創作活動サークルNavelFilmの歩み
2012年、小馬谷優介は燻っていた。
湧き出る意欲を形にしたい。
そうした想いを発散するために、作る。書く、描く、撮る。これまで様々な創作の形を試してきた中で、しっくり来たのが撮影と編集だった。
そうして撮影や編集を専門的に学び始めていた小馬谷優介は、それを実践したい、そういった活動をライフワークにしたいという想いに駆られていた。
こうして動画投稿を始めた小馬谷優介は、創作活動を目的としたサークルを立ち上げることにした。
創作活動サークルn.o.g/. これが後にNavelFilmとなる、小馬谷優介のはじまりである。
小馬谷優介(komaya-yusuke)(@NavelFilm) / X
創作活動サークルn.o.g/.というはじまり
撮影や編集について学びいずれは職業に、と考えていた小馬谷氏は2012年の年末頃から動画投稿を積極的に行うようになる。動画は隔週の投稿の予定になるが、せっかくなら毎週何かしらのコンテンツを更新してサークル活動のような形にしたいということで声をかけてもらった私は、文章コンテンツ(主にゲームに関する記事)を執筆し提供するという形で関わらせてもらうことになった。
こうして、小馬谷氏が主宰した創作活動サークルn.o.g/.は動画とゲーム記事を定期投稿するサークルとして活動を開始することになる。
投稿を続けていく中で、小馬谷氏が手掛ける動画シリーズとサークル名をNavelFilmに変え、途中からは構成も変えて毎週更新に挑戦することになる。小馬谷氏の就職が叶い多忙となった2014年に定期投稿が終了し、その後小馬谷氏はカメラマンや編集者として公私ともに活躍していくことになる。
そして月日が流れ、年号も平成から令和に変わって、現在2024年。
ここでは定期投稿終了から10年という節目を記念し、Navelfilmとして投稿し世に公開された動画の中から、いくつかピックアップして労人形という個人の目線で勝手に紹介しながらNavelFilmの歴史を紐解いていく。
動画シリーズとしてのNavelFilmと七次元料理
動画シリーズとして最初に始まったのがn.o.g/.MovieDiaryおよびNavel Filmである。この動画シリーズは、基本的には小馬谷氏のvlog、すなわち小馬谷氏のライフワークを体現したような動画群となっており、動画を通じて彼の趣味趣向を垣間見ることができる。
この頃はまだ小馬谷氏の制作するvlogや動画に直接関わっていなかったが、私の勧めによって彼がハマったゲーム、特にアルトネリコシリーズやサージュ・コンチェルトシリーズに関する動画を制作する際は、相談に応じたり、内容の確認をしたり、提案を行うなどして参加させていただいた。
その中でサージュ・コンチェルトに登場する特異な料理(以下七次元料理と称す)を作る動画がいくつか制作され、これらの動画はNavelFilm初期における代表作とも呼べるシリーズとなった。
動画制作にあたり、七次元料理を題材に現実的で美味しい料理を作るメニューにするのか、あくまで独創的なコンセプトを重視した挑戦的なメニューにするのかについてはよく話が盛り上がった。現実的な再現料理を開発していく様子を動画化することもできただろうが、小馬谷氏が選んだのはあくまで独創的な七次元料理に独自の解釈で挑戦するというものであったことは、動画を見ていただければわかるだろう。その最たるものが、最初の挑戦にしてある意味決定版ともいえる「ミソデココ」の作成である。
ミソデココとは、一言で表現すればナタデココを具として入れた味噌汁である。
現実に販売されているナタデココはシロップ等で漬けてあるものがほとんどで、そのまま味噌汁に入れるとその甘味がなんとも言えない代物となることは想像に難くない...という珍妙さと分かりやすさがなんとも面白く、動画化の決め手となった覚えがある。この動画を作成することに決めたと聞いたときに、参考になればと私も自分なりにレシピを開発し試作したが、ナタデココの甘味を十分に抜いて味を調えれば、好きな人もいるかもしれないとか試してみてもいいかもしれないというくらいには、美味しく食べられる料理に仕上げることができるメニューであった。七次元料理の多くは奇抜で面白おかしいメニューだが、きちんとレシピを開発し、適切に作ればおいしく食べられるものに仕上げることはできるのである。
参考までに、シャッツキステ(惜しくも2020年に閉店)で開催されたコラボイベント「七次元世界からのカフェレストラン」でもメニューとして提供されたという事実がある。
