金継ぎと父の残してくれたもの
わが家には錦光山の焼物は何点かありますが、父が残してくれた祖父錦光山宗兵衛の焼物は一点しかありません。
それは象嵌透彫の「茶錦瓷 香爐」であります。透かし彫りの蓋(ふた)には火で焼けて茶褐色になったところがあるので、おそらく錦光山で実際に使われていたものと思われます。どういう経路で明治時代の京都からわたしの家までたどり着いたのか、父から詳しく聞いておりませんでしたのでわかりません。
ただ父は生前、その香炉の内側の灰をいれる器のふちのところが、一部欠けていたので、金継ぎするようにと言っておりました。わたしも金継ぎをしようと考えていたのですが、その機会を見いだせないまま長い歳月を過ごしてしまいました。
それがひょんなことから、東京藝術大学の漆芸科を卒業した方を紹介してもらい、金継ぎをしてもらえることになったのです。彼女は3カ月近くかけて丁寧に金継ぎをしてくれました。金継ぎは漆を塗ってからその上に金を塗るそうですが、漆を乾かすのに時間がかかるのだそうです。
それだけではなく、箱をむすぶ紐や香炉をおおう布なども長い年月のあいだにボロボロになっていたので、あらたに探して新しいものにしてくれました。箱をむすぶ紐は真田紐にしてくれて、香炉をおおう布はウコン色の布にしてくれました。ウコンの布は防虫効果があり、美術工芸をおおう布としてよく使われるそうです。目も覚めるような、鮮やかなウコン色の布は大変気に入りました。それだけでなく、料金もとても安くしてもらい恐縮いたしました。
漆芸家で木漆工芸作家の高橋亜希さまのおかげで、父の頼みをやっと果たすことができました。どうもありがとうございます。
父の話が出ましたので、ついでと言ってはなんですが、父が残してくれたものがもう一つあります。
それは、父が自分の幼少期から青年期までを書いた自叙伝的小説であります。わたしは、いろいろ考えて、父の小説を原案としまして、わたしなりの想像力でいくつか新しい章を加え、また原案をより面白くなるように脚色してあらたに小説を書きました。明治時代の京都の、粟田と祇園を舞台とした『#粟田色絵恋模様 #京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛外伝 』という小説です。2023年1月12日に出版する予定です。
拙作『#京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛伝 世界に雄飛した京薩摩の光芒を求めて』の姉妹編に当たるものですが、宗兵衛もさることながら、宗兵衛をとりまく家族や祇園の女性たちの人間模様がメインになっています。いわば京都粟田焼の陶家の栄光と挫折、祇園の女性たちの愛と確執を描く、壮大な歴史ロマンと言えましょう。
その時代を生きた人々の生きた証しを描き、遠く遥かな明治の京都の情感が漂うような作品ですので、ご期待いただければ、ありがたく存じます。
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