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プロアクティブ(主体的な役割形成)行動を起こせる人を増やしたい
はじめに(いつも書いてること)
このnoteでは、「仕事でも私生活でも心をラクにする(ワークライフハック)」をテーマに文章を書いています。
※「ラクする」というのは、「心身に苦痛などがなく快く安らかに過ごす」という意味で使っている言葉であり、シンプルに「サボる」という意味ではありません。
今回の内容
僕は、論文を読むのが好きです。
論文には、一般論ではなく、特定のケースでの分析や結論が出されるので、具体的な事例と自分の中での仮説をすり合わせることができるので、「論文を読む」ということを大切にしています。
論文を書いてる人が、なんでその論文を書こうと思ったのか、論文を書く中でどんなことが明らかになっていったのか・・・そういうことを知るのが非常に面白いと感じるからです。
ちなみに、オススメの論文の読み方は、「『はじめに』と『おわりに』だけいいから読む」というものです。
これは、僕が研究室に所属していた時に助教授に教えてもらった読み方で、「その2つには論文で特に伝えたいことが集約されているから」という理由です。
論文を読むとなると、「難しい」と避けがちな人がいますが、「まずは『はじめに』と『おわりに』を読む」ということをやってみると、意外とすんなりと読めると思います。
このnoteで紹介するのは、こちらの論文。
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◆発表年月:2019年12月
◆タイトル:社会貢献研修が新卒入社社員に促す組織社会化-多様な人々への傾聴実践が、配属後の主体的な役割形成行動に及ぼす影響-
◆概要:新卒入社社員が社会貢献活動を進める経験が、配属後の仕事におけるプロアクティブ(主体的な役割形成)行動に及ぼす影響をプログラム前・後・配属後の3時点調査で検証しました。人との対話を通じた役割形成の成功体験が、プロアクティブなマインドセットを高め、実践を促す可能性が示唆されました。
タイトルが非常に興味深い・・・「社会貢献研修が新卒社員の配属後の主体的な役割行動を生み出すかどうか?」という仮説のもので研究を進め、「新卒入社社員が社会貢献活動を進める中で、人との対話を通じた役割形成の成功体験がプロアクティブなマインドセットを高めた(一定の条件下)」という結論を得たようです。
社会に対して貢献する活動が、社会に対して主体的な役割を形成することを手助けしたということで、「誰かや何かに貢献したい」と思う人としての本能みたいなものを刺激して、それによってプロアクティブ行動を促すというのは非常に良い方法だなと思いました(良心に訴えかけるみたいな感じ)。
約8年間、新卒採用や研修領域に携わっていますが、「新卒入社社員にプロアクティブ(主体的な役割形成)行動をどのように促していくのか?」というのは、毎年毎年考えることです。
「そもそも、プロアクティブな姿勢を持った学生を採用すればいい」という視点もありますが、その見極めは非常に難しいです(学生時代に主体的な行動をやってきたとしても、環境や立場が変わった時に同じような行動を起こせるとは限らない)。
なので、人材育成プログラムを通してプロアクティブ行動を起こせるような人を生み出すことができるようになれば、採用の幅が広がると思ってます。
この論文の『はじめに』と『おわりに』を以下に転記します。
※今回の論文は『要旨』があるので、ここに『はじめに』と『おわりに』の内容が含まれています。こういう場合は、『要旨』だけを読んでも大丈夫。
※『はじめに』という書き方ではなくて『目的』になっていますが、『この論文はこういう目的・背景・仮説で書いています』ということが書かれているので、とても大切な部分です。
1. 目的
本研究の目的は、役割は自ら形成するものであるというマインドセットと、役割期待を調整したりフィードバックを得たりする際に用いる傾聴のスキルが、配属後の職場におけるプロアクティブ(主体的な役割取得)行動を促進するかを検証することである。
ある企業の新人研修の一環として行われた社会貢献プログラムに着目した。当該プログラムでは、新卒入社社員が、福祉施設や震災被災地に赴き、不慣れな環境で明確な役割や成果の定義が見えない中、施設スタッフや先輩社員の助けを借りながら、多様なニーズや背景をもつ人々への傾聴を通じて活動を進めていく。プログラムにおける、あいまいな役割設定と、多様な人々との傾聴経験が、変革的役割志向を高め、配属後のプロアクティブ行動を促進したかを検証した。
5.終わりに
新卒新人が配属前に社会貢献活動に参加するプログラムにおける、傾聴の実践や、組織目的や自己の役割イメージ、自己の感情的側面の理解、多様性の受容といった学びを通じて、役割は自ら形成するものであるというマインドセットの醸成と、役割期待を調整したりフィードバックを得たりする際に用いる傾聴の成功体験が、配属後の職場におけるプロアクティブ(主体的な役割取得)行動を促進することが明らかになった。配属後の初期に、保守的役割志向を下げずに変革的役割志向が高まるといった利点は、主体的な役割形成行動を起こしてほしいと願う企業の施策の参考になるだろう。単項目の変数が複数あるなど測定の妥当性と信頼性が十分でないこと、3時点の3か年分というサンプルの豊かさを十分に生かす分析方法にたどり着けていないことなど、本研究には課題も多い。
うちでも同じような仮説を立てて、プロアクティブ行動を起こせるような人を生み出せるような育成プログラムを運用しています。
なので、この論文の『はじめに』と『おわりに』に書かせていることには非常に共感できますし、この仮説と結論(限られた条件下ですが)に対しても「そうなるだろうな」という感覚を持てます。
ただ、人のキャリアに伴走していて思うのは、「これをすればこうなる」という正解に近い手段があったとしても、全ての人には当てはまるわけではないということ(伴走の仕方によって同じ手段を取ったとしても結果が変わることもある)。
仮説を立てて、検証して、仮説を立てて、検証して・・・この繰り返しをしていくしかないです。
組織としては、「人材育成プログラムで全ての人を変えることができる」と思わずに、「このプログラムを経てこのような変化が起きない人は、採用すべき人ではなかった」という割り切りを持つことも大切です。
僕自身も今、組織の中で人材育成プログラムを設計して運用している立場でもあるので、「仮説を立てて検証して」ということを繰り返していきます。
簡単な論文の読み方を紹介しつつ、プロアクティブ(主体的な役割取得)行動を促進する為には何が必要かという論文を紹介しました。
プロアクティブ(主体的な役割取得)というのは、個人が自身の人生を豊かにしていく上で非常に重要な要素だと思っています。
自分の人生を自分でコントロールするのか、常に誰かに与えられた役割に従いながら生きるのか・・・どっちがいいですか?
「前者がいいけど後者にならざるを得ない」という人が多い感覚がありますが(「どうせ無理」と思い込んでいるから後者のままで生きている人が多い)、ということは、「前者がいい」と思っている人が多いと思うんです。
であれば、「どうすれば前者のような生き方ができるようになるか?」を考えて、「今は後者の生き方になっているけど前者を目指す」というスタンスを持てばいいですよね。
理想を掲げて、その理想と現実とのギャップを認識して、ギャップを埋める日々を過ごす・・・このような姿勢を持てるようになるだけで、人の人生は変わっていきます。
なので、僕が設計する人材育成プログラムは、「自分で自分の人生をコントロールできるようになる」という方針のもとで、「そのためには自分の心を自分でコントロールできるようになる」という前提を掲げています。
全ては、個人の心がラクになることを目指して。
より詳しい論文として別リンクも見つけたので、以下に紹介しておきます。
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感謝
今回も、読んでいただきありがとうございました。
他のnoteも読んでいただけると嬉しいです。