ドウセンス ~記事に生地を見出すセンス~
書籍や記事など「まとまった情報」の読み方は4種類あると思います。ドウ(Dough)もその一つです。
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どの読み方にもスキルや適性があり、人によって得手不得手や向き不向きが変わります。あけすけに言えば、異なるセンスが要求されます。
それぞれのセンス、特にドウセンスを整理します。
ドウ以外
1: ストーリーセンス
物語を読むセンス
持つ人の例:
読書家
ライターやブロガー
会話や映画が好きな人
センスの例:
人への興味
脳内で音声やイメージや動画を再生する能力
文脈と機微を瞬発的に理解できる能力
最も多くの人が備えるセンスであり、健常者のセンスと言ってもいいかもしれません。何にハマるかは人によって異なり、本や映画だったり、ゲームだったり、人と話すことだったりします。エンタメと非言語情報を好みます。
逆を言えば、豊富な情報を、順を追って浴びていかないと読み進められません。勉強や研究やものづくりには(やろうと思えばできるが好んで続けるセンスではないという意味で)向いてないタイプです。
2: タイプセンス
活字を読むセンス
持つ人の例:
活字中毒
センスの例
活字の造形自体への興味
活字から意味やイメージをつくる作業にハマる感性
ジャンルを選ばない雑食
レアなセンスであり、どちらかといえば強迫観念や依存症の側に位置するものです。活字そのものにとらわれており、本だろうとラベルだろうと広告だろうと、活字であれば何でも読みます。
非言語情報への依存はかんたんですが、活字への依存はかんたんではありません。依存できるほど処理能力が高いと言え、このタイプは聡明で博識であることが多いです。ストーリーセンスを備えていることも珍しくありません。
3: ヒントセンス
役に立つ情報(ヒント)を読むセンス
持つ人の例:
経営者
ビジネス書を好むビジネスパーソン
センスの例:
知識への興味
勉強の要領
意思決定能力
ビジネスと親和性の高いセンスであり、読むものを情報源と捉えて、そのとき必要なヒントを探して拾い上げる読み方をします。速さを求める場合は速読と呼ぶこともあります。
ヒントセンスの程度を最も司るのは意思決定の能力でしょう。要は情報を高速に取捨選択していく力と、そもそも何を基準に良し悪しを判断するのかという軸の設定が要求されます。
完全な理解や丁寧な向き合い方も想定していない(※1)ので「人間」から外れがちです。このたがを外すためには、通常、ビジネスとしての強い文脈が必要となります。あるいは、ストーリーセンスを持たない者も、このセンスに頼りがちです。
※1 必要に応じて何度も読み直したり精読したりすることはあります。
ドウセンスとは
ドウについて
ドウ(Dough)とはパン生地を意味する言葉で、「こねたりふくらませたりできるもの」を指します。
情報をストーリーやヒントとして尊重せず、好き勝手にこねたりふくらませたりします。「だしにする」と表現してもいいでしょう。
ドウの例
たとえば🐶さんがTというテーマで、A,B,Cと3つの主張をしているとします。
ストーリーセンスなら、🐶さんの語り口や経験といったものを見聞きして物語を浮かべるでしょう。🐶さんが出していない場合は、会話などで引き出すかもしれません。
ヒントセンスであれば、役に立つならちゃんと読むし、立たないのならスルーするでしょう。あるいは「この辺でいいか」とBまで読んだところでアクションに移ることもあります。
いずれにせよ、🐶さんの主張自体はちゃんと読んで、把握しようとします。ドウセンスはそうではなく、最初からちゃんと読むことはしません。
※結果的にちゃんと読むことはあります。
たとえば、
Bで使われてる、ここのフレーズが美しいので自分も使いたい。ちょっと気に入らないので、もうちょっと美しくしたい
私が🐶さんだとしたら、テーマTに対してどんな主張をつくるだろうか。暇だし、ちょっと遊んでみるか
🐶さんがなんか色々ストーリー語ってるけど、興味ないのでスルーして、結論っぽいところだけ拾ってそこから要約をつくってみるか。あ、主張Cも何言ってるかわからないからスルーでいいか
のような、自分勝手な読み方をします。
4: ドウセンス
ドウを読むセンス
持つ人の例:
造語を好むクリエイター
概念や本質にこだわるクリエイター
センスの例:
物語や原義や文脈をスルーできる感性
言語化やネーミングの能力
自分の発想や感性を第一と信じる精神
ドウセンスは、タイプセンスに次ぐレアなセンスです。
あえて言うならば、日常的に発想法をしているようなものです。情報は「発散されている事柄」であり、使うも使わないも自由ですし、使うにしても、どう使うかも自由だととらえます。
目的は単純で、「自分なりに綺麗な何かを出したい」です。ニーズや文脈よりも自分の納得感が第一であり、そのためならば手段を選びません。実際、ドウという形で手段を選ばずこねたりふくらませたりします。
仕事術2.0ではヒントとドウにフォーカス
ドウセンスの解説は以上です。ここからは仕事術2.0の話をします。
仕事術2.0では、ヒントセンスとドウセンスを意識しています。またプロフィールでも述べているとおり、ストーリーは気にかけていません。
つまり、
当サイトで提示された仕事術を、ヒントやドウとして読んでもらう
ヒントやドウを用いて、あなたなりの仕事術をつくってもらう
ことを意図しています。仕事術2.0を通じて、ヒントセンスとドウセンスをインストールしていただきたいのです。
仕事術2.0はVUCARD(VUCA + Remote + Diversity)に対抗するための、新たな仕事術です。その核心は個性の化学反応を起こし続けることであり、従来の文化では到底足りません。
各自がもっとたくさんのヒントを出して、取り入れて、ドウも膨らませて、あるいは受け入れるからこそ、化学反応を持続できます。先が読めず、変化が激しく、多様も尊重せねばならない現代だからこそ必要と考えます。