描写の委譲(Description Delegation)
以前、「アートとしての仕事術」についてお伝えしました。
当サイトではPractical Conceptual Art(PCA)と呼んでおり、作品はAre.naで公開しています。実用的な概念を、少量のテキストのみ表現するアートです。その名のとおり、コンセプチュアル・アートの一種になります(なると思っています)。
本記事では、PCAが採用する技法を一つ紹介します。
描写の委譲
描写の委譲(Description Delegation)とは、本来作品側で描写するべき情報を描写せず、読者の想像と思考にゆだねてもらうことを指します。
これは単に「小説を読んで想像してもらう」「絵を見て想像してもらう」といった意味ではありません。小説も絵も描写はしています。描写とは、たとえば以下を指します。
絵や音による表現(非言語情報)
絵画、イラスト、音楽、写真や動画
文章による表現(言語的な詳細)
記事、小説、小論、名言や引用などフレーズ
描写の委譲とは、非言語情報と言語的な詳細の両方を描写しないことです。描けること、いや書けることは非常に限られていて、言語的な概要だけです。
PCAと描写の委譲
PCAは、描写の委譲を採用しています。
タイトルと要素(3要素で揃えることが多いです)の列挙しかありません。これだけで作品が成立しています。
作品をいくつか見てみましょう。
建前という概念を表現しています。ハイコンテキスト、階層性、同質性と3つのキーワードが並んでいます。H- 始まりで統一されている美しさがまずありますね。
この3つの関係性は何でしょうか。皆さんも考えてみてください。この思考こそがPCAの醍醐味です。
エンゲージメントと題して、家族とミッションとビジョン、の3つの要素が並んでいます。これはどういう意味でしょうか。
シングリストと名付けられています。Single + ist でしょうか。
並んでいる要素は Minimalist、Simplist、Singlist となっており、わかる人が見ればミニマリスト → シンプリスト → シングリストとの変遷が読み取れます。つまり、この作品は、シングリストという第三潮流を提案しています。
いかがでしょうか。PCAの世界をお楽しみいただけたでしょうか。
作品として描写はせず、読者の想像と思考にゆだねています。しかし、それができるだけの新規性が凝縮されています。これがPCAです。
※PCAとしては、基本的に新規性のある概念をつくります。「建前」は言うまでもなく古くから知られる概念ですが、説明の便宜のためにつくりました。
実は、作品は当サイトの記事からつくっています。
以前、当サイトの仕事術は数千文字を数時間かけて読むものとお伝えしたこともありますが、PCAは別の読み方を提案します。仕事術の本質をぎゅっと凝縮して、アートとして味わえるようにしたものなのです。