一緒に進めたいという潮流 「ソーシャライブ」
仕事の基本は分業ですが、近年は「一緒に進める」潮流が再燃しています。この潮流をソーシャライブ(Socialive)と呼ぶことにします。
※ティーチングやコーティングなど、一方が他方に教える営みは含みません。あくまでも複数人で仕事を進める場合の話です。
再燃の理由は、若者が使っているから
ソーシャライブが再燃した理由は、若者の文化だからだと思います。いつの時代でも、流行をつくるのは若者です。
いくつか例を取り上げます。
当サイトではNo Helloを紹介しましたが、若者のチャット文化ではまさにそのHelloをします。やり取りしながら一緒に進めていくことを前提としています。
また書籍「静かに退職する若者たち」で言及された「いい子症候群」についても、心理特性として以下が挙がっています。
近年は若者にもキャリア志向や主体性を求めますが、一方で出る杭が打たれる文化は変わりません。
同書では「平均に合わせる」傾向が強調されていますが、いい子を演じて無難に過ごそうとするのは自然な成り行きでしょう。仕事のやり方であれば、ソーシャライブを選ぶのも自然です。
ソーシャライブは良いことなのか?
Ans: 使い方次第です。やり方の一つにすぎません。
また後述しますが、向き不向きもあるので、向いていない人にソーシャライブをさせないことも重要です。
ソーシャライブのメリデメ
メリット⭕:
グルーミングを行いやすい
仕事の腰が上がりやすい
ひとりだとだらけがちですが、複数人で一緒に過ごすことで気が引き締まります
また真面目にやらないといけないので、じゃあ仕事のために頭を使うか、となります
責任を負わずに済む
特に日本は文化的に「階層主義」かつ「合意形成的」ですから、ソーシャライブだとそれら形式を保てます
形式はしばしばノイジーですが、責任を負うよりはマシと感じる人も多いです
デメリット❌:
仕事が遅くなりがち
一緒に進めていく分、遅くなります
わかりやすいのは学校で、クラス全員で行事で何するかを決めるときのアレです
一部の人には過酷
他人と同座したり、関係を育んだりするのが苦手な人には向いていません
場の雰囲気や関係を損ねるリスクがありますし、純粋に本人は必要性を感じないため苦痛です
情報格差が生じる
情報が参加している当人内で閉じてしまうため、情報格差が生じます
対を成す「インフォメーティブ」
続いて、ソーシャライブと対を成すやり方を見ていきます。
インフォメーティブ(Informative)と呼びます。
その名のとおり、情報をやりとりするようなやり方です。一緒に進めていくのではなく、分業して、各自が各自の仕事をします。その過程や結果を「情報」として他の人に見せます。
先の例で言うと、チャットではなくメール文化がそうです。
メールでは要件とその他必要な情報を一通り全部書いたものを送ります。ソーシャライブのように「今から一緒に考えていきましょうか」などとはしません。「私はこう思うんだけど、どうでしょうか」と、こちらでつくったものをドンッと送ってしまうのです。
昔と今
ソーシャライブが染み付いている人はピンと来ないかもしれませんが、昔は仕事はインフォメーティブでした。自分の分を持ち帰り、自分でつくってから先輩や上司に見せるような格好です。
フィクションでよく遅くまで作業していたり、つくった資料を翌日見てもらったりみたいな光景が描かれますが、あのイメージです。
また、ゲームもわかりやすいと思います。
ドラクエを例にしますが、自分で何度も敵と戦って強くならねばなりません。強くなる部分は自分で頑張るわけです。これはインフォメーティブなあり方です。
一方で、現代ですと、マイクラを例にしますが、攻略情報(動画含む)をさっさと見て、戦いを楽に終わらせる手段やアイテムも惜しみなく使って、さっさと終わらせますよね。
わかりにくいですが、これはソーシャライブです。(人ではなく攻略情報ですが)一緒に進めている感覚です。実際、スマホやPCで情報を見たり調べたりしながら遊んでいると思います。
※あるいは子供が親と一緒に遊んでいる例も珍しくないと思います。
どう使い分けるか
