現象化(Phenomenize)
ビジネスにおいて自然に起こるものだ、つまりは「現象なのだ」と捉えることを現象化(Phenomenize)と呼びます。
例
「気まずさ」を現象化してみました。エンバラスメントと名付けています。
エンバラスメントは現象であり、誰が悪いというものではありません。現象なので「雨が降りましたね」と同レベルで制御不可能なものです。起きるときは起きます。
それでも気まずさが起きていることには言及できますし、受容や軽減や予防といった対策も取れます。
他の例は?
リーケージ(leakage)
普段忘れない人でも、たまには or 稀には忘れてしまうことを指します。
leakageは「漏れる」の意です。特に容器に小さな穴が空いていて、少しずつ漏れていくニュアンスがあります。穴が空いているので、時間が経てば物理的にある程度は漏れます。
忘れたときはその人の問題として扱われがちですが、人間なので忘れることはあります。ビジーなど状況次第では忘れやすくもなります。ですので、自然現象のごとく現象なのだと捉えてしまうわけです。すると、
「すいません、リーケージしてました」
のような言及ができて、不毛な問題化――その人を責めることもなくなります。リーケージを防ぐためには、といった思考にリソースを振りやすくもなります。
MP(魔力)
認知資源を指します。すでに比喩的に用いられている言葉だと思います。
認知資源(または注意資源)とは、判断を行う際に消費するリソースだと考えられているものです。これを使い切ると思考も判断もできなくなってしまいます。
スマホでも消費しますし、睡眠しないと回復しませんので、生産的に過ごしたいなら日中いかに節約するかが鍵となります。同じ服を着るといったライフハックはよく知られています。
さて、認知資源を現象化してMPだと捉えると、「HPのように消費するものである」「宿屋で寝ないと(睡眠しないと)回復しないものである」と理解しやすくなります。
ゲームでは回復アイテムや回復魔法がありますが、認知資源を回復する手段はありません。これも「宿屋以外に回復手段のない厳しめのゲーム」と捉えることで直感的に理解できるでしょう。
「今日はもうMPがない」といった表現もできるように(また通じるように)なります。
Q&A
よくある議論をQ&A形式で整理します。
Q: 心理現象との違いは?
Ans: 心理現象は研究によって明らかにされたものです。
一方、現象化は明らかにされているとは限りません。具体的には、以下のパターンがあると思います。
明らかにされていないが、誰もが薄々感じているもの
明らかにされているが、その心理学的な名称がわからないもの
もう一つ、「明らかにされていないし、誰もが感じているわけでもないもの」もありますが、現象化しても通じづらいでしょう。
Q: 現象化とは「まるで現象であるかのような名前をつけてクッションにする」ことと考えて良い?
Ans: はい。
冒頭で挙げたエンバラスメント(気まずさ)はまさにそうで、一見するとどちらか or 双方のコミュニケーション上の問題と捉えがちな気まずさを、問題ではなくただの現象と捉えます。
そうすることで「あなたが悪い」「私が悪い」と考えることを回避できます。ただの現象ですよね、雨や強風と同じようなものですよねと捉えられるようになります。