短時間正社員は悪くないが、もっと上手くできる
仕事術2.0の力をお見せするために、短時間正社員という制度を改善してみます。
前提: 短時間正社員とは
1週間の所定労働時間が短い正社員を指します。
通常、正社員は週40時間(8時間 x 平日5日)が標準的ですが、これよりも短くて済みます。たとえば週16時間で済みます。
ただし、給料はその分少なくなります。上記の場合、もらえる給料は40%(2/5)です。
その他詳しくは厚生労働省の資料を見てください。
改善案
続いて、この制度を改善してみましょう。
最初にサマリー
やりたいことに応じて、3つに分けます。
1: メンバーシップの緩和
非正規雇用者を正社員に引き上げるための制度
2: 時短勤務の多様性
正社員本人が自らの労働時間を減らすための制度
3: 勤務2.0
社員の生産性と満足度を上げるために、そもそも労働時間の下限や標準を定めない制度
次に、各々について詳しく見ていきます。
1: メンバーシップの緩和
Ans: 非正規雇用者を正社員に引き上げるための制度です。
短時間で働いている非正規雇用者に、正社員の給与水準、福利厚生、権限を付与できるようにします。
短時間正社員制度が本来想定しているのは非正規雇用者だけのはずです。
しかし、今の制度だと、正社員の労働時間を減らす手段としても使えてしまいます。会社に有利であり、望ましくありません。
※マニュアル上は「短時間正社員になるための手続きについては、個々の社員に適用される就業規則に規定しておくことが必要」とありますが、早い話、「会社の都合で正社員を短時間正社員にすることができる」的な規定を書くだけで、どうとでもできてしまいます。
公平に運用されるなら良いですが、そうはならないでしょう。たとえば、高給をもらっている上層部を短時間正社員にする(もちろん給料は減ります)ことはしないでしょう。不公平ですね。
もちろん、こんなことで会社が発展するはずもなく、お金のために無駄にだらだら勤務する人、会議する人が増えるだけです。
と、制度として存在していると悪用されやすいので、短時間正社員制度は、本来の狙いに沿うなら「非正規雇用者のみ」を対象にするべきです。
2: 時短勤務の多様性
Ans: 正社員本人が自らの労働時間を減らすための制度です。
すでに時短やフレックスやリモートなど、働き方の選択肢は色々ありますが、どれも典型的な多様性のみを想定しがちです。
融通が利かないと言わざるをえません。ですので、有給のように理由なしに誰でも使えるようにしたいところです。
というと「それで仕事が成立するわけがない」とツッコミが飛んできますが、違います。それでも成立するように考える、努力することが大事なのです。
時代はVUCARDです。
経営や仕事の都合で、社員を搾取していい理由にはならないのです。アップデートしてください。「時短勤務を誰でも使えるようにする」は、とっかかりとしてはわかりやすいと思います。
3: 勤務2.0
Ans: 社員の生産性と満足度を上げるために、そもそも労働時間の下限や標準を定めない制度です。
労働時間に強い制約をかけている今の勤務のあり方を勤務1.0と呼びます。現代にはふさわしくありません。どう変えられるかという点を以下に整理します。
週40時間(8時間 x 5日)は標準的だが、法的にはそんな制約はない
標準労働時間が存在すると、同調の強い日本では事実上の強要になりがち → 制度から「標準」の存在をなくす必要がある
そもそも下限(所定労働時間)の設定自体が非本質的 → なくしてしまえばいい
とはいえ長時間働くリスクはモニタリングしないといけないので、従来の制度は引き続き使う + 他にも必要ならモニタリングする
つまり上限だけはモニタリングしておいて、労働時間で縛ること自体をやめてしまえば良いということです。
これを実現するための考え方がASPモデルです。
ASPモデルでは、あり方を以下の3種類に分けます。
勤務
1: アクティブ(Active)
2: スタンバイ(Standby)
3: プライベート(Private)
プライベートとは従来どおり業務時間外を指すだけなので割愛します。重要なのは勤務というあり方をアクティブとスタンバイの二つに分けていることです。
アクティブとは、コアタイムみたいなもので必要なら時間や場所も縛るものです
スタンバイとは、時間や場所を縛られず好き勝手に過ごすもの、しかし仕事は適宜行うものです
アクティブは必要に応じて設定すればよく、基本はスタンバイで良済ませます。スタンバイであっても「勤務」であることの管理は必要ですので、スタンバイを出入りするたびに勤務開始・終了の報告をします。
つまり、従来の勤務1.0は、以下に等しいものでした。
アクティブが100%
なので出社や会議などの拘束も事実上強制される
加えて週40時間など、謎の所定労働時間がある
これがASPモデルに基づく勤務2.0では、以下のようになります。
アクティブとスタンバイが使える
どう使うかは各自あるいはチームで調整する
所定労働時間はない
必要に応じてアクティブになればよく、それ以外の仕事はスタンバイで各自済ませればいいのです。
例:
「今日は10:00~20:00くらいでスタンバイする」としたら、これは10~20時で勤務はしてるけど、過ごし方は自由という意味です。中抜けや休憩も自由ですし、スタンバイの人に対して会議に参加させるといったこともできません。
ただし、勤務中ではありますので、基本的には仕事はしますし、コミュニケーションにも反応します。
また、勤務報告もしているので勤務時間のデータも取れます。つまりスタンバイによる勤務時間も勤務時間としてカウントします。これなら法的な制約との齟齬も出ません。
もしスタンバイでは済まない、密な拘束が必要であれば、それはその分だけアクティブにすればいいのです。
従来の勤務1.0は、たとえるなら毎日なぜか8時間の長時間会議に参加させられているようなものです。
このおかしさを緩和するために、勤務2.0では「拘束されている」状態をアクティブと名付けて分離し、これよりも軽い「勤務はしているけど自由な状態」も併せて設けることで、融通を利かせます。
おわりに
当サイトでは、VUCAで多様な現代にも通用する、様々な仕事術(仕事のやり方や考え方)を開発しています。
その一例として、短時間正社員制度の改善案を開発してみました。いかがでしょうか。
無論、法や人事の目線で専門的に作り上げたわけではないので粗いですが、それでもやり方・考え方次第でどうとでもできることがおわかりいただけたかと思います。また、この案をたたき台にして議論することもできます。すでに、皆さんも言いたいことが思い浮かんでいるのではないでしょうか。
これが仕事術の力です。
もしよろしければ、当サイトを読み漁ってみてください。現代で悩む皆様の力になれるでしょう。