社員ウォレット(Employee Wallet)
社員ウォレット(Employee Wallet)とは、社員ひとりひとりに月n円の予算を与えることです。社員各自が好きなSaaSを契約できます。
メリット
1: シャドーITのジレンマを突破できる
シャドーITは難しい問題です。
管理を緩くすると、シャドーITが活性化します
管理を厳しくすると、優秀な人材や私生活重視の人材が逃げていきます
そもそもシャドーITは消えません。仕事のために必要な利便性は、多少強引であっても取りに行くからです(同様の理由で法律が犯されることも多いですよね)
これをシャドーITのジレンマと呼びますが、社員ウォレットなら軽減できます。
まず使えるツールは自由に選べるので、ツールの利活用を当たり前とする人材も生きながらえます。しかし、ウォレットとして全社的に可視化はされているので、悪さに関する抑止力も働きます。
2: ツールが重要という視座を啓蒙できる
仕事道具が重要であることは言うまでもありませんが、現代はITの力で成り立っています。よってIT的な道具が重要です。
一方で、このような視座を持てず、未だに原始的な対面口頭会議や昔ながらのプロセス・ルール・ツールへの現行踏襲が蔓延しています。
社員ウォレットを導入すると、誰が・どこが、どんなツールを使っているかがわかるので、ツールを使うという視座に立ちやすくなります。
3: ツールを使う・使わないという多様性に配慮できる
ツールにどれだけ頼るかは、多様性と言えるほどあり方が分かれるものです。
使う派の人に使わせないのも、逆に使わない派に使わせるのも、どちらもハラスメントと呼べるほどのキツイ行為です。
※生産性はツールを使った方が出るので、生産性向上の観点からは使うことが推奨されます。が、この議論は次の 4: でします。
ですので、どちらの側か(どちらの比重が重いか)を知ることは多様性の面では重要です。社員ウォレットを使えば、誰が何を使っているかが見えるので、データとして把握できます。
たとえば「これとこれを使える人」とか「ツールの指定は無いので各自上手くやってください」といった形で要員をフィルタリングすれば、ミスマッチを防げます。
いきなりこんな事を言われても意味がわからないと思いますが、社員ウォレットを導入した後なら通じます(2: の視座ですね)。
4: 組織の生産性とQoWが上がる
道具に頼った方が生産性は出ますし、快適(QoWが上がる)なので満足度も上がります。
デスクワーカーも同じです。古典的な人はピンと来ないでしょうが、すでに様々なSaaSが出ており、これらを知っていて使えるかどうかで大きな違いが生まれます。
スマホを使っている人は、すでにアプリの形でその恩恵を受けているはずです。仕事も同じで、要は色んなアプリを使えた方が良いのです。ビジネスに関する有償のSaaSは数多いですが、まさにそういう理由です。
社員ウォレットを使えば、全社的に「使ってもいいんだ」との啓蒙も進みますから、控えめに言っても生産性とQoWが底上げされます。
実現時のポイント
1: 全社的レベルで管理する
別の言い方をすると、上司承認を回避してください。
大前提として、個人の道具は個人が自由に使えるべきです。上司やその他マネージャー等の承認など要らないはずです。
しかしガバナンス上、何も管理しないのもマズイですから、全社的に一元管理します。
2: 管理というよりは可視化を目指す
管理するという意識では、いたずらにきつくなりがちです。たとえば「使ってもいいSaaS」の選択肢が狭くて事実上役に立たない、はあるあるです。
管理というよりは、可視化の意識で望んでください。
基本的に何を使っても許します。ただし、全部可視化はしているので状況はわかりますし、見えてもいるので社員視点でも抑止力になります。
また、可視化のメリットは他にもあります。
透明性があるので、政治や不正が減る
全社員全部門全PJが、他者他部門他PJの状況を見れるので参考にできる(ツールナレッジ)
3: 個人の道具を扱う
1: でも述べましたが、社員ウォレットは「各社員が自分個人の道具を使う」ためのものです。
ですので、プロジェクト内で共通的に使うようなツールは、社員ウォレットではなくプロジェクトの予算などで買ってください。ここを混同してはいけません。
4: 買わない人も許容する
月n円分を必ず使えとか、使用料をKPIにして促進させるといったことは絶対にNGです。
メリットの項でも述べたとおり、ツール利活用にも多様性はあります。使わないという選択肢も尊重してください。
5: 切り替えは自由に行えるようにする
半期ごとに申請して以後切り替えできない、といった運用もあるあるですが、極力避けてください。
ツールの変更はよくあることなので、自由に切り替えられるようにするのが望ましいです。
社員ウォレットを実現する
ここからは、この社員ウォレットなる仕組みをどうやって実現していくかを扱います。
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