しかしながら、小馬谷氏の挑戦は一味違った。彼の作ったミソデココ動画について特筆すべきは、ふつうに甘いナタデココの味噌汁を作って食べた後に、ミソデココのゲーム上の分類が菓子であることに注目し、とっておいたシロップを追加したことだろう。この行為は贔屓目抜きにしても挑戦といっていいと思うので、まだ見てない方は是非その雄姿を目に焼き付けてほしい。
七次元料理については一部界隈で人気を博し、公式でもレシピブックが発売された。レシピブックを入手してからはNavelfilmでもそれを基にした動画が制作された。
こうして投稿された動画全てがサージュ・コンチェルトに関わる内容だったわけではないが、この後に続くシリーズも含めると、NavelFilmの動画投稿はシェルノサージュと共にあったと言っても過言ではないかもしれない。
サージュ・コンチェルトと共に歩んだ 7D_LIFE-ch というNavelFilmの記録
2014年に小馬谷氏がめでたく就職することとなり、NavelFilmとしての動画投稿を一区切りした後、今後の活動をどうするかという時期を迎える。
そこで、彼が仕事と両立して毎週の動画投稿に挑戦できるか、ということではじめたのが、7D_LIFE-chだった。
ちょうどこのころ、私と小馬谷氏が追っていたサージュ・コンチェルトシリーズ待望の「アルノサージュ」が発売されるということで、サージュ・コンチェルトに関連する内容に絞って動画を製作することにした。
これまで追ってきたコンテンツの知識やグッズの"蓄え"があることから、これまでの動画シリーズよりは制作にかかる費用や時間的なコストを軽減できるだろうという見立てと、アルノサージュ発売からシェルノサージュ完結という終わりに向けてサージュ・コンチェルトを楽しむライブ感を記録する映像のような形にするのが良いだろうということで、7D_LIFE-chと銘打った動画シリーズを始めることになる。この動画シリーズでは私も少しばかり関わらせてもらい、取り扱う内容の提案や精査等をさせてもらった。動画内ですべてのグッズやコンテンツを網羅しているわけではないが、結果的にNavelFilmと7D_LIFE-chは、サージュ・コンチェルトというシリーズが動いていた当時の様子を垣間見える貴重な映像資料となったと思われる。
小馬谷氏の多忙とサージュ・コンチェルトの完結もあり、7D_LIFE-chというシリーズとしての投稿期間はそこまで長いものではなかったが、この間にアニメ エスカ&ロジーのアトリエのロジーPV企画に参加する等、ある意味で創作サークルらしい活動を最も精力的に挑戦した時期だったと言えるかもしれない(注:実際に映像を制作していたのは小馬谷氏一人の力量に他ならない)。
そして、定期投稿を終えてからすこし間をおいて投稿されることになるこのシリーズの実質的な最終回がvol.Celemonyである。
今になって思うと、私が小馬谷氏にアルトネリコとサージュ・コンチェルトを薦めたのは、自分の代わりにまっさらな気持ちで楽しむことができ、その様子を記録し、発信し、様々な人と共有できる存在が居てほしかったのではないか。そしてサージュ・コンチェルトというコンテンツをユーザー側で締めくくる、このvol.Celemonyという終着点を製作してもらうためだったのではないか。そのために、NavelFilmという創作の場があったのではないか。
…もちろんそんなことを薦めた当時に思い描いていた訳はないし、様々な出来事が重なった結果ではあることは百も承知なのだが、シェルノサージュ発売前から"とある確信"をもって彼に薦めてきたこれまでの過程と、おそらく他の人とは異なるサージュ・コンチェルトの楽しみ方をすることになった自身の記憶を思い返すと、そう思わずにはいられない。
そういった意味で、この動画もまた私が直接制作したものではないが、ある意味私と小馬谷氏の関係性が織りなす、NavelFilmとしての集大成といえる作品といえるかもしれない。そして、当時サージュ・コンチェルトを通じて小馬谷氏と交流されていた皆さまにも、この場を借りて改めて感謝申し上げたい。
この動画では彼のこれまでの活動や培ってきたスキルが凝縮されたエンドロールと、7D_LIFE-chという企画を立案した時から思い描いていた私なりのこだわりの締めの画が見られるので、アルトネリコやサージュ・コンチェルトファンにはぜひ一度ご覧いただきたい。なお、Youtubeにはエンドロールだけの動画も投稿されているためそちらも掲載しておく。
その後も作品の制作や投稿などが当時のサークルホームページで行われることがあったものの、創作サークルとしてのNavelFilmの定期投稿はこうして終了となった。
今回は定期投稿されていた動画シリーズを振り返ってきたが、次回はNavelFilmで投稿したゲームに関連する動画について、プレイヤー等として私が関わった動画を中心に紹介したい。