見出し画像

使えるキャリア理論 その4 経験学習モデル

管理職でありキャリアコンサルタントである私が独断と偏見で選んだ使えるキャリア理論(の一部分の美味しいところ)をご紹介します。

経験学習モデルとは

経験学習モデルとは、その名の通り、人の学習は経験によってなされることを提唱した理論です。
単なる経験ではなく、本人にとって挑戦・ストレッチをした経験を指します。そして、そこで起こった出来事・感情を内省することによって自分の能力を高めることができるという考え方です。

経験学習モデルの構成要素は円環的になっており、以下の図のように表現されます。

人材開発・組織開発コンサルティング 中原淳 著 より

なぜ「学習」に着目するのか?

この「使えるキャリア理論」シリーズは、その名の通り、キャリアに関する理論の美味しいところを紹介するものです。自分のキャリアを考えたり、人のキャリア発達を支援したりすることに役立ててもらいたいという思いで書いています。

「キャリアと学習となんの関係があるのか?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
キャリア理論にはいくつかの系譜があります。その中の一つに、職業選択・キャリア選択のプロセスに着目した系譜があります。

職業選択またはキャリア選択は広い概念で、狭義には就職や転職、広義には業務における目標設定や達成のための努力が当てはまります。

人のキャリア選択は、個人の持っている価値観・自己認識と環境とが相互に作用されることによって行われると考えるのが、この系譜の考え方です。

様々な人間関係や経験から情報を得て、興味・関心を広げたり深めたりしながら、価値観を変えていき、それに伴って能力やスキルを獲得する。その結果、キャリア上の目標設定をしたり、その目標に向かって行動をしていきます。

上記の太文字にした部分が「学習」にあたり、キャリア形成において重要な観点です。

経験から意味合いを紡ぎ出す

経験学習モデルにおいて、特に重要なプロセスが、内省的観察を経て抽象的概念化に至るプロセスです。
自分にとってストレッチを含む困難な目標達成に取り組んだ経験を振り返り、自分にとって汎用的・応用可能な学びを得ることがこのプロセスでの狙いです。

立教大学の中原教授は、このプロセスを指して「マイセオリー化」とおっしゃっています。

経験から得た直接的な学びだけではなく、他に応用可能な形で抽象度を一段高めた学びを得られることを狙います。

経験学習モデルは1on1の手順そのもの

抽象的概念化を得るためには、その手前にある内省的観察が重要です。内省的がキーワードです。

  • 出来事そのものを振り返るわけではない

  • 自分を責めるような反省をするわけでもない

  • → 自分の内面を振り返る

このプロセスは、訓練を積めば自分ひとりでできるようになりますが、できるようになるまでは誰かに問いかけてもらう方が上手にできます。
人間関係がいいことが前提ですが、上司がその役割をできるのが理想的です。仕事のことを分かっているので、出来事そのものを説明する必要はなく、ダイレクトに内省モードに入ることができます。

上司と部下とがお互いに理解できていて、かつ双方が結果に対してポジティブに思っている出来事を取り上げて、内省的観察→抽象的概念化を一緒に行い、今後の仕事やキャリアにおいて学んだことを積極的に使う行動について話し合い合意を行い、経験学習モデルのサイクルを回します。

このサイクルは、1on1面談の流れそのものになります。
もし、1on1が上手にできていないと自覚しているマネージャや、1on1が何をする場なのかピンときていない部下の立場の人は、一度この経験学習モデルを共通言語として1on1を仕切り直してみてはいかがでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!