フィードバックよりもアドバイス
新人、特に若者の静かな退職を防ぐには、フィードバックを増やせばいいといわれます。
書籍『静かに退職する若者たち』では、成果や力量に対する定期的なフィードバックが欲しいとの事例を取り上げています。
しかし、フィードバックだけでは実は足りないのです。
フィードバックよりもアドバイス
フィードバックよりもアドバイスこそが重要であるという話をします。
フィードバックのデメリット
Ans: 正解ありきであり、融通が利かないことです。
フィードバックとは「評価」であり、出す側が正解を持っています。正解にどれだけ近づいているか、どこがどうズレているかを知らせるわけです。
正解ありきなのです。
正解が最適であるとは限らないし、大体古い
正解とされているものは、その仕事、その組織、その人が以前決めたことにすぎません。たいていは古いです。
さて、現代の若者は、デジタルネイティブとも言いますが、相当な情報量と技術に触れています。私たち現役社員では到底太刀打ちできません。
たとえばボイチャ、バーチャルオフィス、ビデオの撮影は当たり前であり、仕事にも生かせますが、私たちはそんなこともわかりません。リモートやフレックスも当たり前に行えますが、やはり私たちはわかりません。
※当サイトではそのあたりの言語化を丁寧に行っているので、よろしければ漁ってみてください。例: リモート、フレックス
早い話、若者は私たちよりも「よりよいやり方や考え方」、つまりは仕事術を知っています。適切に言語化できるとは限りませんが、インストールはされているわけです。そんな「雲の上の存在」に対して、私たちは先輩風を吹かしています。それを「仕事だから」「組織だから」などと思考停止して正当化し、フィードバックを垂れるわけです。
アドバイスを使う
そこで使えるのがアドバイスです。
アドバイスとは「助言」であり、ヒントを提示するものです。使うかどうかは相手の自由であり、強制力はありません。これをきちんと取り入れた例としては、ティール組織の助言プロセスがあります。
つまり、
❌正解ありきで従ってもらって、正解とのズレをフィードバックする
⭕若者にやりたいように動いてもらい、その過程に対してアドバイスする
ということです。
雲の上の存在である若者を尊重します。ただし、そうは言っても、組織であり仕事ですから完全に好き勝手にはいかないので、先人としてアドバイスをします。
別の言い方をすると、私たち側を絶対的に正しいとして、若者にもそれに従ってもらうのではなく、若者側が強いとみなして、その主体性や実力をなるべく尊重します。必要な制約はアドバイスの形で提供してバランス調整します。フィードバックとは、スタートが違います。
基礎は先に出し切る
もう一つ重要なのが、最低限必要な基礎は先に出し切ってしまうことです。
よくあるのがOJT――とりあえず仕事させながら色々学んでももらおうかな、ですが、それはただの思考停止、ただの怠慢にすぎません。仕事を舐めすぎです。
私たちも新しい仕事を行う際は、それなりに計画やコストを考えて提示すると思います。「よーわからんけどやってみるわ」では済みませんよね。それと同じことです。
必要な基礎はちゃんと言語化して、整備して、教育やトレーニングの機会もちゃんと用意した上で、先にインストールを済ませてください。
あるいは、最低限情報として残して、「ここらへんを見れば学べるよ」という状態にしてください。若者はこちらのやり方にも慣れています。
たとえばゲームでも、昔は自分でとりあえず遊んでみて試行錯誤していくのが主流でしたが、現代では最初から攻略情報(動画含む)を調べます。何なら常に片手に携えて、情報を見ながら遊びます。
ドラクエとマイクラのたとえもわかりやすいでしょう。マイクラは、ドラクエのやり方では歯が立ちません。最初から情報を調べて、基礎を知って、その上で遊ぶのが当たり前です。
辛抱強く向き合う、任せる
厄介なのは、若者側が必ずしも優れた言語化能力を持っているとは限らないことです。
また、持っていたとしても、ちゃんと言ってくれるかどうかも別問題です。同書でも「いい子症候群」は強調されています。リスクヘッジとして、余計なことは言わず無難な人物を演じるくらいは当たり前です。
ですので、優秀な者に任せるかのごとく、一度任せただけでは、思うように機能しません。若者自身が上手く主体性を発揮して、バリバリ動いてもらえるようになるまでには、時間を要します。もちろん関係性(信頼関係)の構築も要ります。
一度任せてダメだったからもうダメね、ではなく、辛抱強く投資するつもりで望みましょう。
可能なら、議論し合える関係になりたいものです。リバースメンタリングという言葉もあります。雲の上の若者たちに教えてもらうつもりで、取り入れていくつもりで、付き合っていくくらいが良いでしょう。
※もちろん大前提として若者もピンキリです。だからといって下に見るではなく、上に見ることから始めよう、その象徴としてフィードバックよりもアドバイスを使おう――が本記事の提案です。