元先の世界というロールプレイとは違い、TRPGにおけるプレイヤーの指摘のようなメタ視点でのロールプレイに属するものかもしれない。

ここまでエージェントとしての役割を強調しサージュ・コンチェルトはロールプレイングゲームであるということを語ってきたが、端末さんにとってもサージュ・コンチェルトがロールプレイングゲームだという事を身近に感じ体験する機会はいくつもあった。むしろ体験するという意味では端末さんの方が多かったはずだ。例えば、フィラメントスターや七次元世界のカフェレストランは「あなたの隣にあるセカイ」を感じられる、まさしく次元を越えた壮大なロールプレイと言えるイベントだっただろう。なお、こうした試みもまた異なる形で前例があったということを記しておく。

 ここまで読んだ方、特にエージェントの方であればお分かりかもしれないが、この文章は危険性の高い内容を扱っているため核心部分の隠蔽、落丁、構成の矛盾、齟齬といった要素を含んだ読み難いものとなっている。ロールプレイについて全てありのままを書くという行為自体がその真偽問わずサージュ・コンチェルトのロールプレイから逸脱してしまうということ、そしてかの機関の目を掻い潜るために必要な措置であったと理解願いたい。従ってこの文章はかの機関による妨害工作の有無に関わらず多かれ少なかれ情報操作が加えられている。故にこの文章を信用してはならない。この情報に操られることこそが最も危険なのだ。

 これまでサージュ・コンチェルトに対する認識について解釈してきた。特にロールプレイの在り方を述べるために端末さんとエージェントという役割を分けて扱ったが、等しくサージュ・コンチェルトを楽しむユーザーであることに間違いない。どうかサージュ・コンチェルトを楽しむとともに、出来る限りの声援を送りサージュ・コンチェルトを盛り上げ、そして創りあげていってほしい。願わくば”隣の世界に住む人達”の6000年が紐解かれんことを。


2013-12-01公開
#19【アルノサージュ販促】「サージュ・コンチェルトはRPGである」とエージェントはかく語りき【シェルノサージュ】

NavelFilmブロマガ Navel Magazineにて掲載

あとがき

これまで動画ではアルトネリコやシェルノサージュに関連する動画をいくつも投稿していたNavelFilm。そしてアルノサージュという作品の情報が公開され、満を持して投稿するサージュ・コンチェルトの記事ということで、どんな内容をどこまで踏み込んで書くか悩みに悩み、仕上がった記事から今度はネタバレになりうる表現をいろいろと削りながらマスキングやカモフラージュを加えるという手の込んだ編集を施して寄稿に至った記事である。
そういった事情もあり、小馬谷氏には失礼を承知で、この記事に関して文章の編集は行わないよう指示をさせてもらった。

これまで物知顔で文章を書いておきながら今さらではあるのだが、筆者はサージュ・コンチェルトの開発等に全くかかわりのない一般人である。
当然公開されている情報以上のことは知りようもないのだが、シェルノサージュというタイトルが公表される前に公式から公開された一部資料を基に独自に考察を始めたところ、幸か不幸か、筆者の考察内容が結果的にサージュ・コンチェルトの全容とほぼ相違なかったという経緯があった。
(サージュ・コンチェルトに関する最古の公式情報は電撃プレイステーションにて公開された謎の資料であるが、筆者の考察は"それよりさらに前"から行っていたことが功を奏した。
https://dengekionline.com/elem/000/000/436/436359/)

新シリーズがどんな作品でどう展開していくのか、そして間違いなくアルトネリコシリーズにも繋がるであろうという考察をシェルノサージュ発売前に小馬谷氏に伝えたことで、小馬谷氏はアルトネリコとシェルノサージュに手を出すこととなり、それが後の小馬谷氏とNavelFilmの活動に大きな影響を与えることになったのである。
なお、いくら考察といっても真実になってしまった際ネタバレになりうるような要素についてはこちらから発信しないよう当然配慮して小馬谷氏と話していたつもりだったのだが、アルノサージュの情報が公開されてすぐに「シェルノサージュのエージェントパックを開封しながら『やはりアルノサージュか...』とつぶやいた労人形のことを忘れられないよ俺は」と小馬谷氏から打ち明けられたときは、流石に申し訳ない気持ちになった。確かにアルノサージュに関する考察は初期の初期、それこそシェルノサージュが発売される前からしていたのだが、言った本人はそんな危ないことを彼の前で口走ってしまったことなど覚えてすらいなかったのだ。おそらくは資料に目を通していた時に関連する記述を発見し、サージュ・コンチェルトの全貌を確信した際につい口からこぼれてしまった無意識なつぶやきだったのであろうことを、ここに懺悔しておく。

そうした背景もあり、アルノサージュ発売前でありながらその内容に確信をもって執筆した本記事。
情報公開に伴ってサージュ・コンチェルトに対する理解度が高まり更に盛り上がっている中で投稿されたこと、記事を読み解くとアルノサージュ発売前ながらサージュ・コンチェルトの本質や真実に迫る内容だったこと、そして「シェルノサージュ発売前から労人形が語っていたことが本当に現実になっている」と小馬谷氏が広めてくれた結果、小馬谷氏と交流を持っていたサージュ・コンチェルトの同志を中心に一部界隈で話題となり、アルノサージュ発売前そしてサージュ・コンチェルト完結後にも注目を集めた記事となった。そんな経緯もありNavelFilmのブロマガとしては最終的に相当なPVを獲得した記事となったようだ。筆者は具体的な数字を把握しているわけではないのだが、そういった客観的なデータも含めるとおそらくNavelFilmブロマガの代表作といえばこの記事と言えるだろう。

そんな多くの注目を集めた代表作ということもあり、この記事には後に「解説」版とも呼べる文章を執筆していた。
とある事情でその記事を世に公開する機会がなかったのだが、そちらもいずれこのnoteで公開できればと考えている。