【ギャロップレーサー3/2000】PSギャロップレーサーシリーズ おませなぼくと女帝は同級生
私、ちょっとだけ競馬知ってるんですよー
プリンスオブターフって馬強いですよねー
ナルビークラウンも好きだなーかっこいいですよねー
えっ
二十世紀末、幼い時分に出会ったギャロップレーサーというゲーム。
これは競馬のレースゲームと言えば分りやすいでしょうか。馬主になって調教やら血統やらというのではなく、自分で馬を操るのです。
おそらく私が最初に見たのはギャロップレーサー2だったと思います。
プレイステーションの起動音に怯え、怖い雰囲気に怯え、テクノ調のBGMに怯えていた私ですが、馬を走らせるというゲーム性を目の当たりにし思わず画面に見入っていました。
怖がってるくせに興味津々だったので、ちょっと遊ばせてもらうことに。
ボタンを押す。
鞭をペシン!
馬が走る!!
はやい!!!
面白い!!!
操作自体はかなり簡単。競馬はテレビで見れるわけで、最低限のことさえ分かればあとは感覚でなんとかなっちゃう
小学生にも満たない子どもが競馬のなんたるかを知らずして「メジロマックイーンってつよいねー」とかいいはじめるのに時間はかかりませんでした。
そして1999年にギャロップレーサー3が発売。
2000年にギャロップレーサー2000が発売。
この二作はとにかく遊び倒しました。今でも遊んでいます。
G1ジョッキーのコーエーとギャロップレーサーのテクモがコーエーテクモとなりチャンピオンジョッキーというゲームが生まれましたが
私と同じようにPS時代のギャロップレーサー、特に3や2000が一番だと感じているおじさま、いると思います。
もちろんゲームとしても面白いから今でも遊べるのですが
私の場合、競馬を知らない状態でただゲームを楽しんだ時期・競馬をある程度知った上で楽しんだ時期の二つがあるのでとても思い入れがあるのです。
例えばタイキブリザードっていう馬が不思議に強くて、ネットで見てみるとやっぱりツッコミの声があってやっぱりみんな思ってたんだーとか、
ネットに触れるまで、ナルビークラウンやプリンスオブターフという馬名を信じていたとか。いい思い出です。
……とまあ申し訳程度のゲーム話はここまで。ゲームについての濃い話はまた別の機会にとっておきましょう。
しかしゲームから派生して競馬の話をしようにも、上述したように二十一世紀の馬が登録されていないゲームを好んでやりつづけてきたおかげでそれ以前の競走馬の方が思い入れも強いので、最近の競走馬について多く語れそうにありません。
かといって私が生まれる前の競走馬に関してはリアルタイムでレースを見られるわけもなく。
この文章を書いている時点でまだ二十歳に満たないので、馬券で儲けたエピソードとかもなければ、今年のダービーはどうだったかとか今週はどの馬をーなんていう話もありません。
二十歳と言えば、この文章が掲載される日が編集者の誕生日だそうです。
となれば、私も今年で二十歳。
そして、私が一番好きな牝馬、エアグルーヴも今年の4月に二十歳を迎えました。
女帝と名高い名牝、エアグルーヴ。
そう、私とエアグルーヴは同い年なのです。
「そうか、私もエアグルーヴも今年で二十歳なんだなぁ」
そう思った矢先、死去のニュースが目に入りました。
私が一番好きだった牝馬。エアグルーヴ。
誤解を恐れずに言えば、ゲームがエアグルーヴを好きになるきっかけのひとつだったことは疑いようもない事実です。
私は強いキャラが好きです。強い人が好きです。であれば、やっぱり強い馬も好きです。
ゲームのエアグルーヴは、それはそれは強かったです。エアグルーヴのせいで幼い私は牝馬と牡馬なにが違うのか全く分かりませんでした。
そして牡馬と牝馬の違いを知れば、「牝馬の方が出場できるレースがおおいから牝馬のほうが使えるじゃん!牝馬最高!」
……ってなるのがゲーマーの性といいますか単なるゲーム脳といいますか。
しかし現実ではそんな考えそう通用しません。牝馬が牡馬に勝つなんてなかなか考えられない。