ここからは両者の使い分け方の話に入ります。
1: 向いている方を尊重する
基本的にはその人に向いたやり方を尊重したいです。
向いてないやり方をやっても苦しいだけだからです。特に現代は転職も当たり前に行います(行えます)から、向いてないやり方が続くとかんたんに離反します。あるいは、やる気をなくしてセーブに走る――それこそ静かな退職に走るでしょう。
向き不向きの判断方法は二つあります。
一つは、普段どちらで行動しようとするかです。「では仕事してきます」と自分ひとりで抱えてやりたいのか、それとも「それじゃ一緒にやりましょう」と一緒にやりたがるのか。
以下マトリックスが使えます。
4以外はソーシャライブです。
ややこしいのは、「本当は4だけど悪目立ちしたくないから2かな」のような偽りの回答がよくあることです。信頼関係がないと調べるのは難しいかもしれません。
そしてもう一つは、メンタルモデル(行動特性)を見るというものです。
先の例を言うと、ドラクエはインフォメーティブで、マイクラはソーシャライブです。もちろん、ドラクエをソーシャライブに遊ぶ人もいたり、マイクラをインフォメーティブに遊ぶ人もいます。そういう意味では、ゲームをどう遊んでいるかを見るのが一番です。
いずれにせよ、自分を判定するのには使えますが、相手を判定するには信頼関係がないときつそうです。
可能であれば、仕事として必要だからという形で議論できると良いでしょう。本記事も見せても役に立つと思います。
2: 短期ならソーシャライブ、中長期ならインフォメーティブ
次に人ではなく状況ベースの使い分けです。
短期的に成果が求められるような厳しいシチュエーションの場合、ソーシャライブが良いでしょう。少なくとも、一緒に働くメンバーが同座していて、必要に応じてすぐにソーシャライブに移れるようにはしておきます。
中長期的に備えたいなら、インフォメーティブが良いです。特に情報共有が大事で、情報を残しながら進めていくことで情報格差と政治を減らせます――つまりは停滞や腐敗を防げます。
情報詳細については以下を:
また、情報のやりとりをメインとした働き方は、従来とは異なるものであり難しいです。やり方を知らないとソーシャライブしか取れなくなります。
ですので、当サイトでもそれら新しいやり方の話は重視しています。たとえば新しいパラダイムとして説明を試みています。
異分子を混ぜる
最後に発展的なトピックとして、「どちらかに偏った集団」に「他方の人」を入れると化学反応を期待できるという点を紹介しておきます。
ソーシャライブの集団にインフォメーティブを混ぜると、インフォメーティブの人が「情報をちゃんと残すこと」「ひとりでじっくり仕事すること」といった考え方を持ち込んでくれます。
インフォメーティブの集団にソーシャライブを混ぜると、組織内の人間関係の円滑化に貢献してくれます。
特に触媒という役割は比較的知られています or 言葉は知らなくても、存在としては知っている人も多いと思います。顔が広くて、色んな人と表裏問わず交流しており、組織全体のバランス調整に寄与しているような人です。
いずれにせよ、異分子だからと排除したり、自分達に適応させたりするのではなく、その異分子のやり方や考え方を尊重することが前提です。
これは思っているよりもずっと難しいのです。
たとえばソーシャライブの集団は、新たにやってきたインフォメーティブな人の「打ち合わせでは必ず議事メモを残しましょうよ」との提案を受け入れられるでしょうか?
また、インフォメーティブの集団は、新たにやってきたソーシャライブの人の「午前のどこか2時間は会議室を専有(orオンライン会議つなぎっぱなし)して、一緒に仕事を進めていきましょうよ」との提案を受け入れられるでしょうか?
どちらも提案としては序の口ですが、難しく感じると思います。しかし、だからこそ、思い切って取り入れてみることで化学反応をもたらせます。
(関連記事)
ソーシャライブを越えるために、チャットから脱する必要がある点を述べています。
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