ワークスタイル・ダイバーシティ
働き方の多様性(WorkStyle Diversity)とは、働き方にも多様性を認めようという考え方です。
以下WSDと略します。
WSDのメリット
働きアリの法則を敗れることです。
まず、この現象は普遍的なもので、単一の理(ことわり)のもとでは、
順応できる者 : どっちつかずな者 : 順応できない者 = 2 : 6 : 2
くらいに分かれます。
3 : 4 : 3 や 1 : 8 : 1 でもいいです。順応の度合いをどこで敷くかが違うだけで、要は正規分布のようなあり方になります。
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「働き方」も例外ではない、という、ただそれだけの話です。
この現象を破るのはかんたんで、理を増やすだけです。
たとえば二つの理があると、分布も二つできて、重なることになるので、あり方はもう少し複雑になります。2 : 6 : 2 のような単純化はできなくなります。
Aさんは、理1では下位2割かもしれませんが、理2では上位2割かもしれません。理1しかなかった世界では、Aさんは下位2割ですが、理1と理2がある世界では違うでしょう。
働き方に話を戻すと、理というのは「働き方」のことですね。
通常、「働き方」は単一しか存在しません。リモートだのフレックスだの色々言われており、ある程度融通は利かせられますが、文化的にはまだまだ単一であることも多いです。
理由としては、文化的に単一が好まれる(和を重んじる日本もそうですね)からだったり、経営者や管理者として管理がしやすいからだったりします。
WSDにより、この「なぜか単一の働き方だけ使う」という縛りプレイから脱することができます。小難しく言えば、脱してもいいのだという新しいメンタルモデルを与えます。
用語
ワークスタイル・ダイバーシティ
WorkStyle Diversity、働き方の多様性。
WSDと略します。
ワークスタイル
一つの「働き方」を示す言葉です。
WSDでは、ワークスタイルをnつ共存させることを目指します。また、必要に応じて新しくつくったり、既存のものを修正したりといった視座にも立ちます。
ワークスタイルの観点例
よく知られているワークスタイルの「観点」を挙げ、各観点におけるワークスタイルを複数紹介します。
たとえば「出社」という観点では、ワークスタイルとして「出社」と「リモート」がありますよね。
本記事では、すでに定着しているワークスタイル(デフォルト)をと、デフォルト以外のワークスタイルを挙げることで、デフォルト以外もあるんだよという点をお伝えします。あるいは、デフォルトがn個存在することを言語化します。
また、デフォルトには★をつけます。
同期性
同期的コミュニケーション★
非同期的コミュニケーション
コミュニケーションはお互いがお互いを拘束(専有)――つまりは同期的に行うのが当たり前ですが、そうではない非同期的なあり方もよく知られています。
といっても、メールやチャットなどはすでに知られていますが、それでもデフォルトを置き換えるには至っていません。むしろ2024年現在では、出社に回帰する流れも増えているようです。
これは単に非同期的なやり方を知らないだけです。現代ではすでに技術と方法が出揃っており、デスクワーク程度であれば、フルリモートやフルフレックスくらい成立させられます。
やり方を知らないから、いつまでたっても原始的に出社し、対面して、同期的にコミュニケーションしているのです。
※ちなみにリモートであってもリモート会議ばかりしているのは同じことです。
非同期については、当サイトでも重点的に解説しています。
管理・計画
管理する、計画する★
自律する、探索する
仕事と言えば管理ありき、計画ありきを想像しがちですが、これもワークスタイルの一種でしかありません。
管理しないワークスタイルはあります。組織パラダイムとしてティール組織が知られています。
計画しないワークスタイルも色々とあります。
いわゆる「アジャイル」は、ビジネスでも応用され始めており、当サイトでも本質を整理しました。
計画無しで進めていく「エクスプロラトリ」もあります。
当サイトでは、このあたりのあり方を整理するためにマトリックスを組んだりもしています。
タスク
マルチタスク★
シングルタスク
仕事は同時に色んなことを抱え込みがちです。マルチタスク的ですね。それゆえ要領が良くて器用な者が幅を利かせる世界になりがちです。これができない者は無能扱いされます。
一方で、タスクに関するワークスタイルはマルチタスクだけではありません。
すでにクリエイターなど、集中して深く取り組む世界では「一つの仕事に集中すること」は当たり前ですし、そのために必要な余裕や内省といったものも改めて注目されています。
当サイトでも取り上げています。