でも現実のエアグルーヴはそんなゲーム脳を現実だと錯覚させるくらい強かった。
それがどれほどすごいことなのか、分かっていただけるでしょうか。
しかし実際は順序が逆で、幼い私に牝馬至上主義を植え付けたのはエアグルーヴに他なりません。ゲーム脳とか関係なく「えあぐるーぶすごーい」という感覚。
かっこよかった。惚れた。
もちろん大舞台で牝馬が牡馬に勝つなんて並大抵のことじゃありません。
でも、私にとってエアグルーヴという存在は大きすぎました。
舞台が大きければ大きいほど、そういう強い牝馬を求めてしまうのです。
ディープインパクトが世間をにぎわす中、私はエアグルーヴで凱旋門賞を獲っていました。
そんなはじまりから約10年が経ち、興奮が再びやってきました。
日本牝馬時代の幕開けです。
ウオッカとダイワスカーレットが牡馬を置き去り競い合い、またブエナビスタが活躍したこの数年間は私を熱狂させました。
性差を越え勝利を掴む姿に見惚れていたのかもしれません。
野郎どもを蹴散らし強かに競い合う姿に酔いしれていたのかもしれません。
その姿にエアグルーヴの面影を探していたのかもしれません。
世間の注目は最強牝馬たちから、オルフェーヴルへ。三冠達成、凱旋門賞での激走、ドリームジャーニーやゴールドシップの活躍。父ステイゴールドと母父メジロマックイーンによるステマ配合伝説が幕を開けようとしています。
牝馬時代が終わり、そしてエアグルーヴは……。
── 一番好きな牡馬も亡くなり、一番好きな牝馬も亡くなり、生きる時間が違うとわかっていながら、まだ馬券も買えない年齢だというのに郷愁の念というか、老いのようななにかを感じずにはいられません。
ちなみに一番好きな牡馬はサクラバクシンオーです。11年に死去しましたね。
サクラバクシンオーは私が生まれた翌年末に引退しているのでさすがにリアルタイムで見た記憶はありませんが、その存在感ある名前に惹かれ、スプリンターであると言うことを知り、短距離なのに差を広げていくその段違いのスピードとパワーに惹かれました。
私は距離で言えば短距離レースが好きなので、最近ではカレンチャンやロードカナロアのレースは見ていて爽快です。
その圧倒的強さに、やはりサクラバクシンオーの面影を探してしまう私がいます。
余談ですが、サクラバクシンオー、エアグルーヴ共に去年のCM「The WINNER」で取り上げられていましたね。
スプリンターズステークス連覇、引退レコード。オークス親子制覇、牡馬を圧倒。
そういった伝説を、競馬ファンとしてではなく幼少の頃の思い出として得られたことを喜ばしく思います。
女帝と呼ばれるエアグルーヴ。したたかでかっこいい同級生。
初めて見たときからいままでずっと私が好きな牝馬。
その“雄姿”をずっと忘れない。
そして思い出はいつまでもゲームとともに。
あとがき
編集者である小馬谷氏の二十歳の誕生日祝いとして執筆したのが、競馬ゲームであるギャロップレーサーシリーズの記事でした。そういった側面もあるため、筆者のパーソナルな部分も交えて書かれているのが特徴的といえるかもしれません。
競馬でゲームというと、昔はダビスタを中心とした競馬ゲームのブームがありましたが、今は「ウマ娘」の存在を無視することはできないでしょう。メディアミックスコンテンツのためゲームに限った話ではありませんが、ウマ娘の登場によって競馬や競馬を題材にしたコンテンツがかつてない勢いで広まり浸透している印象です。
記事ではエアグルーヴをはじめとする様々な名馬が取り上げられていますが、ギャロップレーサー特有の仮名馬※も含めると、そのほとんどが現在ウマ娘として登場していることが分かります。それだけ多くの名馬がウマ娘に登場しているという事実、そしてこの記事を投稿した当時よりも現在のほうがずっと名馬たちの知名度が増していることがうかがえます。
筆者が好きだった名馬サクラバクシンオーやエアグルーヴと、こうして違った形で再会できるとは執筆当時思いもしませんでしたが、今振り返ると感慨深いものがありますね。