精神的安全性
自分のメンタルを脅かす脅威の無さを精神的安全性と呼びます。
心理的安全性との違い
心理的安全性
心理的安全性は、対人関係のリスクを負っても大丈夫という度合いを指します。
通常、議論や提案は、対立や一蹴が怖かったり、変に思われるリスクがあったりしてやりたがりませんが、心理的安全性があればできます。つまりコミュニケーションに関する因子です。
また、心理的安全性は集団的なものです。
ある集団において、心理的安全性がある場合、誰が誰に対してもリスクを負うことができます。また、心理的安全性が低い場合、その原因は一個人というよりも、集団や場そのものにあることが多いです。
精神的安全性
精神的安全性は、自分のメンタルを脅かす脅威が無いという度合いを指します。
コミュニケーションというよりは、QoWやQoLといった個人的な居心地・快適さに関する因子です。
また、安全性が低い場合、その原因は一個人にあります。脅威とは個人です。脅威となる個人がいて、その人のせいで精神的安全性が脅かされます。
メリット
Ans: メンタルヘルスの低下を防げます。
精神的安全性、特に脅威の例を知ることで、自分のメンタルを貶める原因を理解できるようになります。「よくわからないけど調子が悪い」「自分が悪い」ではなく、脅威が存在するのが問題なのだと正しく理解できます。
もちろん、理解できれば対処もできます。
具体例
精神的安全性を下げるのは、特定の個人です。これを脅威と呼びます。主な脅威を挙げます。
ブリリアントジャーク
言い過ぎ
正論で殴られるんじゃないか……
元はNetflixの用語で、優秀だけど嫌な奴を指します。攻撃的であったり横暴・横柄だったりして、関わりたくないような人を指します。
たとえ優秀であっても、嫌な奴であればチーム全体の指揮を下げます。現代はチームの時代であり、優秀な一個人よりもチームの方が強いですから、このような人を我慢してまで抱える意味はありません。
ファウルヘッド
反応なさすぎ
また見てくれないんじゃないか……
言われたことやお願いしたことをしない、何なら反応すらしないといったことが常態化している人を指します。ファウルヘッドとは鳥頭の意で、すぐに忘れるというニュアンスを込めています。
私たちは会議のような「一緒に過ごしてその場で決める」ことを常にできるわけではありません。タスクや非同期コミュニケーションなど、多くのボールを抱えますが、性格や能力次第では「やらない」人がいます。
※状況次第では誰しも「できない」ことはありますが、そうではなく、日頃から故意に「やらない」人を指します。
このような人は、ボールを渡しても進展がないです。また、渡す側は毎回「いつ返ってくるんだろう」「来ないんだろうか」「また催促が要るんだろうか」と悩むことになります。
エクスポーザー
晒しすぎ
私が話したことも晒されるんじゃないか……
私もこの人みたいに晒さないといけなくなるんじゃないか……
情報を何でもオープンにしたり、言いたいことを率直に言ったりする人を指します。Expose(晒す) + er です。
大多数の人はそこまでオープンでも率直でもないため、エクスポーザーは脅威になりえます。
エイリアン
意味不明すぎ
これを理解できない私の無知・無能が晒されるんじゃないか……
変人や異分子といった言い方もできますが、そのような「変わり者」を指します。
エイリアンは熱心で、アクティブで、人としても悪くはないことも多いですが、言っていることの意味がわかりません。チーム内で理解できる人がひとりもいない、というレベルです。
通常、そのエイリアンに相応の権威がなければ、私たちは時間をかけて理解しようとは思いません。むしろ「いいから郷に従えよ」と考えて、そうさせるでしょう。
一方で、「理解できない自分たちが実は無知・無能じゃないか」という可能性もあり、これが安全性を脅かします。無自覚な人も多いですが、私たちもまた人間であり、無知や無能として見られたくない・そんな自分を認めたくない的なプライドはあります。
あるいは、単に私たちは時間をかけたくない理由をつくって正当化するわけですが、どこかで「なんでこんなことに苦戦しなきゃいけないんだろ」との葛藤が表出します。
ヘッドレス
融通利かなすぎ
この人といるとルールや文化の外からは一歩も出られないんじゃないか……
私もこの人のような信者に引きずり込まれてしまうんじゃないか……
現行踏襲的で融通が利かない人を指します。ヘッドレスとは「首なし」の意であり、アンデッドとして操られているニュアンスを込めています。
「融通の利かなさ」には議論の余地はありますが、以下をすべて満たすものだと考えてください。
巷では新しいやり方や考え方が出ているのに、それを知らない、知ろうともしない
表向きは融通を利かせないのは仕方ないとして、裏でも利かせてくれない。また見逃してくれない
融通を利かせたという具体的な行動をしていない。その形跡がない
ファウルヘッド(確信犯的に無視する)を併発します。表面上は応えるような素振りをすることがありますので、形跡を見ることが重要です
おそらく脅威としては最も身近なものになると思います。
ヘッドレスは、指示命令系統に従って淡々と動く人材としては優れていますが、チームプレイやマネジメントには向いていません。宗教の勢力や階層的なあり方など歴史を見てもわかるように、このような人材は非常に多いです。多い分、向いてないアサインも多く発生します。
脅威に対処する
まずは対話しましょう
脅威本人と対話します。悪意がなかったり、誤解があったりすることも多く、この場合は調整すれば済みます。
このように対話の余地があることをトーカブル(Talklable)と呼びます。脅威がトーカブルであれば、対話によりどうにかなる可能性があるというわけです。
距離を置きましょう
トーカブルでない場合、建設的な改善はできません。
まずは自分から距離を置けないかを考えます。場合によっては上司に相談したり、転職したりといった面倒な対応が必要かもしれませんが、そこは脅威との相談です。どうしても許容できないなら、さっさと置く行動をした方が良いです。
※すでに述べたとおり、精神的安全性は居心地や快適さに関するものですので、その観点で述べてます。それらを重視しない場合は、今までどおり我慢するなり、感情を殺して機械的に応対するなりで良いと思います。
対処しましょう
トーカブルでもなく、距離も置けない場合、残された手段は対処です。
つまり、脅威を隔離・追放できるように(あるいはしてもらえるように)戦うということです。
仕事術2.0も使えます
当サイト『仕事術2.0』では、様々な仕事術(仕事のやり方や考え方)を扱っています。
対話、距離を置く、対処のどの段階でも参考にできるものと出会えると思いますので、ぜひ読み漁ってみてください。
参考までに、「多様性」という観点はいかがでしょうか。エクスポーザーとエイリアンについては、生かし方次第では強い戦力になるかもしれません。
ただ、生かし方という手段を知らないと何もできないので、仕事術2.0を通じて手段を知る(あるいはあたりをつける)のです。