難しいのは、クリエイターのような世界であってもマルチタスクが幅を利かせがちであることです。
特にプロと呼ばれる人達は、その実力ゆえに、本来ならシングルタスク的にこなさなければ歯が立たないようなことであっても、マルチタスクの一環でささっと処理してしまいます。もちろん、それはプロだからであって、誰にでもできる芸当ではありません。
そして、そこを左右するファクターは知識やスキルではない(だけではない)のです。当サイトでは「性能」という言語化をしました。
マルチタスクが許されるのは高性能な人だけです。そうじゃない場合は、シングルタスクも重要です。
また、高性能な人であっても、シングルタスクを覚えれば、より良い成果を出せます。
忙しさ
ビジーパラダイム ★
スラックパラダイム
これほど豊かになった現代でも依然として「忙しさ」が正義になっています。たとえばサラリーマンの場合、以下のようなことでさえ困難です。
月残業ゼロで済ませる
毎日、業務時間中に、昼休憩とは別に2時間以上の空き時間をつくる
2日後に終わらせて提出する仕事が半日で終わったので、残り1.5日は堂々と遊んだり勉強したり改善や新規事業を考えたりする
この偏った世界観から脱するには、「余裕があってもいい」という新しいあり方を取り入れねばなりません。
当サイトでは前者をビジーパラダイム、後者をスラックパラダイムと呼んでおり、後者の啓蒙を重視しています。
スラック(Slack)とは余裕を意味する言葉です。
エンゲージメント
対面を増やせば増える ★
ファミリー
ビジョン
ミッション
従業員のエンゲージメントが増えれば、より会社にコミットしてくれて利益も上がる――というわけでエンゲージメント向上に取り組まれますが、大半は対面至上主義です。
対面を増やしてもエンゲージメントは増えません。以下記事でまとめていますが、
エンゲージメントを増やせるパターンはファミリーか、ミッションか、ビジョンのいずれかです。
対面機会はファミリーのやり方ですが、そもそも現代の会社組織においてファミリーを狙うこと自体が時代錯誤です(適していることもありますが稀です)。
WSDを実現する
ワークスタイルを知ったことで、実際に共存できねば意味がありません。共存のポイントを整理します。
橋渡しと歩み寄り
複数のワークスタイルを共存させるためのアプローチは2つです。
橋渡し
歩み寄り
橋渡しとは、あるスタイルW1の人達と別のスタイルW2の人達が直接絡むのではなく、間に仲介役を置いて連携するやり方です。
当サイトでは、限定的な文脈ですがアダプター戦略を紹介していたり、
イノベーションの文脈で出島戦略を紹介しています。
歩み寄りとは、W1の人達とW2の人達がお互いに「W1とW2の両方」をバランスよく取り入れるやり方です。
たとえば出社派とリモート派に対しては、ハイブリッドワークという解が知られていますよね。あるいは参加型の会議やイベントでは議事録、録画、その他資料を残しておいて、参加しなかった人があとで追えるようにします。
マイノリティ・デイ
橋渡しが可能ならそれで良いですが、正直限定的です。少なくとも専用の人材が要るという点でコストが高くつきます。
現実的には歩み寄りを主に使うことになると思います。
このとき押さえておきたいのが、デフォルトのワークスタイルに相当偏っていることが多いという実情です。偏りを言語化・定量化するのは難しいのですが、端的な目安があります。
マイノリティ・デイとは、デフォルトではないワークスタイルのみで一日過ごすことを指します。
たとえばコミュニケーションや議論の観点として「会議」がデフォルトのスタイルだとします(W1)。別のスタイルとして「会議しないスタイル」が考えられますよね(W2)。
WSDとしてW2が認められるかどうかは、「一切会議しない日」ができるかどうかが目安となります。できない場合、W1に偏っており、WSDがあるとは言えません。
当サイトではこれをミュートデイと呼んでいます。以下記事で取り上げました。
※一日誰とも一言も喋らない、なのでさらに難易度が高いのですが……
マイノリティ・デイができたら、マイノリティ・ウィーク――つまりは一週間も試してみましょう。
WSDとしては、一週間単位で当たり前に使える状態になれば、ひとまず及第点です。
手段を知る
そもそもワークスタイルを変えるという視座に立つのは難しいことです。
自身の固定観念を自覚して脱さないといけないですし、やり方や考え方を知らなければそもそもやりようがありません。
当サイトはまさに仕事術(仕事のやり方や考え方)を紹介しており、お役に立てると思いますので、ぜひ読み漁ってみてください。
メンタルモデルを知る
働き方に関する捉え方、もっと言えばメンタルモデルを変えないと難しそうだとわかってきました。これを言語化したものが以下記事になります。